Special Report(フィリップス・ジャパン)
2024年11月号
Gyro Cup 2024 フィリップスMRIユーザーズミーティング全国大会
全国から集まったユーザーがアイデアを競い合い絆を深める2年に一度の祭典が6年ぶりに現地開催
フィリップスユーザーがMRIの撮像技術のアイデアを競い合うユーザーズミーティング全国大会「Gyro Cup 2024」が,2024年9月20日(金)に千葉市美浜文化ホールのメインホールで開催された。熱気に包まれた会場の様子をレポートする。
Gyro Cupは2010年に第1回が開催されてから2年に一度行われ,今回で8回目を数える。会場には地区予選を勝ち抜いてきたファイナリストだけでなく,ハイレベルな演題・プレゼンテーションを見ようと全国から医師や技師が集まることから,ユーザー同士が交流し絆を深める機会となっている。過去2回はコロナ禍によりオンライン開催となったため,3大会・6年ぶりに対面開催として復活した。
全国大会では,全国27のユーザー会を9ブロックに分けて行われた地区予選を勝ち上がった9名と推薦枠3名のファイナリストが,自らのアイデアをプレゼンテーションし,特別審査員5名と会場参加者による投票で,Gold Award,Silver Award,Bronze Award,Special Award(審査員特別賞)を決定する。
Gyro Cupへの応募演題数は第1回から増え続け,今回は過去最多の54演題を記録。ファイナリストの熱いプレゼンテーションは,会場に駆けつけた全国の医師や技師258名を魅了した。
COMMITTEE CHAIRMAN(実行委員長)
Gyro Cup 2024 実行委員長
望月智広 氏
Services & Solutions Delivery本部
MRクリニカルサポートスペシャリスト
Gyro Cupは,全国のユーザー様が創意工夫を持ち寄り,撮像のアイデアや画質,臨床的有用性を競い合うイベントであり,同時に情報共有と交流の場でもあります。今回は,ファイナリスト,特別審査員,オーディエンスが一堂に会し,アイデアや画像を直接共有することで生まれる圧倒的な熱量を皆様にお届けしたいとの強い思いから,6年ぶりの対面開催を実現しました。
Gyro Cupの歴史の中ではいくつもの画期的なアイデアが生まれ,その情報は海外にも発信されています。今回も競い合いながらも共に学び,高め合うことで,当社MRの持つポテンシャルや魅力を最大限に引き出し,参加者全員にとって有意義なイベントとなるよう努めました。
ユーザー同士の絆を深める祭典
この日,会場と同じ美浜区にある幕張メッセでは,第52回日本磁気共鳴医学会大会が初日を迎えており,学会会場から足を運んだ多くの参加者をGyro Cup特製入場ゲートや応援メッセージボードで迎えた。全国のユーザーから寄せられた応援を掲示したメッセージボードには,来場者やファイナリストも思い思いにメッセージを書き込み,開会前から会場の雰囲気を盛り上げた。
オープニングで挨拶に立ったフィリップス・ジャパン代表取締役社長のJasper Westerink氏が,Gyro Cupの意義を述べてファイナリストにエールを贈ったのに続き,最終審査となるプレゼンテーションが行われた。
7分間の白熱のプレゼンテーション
プレゼンテーションの制限時間は一人7分間。開幕直前にくじ引きによって決まった順番で,ファイナリストがプレゼンテーションを行った。地区予選を勝ち上がってきた演題は「創意工夫」「画質」「臨床的実用性」を併せ持つ,甲乙付けがたいハイレベルな内容だからこそ,最終投票を行う審査員や会場参加者へアピールするため,ファイナリストは熱意あふれるプレゼンテーションや凝ったスライドで訴えた。
Gyro Cupの舞台裏
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PANEL OF JUDGES(特別審査員)
(特別審査委員長以下,50音順)
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FINALIST(ファイナリスト)
■演題名(プレゼンテーション順,敬称略)
(1) 東関東ブロック・斉藤 凌:THAT’S BANANA MG-Like MR Imaging
(2) 東京ブロック(推薦枠)・伊東大輝:Volume T2-weighted-imaging with Centric ORdered Encoding(vT2-CORE)
