技術解説(フィリップス・ジャパン)
2022年4月号
腹部画像診断におけるCTの技術の到達点
新たな価値を生み出すイメージング技術
小川 亮[(株)フィリップス・ジャパン プレシジョンダイアグノシス事業部CTモダリティーセールススペシャリスト]
フィリップスでは,これまでにCTにおける数多くの技術開発を行ってきた。本稿では,フィリップスCTの技術アップデートとして,2021年7月1日に販売開始した2層検出器を搭載したdual layer CT「Spectral CT 7500」と,「Incisive CT Premium」に搭載されたAI画像再構成技術“Precise Image”について紹介する。
■Every Patient, Every Scan Spectral CT 7500
Spectral CT 7500が採用している2層検出器方式の最大の利点は,撮影されたすべての症例に対して臨床的付加価値を有するスペクトラルイメージングが得られるという点である。それに加え,Spectral CT 7500では,さまざまな状況や症例に対応するさらなる技術が搭載されている。
Spectral CT 7500では,8cmワイドカバレッジによる高速撮影を実現することで,胸腹部-骨盤検査をわずか2秒で撮影することが可能となる(図1 a)。この高速撮影により,救急などの迅速な撮影が求められる状況下においても,モーションアーチファクトの低減された精度の高いスペクトラルイメージングを参照することができる。また,ワイドカバレッジによる散乱線の影響は,XYZ方向に集束された“2D-antiscatter Grid”(図1 b)により低減され,高画質なイメージングを提供可能となる。また,被ばく,画質の面においては,撮影管電圧を100,120,140kVpと患者によって使い分けることで,すべての症例において撮影線量を最適化したスペクトラルイメージングを提供することができる(図2)。
Spectral CT 7500では,革新的な“2層検出器技術”に加え,“高速撮影”“撮影線量の最適化”により,これまで以上にさまざまな症例において高画質で低侵襲なスペクトラルイメージングを提供することが可能となる。
■低侵襲で診断価値の高いイメージング技術Precise Image
2019年に国内販売開始となった128マルチスライスCT「Incisive CT」では,2021年4月にさまざまなAI機能を搭載したIncisive CT Premiumパッケージが追加された。そのAI技術の主軸の一つは,AI画像再構成技術Precise Imageである。Precise Imageは,ディープラーニングによるニューラルネットワークを画像再構成プロセスに採用することで,大幅に画像ノイズを低減,かつ秒間40枚の高速画像再構成を用いた迅速な画像診断をサポートする画像再構成技術である。図3は,慢性膵炎症例の1mm冠状断の画像である。当社の逐次近似応用再構成法“iDose4”(図3 a)から撮影線量を約50%低減したPrecise Imageの腹部画像(図3 b)では,明らかに主膵管,分枝膵管共に視認性が向上し,薄いスライスでの診断能向上を認める。このようにPrecise Imageでは,低被ばくだけでなく,薄いスライスにおけるノイズ低減効果で,低侵襲で高画質なイメージングを提供することが可能である。
◎
本稿では,フィリップスCTの技術アップデートとしてSpectral CT 7500と,AI画像再構成技術Precise Imageについて紹介した。Spectral CT 7500はスペクトラルイメージングの可能性をさらに広げ,Precise Imageは大幅なノイズ低減効果により確信度の高い画像診断が可能となる。今後よりいっそう多くの病院で,本稿で紹介したイメージング技術を活用したCT検査が行われることを期待する。
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