技術解説(フィリップス・ジャパン)

2013年3月号

造影超音波検査 最新技術

フィリップスの造影エコー─Power Modulation Pulse Inversion(PMPI)法

三木 綾子(ヘルスケア事業部マーケティング本部 R&Dスペシャリスト)

ソナゾイド造影超音波の臨床使用は肝腫瘍診断から始まり,近年,乳腺領域へ適応が拡大し,その有用性に期待が高まっている。装置に対しては,バブルからの信号だけをより感度良く検出できるビームフォーミングが求められ,技術革新がなされている。本稿では,造影に最適な新しいビームフォーミング“Power Modulation Pulse Inversion(PMPI)法”を紹介する。

●造影用ビームフォーミング

フィリップス社製超音波診断装置(iU22/HD15)には,3つの造影モードが搭載されている。

1.Pulse Inversion(PI)法*1(図1)
位相の反転(180°反転)したパルスを照射し,受信信号を加算する方法である。受信信号の基本周波数成分は逆位相,ハーモニクス成分は同位相となるため,加算するとハーモニクス成分だけ選択的に検出される。空間分解能が良く,微細な血流の描出が可能だが,対象臓器の動きの影響を受けやすく,組織信号のキャンセルが不十分である欠点がある。

図1 Pulse Inversion法

図1 Pulse Inversion法

 

2.Power Modulation(PM)法*2
振幅の異なるパルス(例:P1:1,P2:1/2)を照射し,受信信号を減算する方法である。振幅の小さいパルスP2の反射信号を振幅調整(例:2倍)して引き算する(例:P1−2×P2)。
PM法のポイントは,“バブルの非線形性はパルスの振幅により異なる”ことである。組織の非線形性は,振幅に関係なくほぼ同じである。つまり,引き算することで,組織からの信号はほとんどゼロに抑制(キャンセル)され,バブルからの反射信号のみを画像化できる。さらに,PI法がハーモニクス成分のみを抽出するのに対し,PM法はバブルからの基本周波数帯域の反射信号も検出できるため,感度が向上し,深部まで観察可能となる。しかし,PI法に比べ空間分解能が低くなる傾向がある。

3.Power Modulation Pulse Inversion(PMPI)法*3
PI法とPM法を組み合わせ,両者のメリットを引き出す新しい造影用ビームフォーミング法である。
振幅と位相,それぞれ異なるパルスを送信し,受信信号を加算する(例:P1:1,P2:−1/2,P1+2×P2)。
PMPI法は,基本周波数帯域に加え,ハーモニクス成分でもバブルからの反射信号を効率良く検出可能である(PM法は減算するためハーモニクス成分が減少)(図2)。これにより,PM法のメリットである感度に加え,空間分解能の向上が期待できる。

図2 各モードにおけるバブルからの反射信号(送信周波数2MHz)

図2 各モードにおけるバブルからの反射信号(送信周波数2MHz)
PI法ではハーモニクス成分が,PM法では基本周波数成分がメインで受信されている。
PMPI法では基本周波数成分とハーモニクス成分の両方とも,効率良く検出されている。
(Ultrasound in Med. & Biol., 31・2, 213〜219, 2005. より引用転載)

 

●定量解析法:ROI解析(QLAB software)(図3)

Time Intensity Curve(TIC)
造影超音波画像の定量解析でポピュラーな方法の1つに,経時的輝度回復曲線(time intensity curve:TIC)を求める方法がある。QLABのROI機能を用いることで,造影直後に装置上で簡単にTICを表示可能である。さらに,動きによる補正(Motion Compensation)が可能で,患者さんに負担をかけることなく再現性の良い解析が可能である。種々のカーブフィッティングにも対応しており,さまざまなニーズに合わせた近似曲線の表示が可能である。

図3 TIC定量解析

図3 TIC定量解析

 

新しい造影エコー技術PMPI法により,従来法より高感度で高分解能な造影エコーが実現した。さらに,定量解析ソフトにより,病態の詳細な検討が可能になると考えられる。

*1 別名:Phase Inversion法
*2 別名:Amplitude Modulation(AM)法
*3 別名:Contrast Pulse Sequence(CPS)法

 

【問い合わせ先】ヘルスケア事業部マーケティング本部 TEL 0120-556-494

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