(3) 東京ブロック・小平和男:Gravity LA
(4) 中部ブロック・寺林 諒:3D_MRCP_BH 2.0
(5) 北海道ブロック・菊田 俊:META-FRACTUREが椎体MRIの常識を変える
(6) 東北ブロック・根本 整:腎動脈 ─次の一手─
(7) 九州ブロック・佐賀雅憲:浮腫を伴う脳腫瘍疾患に対する造影FLAIR変法 ─PANDORA─
(8) 中四国ブロック・藤本 崇:PLACTURE
(9) 関西ブロック(推薦枠)・森田佳明:Look-LockerにPSIRを応用したマルチコントラストLGE Look-Locker combined with PSIR(LL-PSIR)
(10) 関西ブロック・愛甲太洋:撮影タイミングは自由自在!Flex-Sync
(11) 東関東ブロック(推薦枠)・中西一成:SWALLOW─Echoのヘッドハンティングと再生─
(12) 西関東ブロック・佐藤雷人:S.B.S Special Brain Survey 〜究極の脳Surveyを追求〜
栄えあるGold Awardは千葉大学医学部附属病院の中西一成氏が受賞
プレゼンテーション終了後に審査員と参加者による投票が行われ,集計の結果,Gold Awardは千葉大学医学部附属病院(推薦枠・東関東ブロック)の中西一成氏が受賞を果たした。演題は「SWALLOW ―Echoのヘッドハンティングと再生—」で,mFFEシーケンスの最初のエコーを共有することで,高分解能SWIとwhole brain MRAを5分半で同時撮像できる「SWALLOW(SWI and whole brain inflow MRA)」を考案した。中西氏は,撮像の時間短縮だけでなく追加撮像に対するハードルを無効化するメリットがあるとして,初回検査やスクリーニングでの活用を提案した。
Silver Awardは,大分大学医学部附属病院(九州ブロック代表)の佐賀雅憲氏が受賞した。演題は「浮腫を伴う脳腫瘍疾患に対する造影FLAIR変法 ―PANDORA―」で,脳腫瘍に対する造影検査において造影T1強調像と造影FLAIR像を融合したFLAIR併用プロトン密度強調画像「PANDORA(Proton density AND Optimized inversion Recovery with Asymmetric profiling)」を提案した。造影効果増強によって,正常硬膜や動静脈,CSF,浮腫などの信号を抑制でき,放射線治療計画や外科手術での周囲浸潤評価など,幅広い分野に応用できるとした。
Bronze Awardは,国立循環器病研究センター(推薦枠・関西ブロック)の森田佳明氏が受賞した。演題は「Look-LockerにPSIRを応用したマルチコントラストLGE Look-Locker combined with PSIR(LL-PSIR)」で,心筋遅延造影の工夫として,PSIRとLook-Locker(LL)を組み合わせて,1回の息止め撮像でマルチコントラストの折り返しのない遅延造影を取得できる撮像法を紹介した。PSIRで内腔のnullに合わせたTIや,血栓評価に有用なあえて長いTIなどのコントラストを一度に得られる有用性を示した。
審査員特別賞であるSpecial Awardは,慶應義塾大学病院(推薦枠・東京ブロック)の伊東大輝氏が受賞した。演題は「Volume T2-weighted-imaging with Centric ORdered Encoding(vT2-CORE)」で,フローボイドを各部位の特徴や臨床的ニーズに合わせて自在にコントロールする3D T2強調TSE法を提示した。伊東氏は,本手法は撮像理論のおもしろさと撮像の簡便さを両立する技術であり,各施設で試してほしいとアピールした。
*プレゼンテーションの内容には,オプションソフトが含まれます。
AWARD WINNER(受賞者)
GOLD AWARD
中西一成 氏(千葉大学医学部附属病院)
Gyro CupはMRIの勉強を始めたころから注目していて,いつか応募したいと思っていました。プレゼンやスライドは細部までこだわりましたが,臨床的有用性といった本質を欠かさないことを意識しました。入職したばかりの新しい環境での準備は大変でしたが,受賞内容の学会発表や論文化をめざして,これからも学術活動を続けていきます。
審査講評:大浦大輔 氏
