技術解説(フィリップス・ジャパン)

2022年3月号

腹部画像診断におけるUSの技術の到達点

医療の変容に応えるフィリップスの新しい超音波技術

山下 文香[(株)フィリップス・ジャパン プレシジョンダイアグノシス事業部]

わが国では,2040年に65歳以上の高齢者人口がピークを迎えるとともに,生産年齢人口の減少が顕著となると言われており,医療提供体制も改革が進められてきた。例えば,国民の健康寿命延伸のため,精度高くかつ個人に最適化された医療提供が望まれてきた。さらに,近年では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により,新たな課題も取りざたされている。例えば,医療技術の高度化に伴う専門性の向上により,医療スタッフが不足する事態が発生した。また,医療負担の一極集中を回避するため,かかりつけ医や在宅医療の重要性なども浮き彫りとなった。
これまでも時代の変容が技術の進歩を後押ししてきたが,フィリップスの超音波診断装置が昨今のめまぐるしい変容にどのように対応しうるかを紹介する。

■精度の高い検査と治療を提供する“PercuNav”

健康寿命の延伸のために,早期発見と早期治療は欠かせない。超音波診断装置は,スクリーニングやフォローアップにおいて重要な役割を担っているが,施行者のスキャン技術に依存しない再現性の担保は課題である。さらに,治療ではリアルタイムで臓器を描出し,低侵襲な治療を精度高く施行することが求められている。肝臓領域でのクリーニングや治療において,イメージフュージョンが再現性や精度の向上に貢献することは言うまでもないが,日常の検査に取り入れるためには,短時間で簡単かつ正確な位置合わせが重要である。
フィリップスのPercuNavは,自動で1分以内に位置合わせが完了する“Auto Registration”を採用している。このAuto Registrationには,Anatomical Intelligence(A.I.)の技術が用いられており,3D超音波画像内から指紋認証や顔認証の技術を応用して肝臓の血管や形態を自動認識するため,精度の高い位置合わせが可能である(図1)。また,PercuNavは中級機種にも搭載可能なため,治療のみならず,スクリーニングやフォローアップにも気軽に導入でき,検査の再現性向上が期待される。
さらに,治療においてはセミオートで3D腫瘍輪郭マーカーを表示することができ,腫瘍の立体的な位置把握やsafety marginの設定に役立つ。治療前に焼灼範囲をシミュレーションすることが可能となり,より精度の高い治療に貢献する(図2)。

図1 Anatomical Intelligenceを用いた自動位置合わせ

図1 Anatomical Intelligenceを用いた自動位置合わせ

 

図2 セミオートでトレースされた腫瘍(水色)とsafety margin(白) (画像提供:岩手医科大学病院・黒田英克先生)

図2 セミオートでトレースされた腫瘍(水色)とsafety margin(白)
(画像提供:岩手医科大学病院・黒田英克先生)

 

■遠隔地とのコミュニケーションを可能にした“Reacts”

前述のとおり,超音波診断装置にも課題はあるものの,使い方によっては誰でも簡単に使用できる手軽さは大きな強みである。携帯型超音波診断装置「Lumify」は,血圧計や聴診器のように簡単に扱え,即座に有用な情報が得られることをめざし,遠隔診療支援機能Reacts(Reacts機能)というコミュニケーションツールを搭載した。これは検査している現場と遠方にいる医療従事者とをリアルタイムでつなぎ,診断をサポートする機能である。Reacts機能は,撮像している超音波画像はもとより,タブレットのカメラ画像や遠隔地で使用しているデバイスのカメラ画像も同時に共有できる。さらに,ポインタ機能を使用し,画像上で指示することも可能である(図3)。隔離病床や在宅医療などにReacts機能を用いた超音波検査を加えることで,スムーズな治療方針の決定に役立つ。

図3 LumifyとReacts機能を用いた検査の様子

図3 LumifyとReacts機能を用いた検査の様子

 

フィリップスはこれからも,医療現場の変容に技術で迅速に対応,貢献していくことを約束する。

 

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