画質が圧倒的に良く,プレゼンもよく練り上げられていたことに加え,撮ったデータをすべて使い尽くすという姿勢にも感銘を受けました。Gyro Cupで勝つための必要な要素をすべて兼ね備えた完璧な発表だったと思います。
SILVER AWARD
佐賀雅憲 氏(大分大学医学部附属病院)
このような賞をいただけると思っていなかったので,とても感激しています。演題はだいぶ前から準備を進め,先輩方にもいろいろと助けてもらってこの舞台に立つことができ,さらに受賞できたので感無量です。このシーケンスをさらに高め,多くの施設で活用していただけるように広めていきたいと思います。
審査講評:横田 元 氏
脳腫瘍の造影効果は,昔からグレーディングで重要視され,最近では髄膜炎や脳症の診断における有用性や,創薬における応用も注目されています。そのような中で,造影効果に注目したPANDORAシーケンスは,非常に有効なシーケンスであると感じました。
BRONZE AWARD
森田佳明 氏(国立循環器病研究センター)
シーケンス名も普通で,スライドもプレゼンも,心臓というテーマも派手さはないのですが,何かが刺さってくれたのだと思います。シーケンスの工夫は日常の疑問から始まりますが,それを放っておかずに取り組めば,こんな良いことがあると若手にも伝え,これからも若手の技師の皆さんと続けていきたいです。
審査講評:坂井上之 氏
心臓検査では内腔の染まりや血栓について迷うことがありますが,内腔をnullにすることで1回の息止めでマルチコントラストを撮像でき,失敗しにくいということで,循環器内科で非常に役立つシーケンスだと思います。ぜひ症例をたくさん集めて論文化し,世界に発信してほしいです。
SPECIAL AWARD
伊東大輝 氏(慶應義塾大学病院)
当院にはフィリップスMRIが導入されたばかりで症例集めが大変でしたが,審査員特別賞ということで,専門家の先生方に評価いただけたことを大変嬉しく思います。次はぜひ,会場に駆けつけてくれた当院スタッフに参戦してもらい,受賞できるように,お互いに切磋琢磨していきます。
審査講評:立石敏樹 氏
Gyro Cupの演題として,フィリップス特有のシーケンスであるiMSDEを併用したプロトコールを作成したという点と,最近注目されているCSFを評価するというトレンドをとらえた点が,審査員の評価が非常に高かったポイントだったと思います。
国内ユーザーの創意工夫が注目され世界へと羽ばたくGyro Cup
特別審査委員長を務めた高原太郎氏(東海大学工学部医用生体工学科)は総評で,「今回は例年にも増して意表を突くアイデアが多かった。撮像の失敗を防ぐための工夫やサーベイさえも改善しようとする姿勢が素晴らしい。パラメータが開放されたフィリップスのMRIでは無限にシーケンスを発明でき,それは患者に合わせたオーダーメード医療も実現可能なことを意味しているのだと改めて感じた。このような機会を通じて臨床に励む気持ちを新たに持つことが,患者の命を救うことにつながるだろう」と述べた。
最後に,Gyro Cupのために来日したロイヤルフィリップスのMegha Kalani氏(Growth Region, Business Leader MR)が挨拶した。Kalani氏は参加への謝辞とファイナリストへの祝辞を述べた上で,「2年ごとに開催されるGyro Cupでは,革新的な技術が次々と発表されてきました。日本発のGyro Cupのイノベーションは今,世界へと広がっており,私たちは本当に感謝の思いでいっぱいです。日本にはフィリップスのMRシステムが約1400台導入されていますが,世界中のユーザーと革新的な技術を分かち合うことができれば,驚くような成果を生み出すでしょう」と述べ,フィリップスを代表して謝意を示した。
会場では最後に,ステージ上から記念撮影を行い,観客席で参加者が振るペンライトの青い光が輝く中,成功裏に幕を閉じた。次回は2年後,2026年の開催を予定している。回を重ねるごとに盛り上がりを見せるMRの祭典・Gyro Cupは,そのコンセプトが海外へと受け継がれ,世界規模の大会へと発展しようとしている。次にステージに立ち,世界へと羽ばたくのはあなたかもしれない。
Gyro Cup 2024のオンデマンド配信が決定!
下記URLより視聴申し込みが可能です。
https://v2.nex-pro.com/campaign/72837/apply
*配信期間 2024/11/1〜12/31
配信期間は予告なく変更になる場合がありますのでご了承ください。