X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)
第4回X線動態画像セミナー[2022年10月号]
総 評
総評1
近藤 晴彦(杏林大学医学部付属病院病院長/呼吸器・甲状腺外科学教室教授)
本日は,今年新しくリリースされた回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01」,同じく今年新しくリリースされた「DDRAtlas」,そして,実臨床での研究,の3つをテーマにして,大変興味深い発表と活発なディスカッションが行われた。
今まで,X線ポータブル撮影は画質が少し落ちて当たり前と思っていたが,本日のディスカッションでも述べたように,従来のX線ポータブル撮影では得られない情報をAeroDR TX m01では得ることができ,今後のさらなる発展も期待できる。Wi-Fi高速通信などの無線データ通信技術が進歩し,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」によるリアルタイムでの処理が可能になれば,動画は静止画を兼ねており,従来の回診用X線撮影装置に取って代わり,X線ポータブル撮影のコンセプトを変える印象を受けた。
X線動態画像の診断基準となる正常例を集めた症例集であるDDRAtlasは,昨年までのX線動態画像セミナーで紹介されており,今回,Ver.1.0が公開された。この症例集は,多くの人が症例画像を見てパターンを共有することを可能とし,新しい診断学の発展に寄与するはずである。今後さらなる症例が蓄積され,そのデータを基に,人工知能(AI)の活用などにより,標準的な診断学が確立されると期待している。
実臨床の研究報告に関しては,回を重ねるごとに内容が深まり範囲も広がっている。今回は,肺塞栓症における使用経験,体幹部定位放射線治療(SBRT)への応用,撮影における工夫事例や線量の検討など,この技術の特長を生かした新たな可能性の数々をご報告いただいた。私自身がまったく想定しなかった領域の報告もあり,これら実臨床での積み重ねが,今後のX線動態画像を用いた新たな診断の進歩につながるはずである。
総評2
工藤 翔二(公益財団法人結核予防会代表理事)
コニカミノルタが開発したX線動画撮影システムが2018年に発売され,すでに世界では100台以上が稼働している。当初は放射線科,呼吸器内科で使用されてきたが,呼吸器外科,循環器内科,整形外科など領域も拡大し,さらに,回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01」が発売されたことで,集中治療室(ICU)や救急などでの適応も広がっており,多くの診療科からX線動態画像の有用性が示唆されている。このような状況で開催された第4回X線動態画像セミナーは,800名を超える参加があった。発表内容も前回からさらに拡充しており,ディスカッションも含め,有意義であった。
第1部では,今回の目玉である無線動画撮影を実現したAeroDR TX m01を取り上げた。昆祐理先生には肺塞栓症および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例における臨床的有用性をご発表いただいた。また,髙倉永治先生にはワークフローや操作性,被ばく線量について,救急領域での使用経験をご報告いただき,ICUでの活用の可能性が示唆された。
第2部では,礒部威先生と角森昭教氏から,X線動態画像のデジタル症例集「DDRAtlas Ver.1.0」の概要と活用方法をご紹介いただいた。X線動態画像の標準化,正常例の解析が着々と進んでいることが示された。さらに,林健太郎先生には,気腫病変およびCOVID-19症例に対するX線動態解析についてご報告いただいた。
第3部では,3演題の発表があった。山崎誘三先生には,肺塞栓症を中心に,肺循環評価におけるX線動態解析の臨床応用をご報告いただいた。有用性と限界,血流診断,とりわけ肺塞栓症診断における位置づけについて,この技術の可能性を示していただいた。続く北村一司先生は,X線動態画像を放射線治療に応用するという,新たな展開をご発表いただいた。さらに,橋本直也先生には,診療放射線技師の立場から,X線動態画像の活用を広げるための各診療科との連携強化,新たな知見を得るための取り組み,そして撮影手技についてご紹介いただいた。
X線動画撮影システムは2018年の発売から4年に満たない間に,国内外の医療現場で100台以上が稼働しており,学会などで使用経験が多数報告されている。さらに,国内外で40編以上の論文が発表されており,わが国から発信する海外の論文が中心となっている。X線動態画像セミナーは今後も継続する予定であり,さらにはユーザー会,診療放射線技師向けの企画も検討されていると聞く。今後の目標は,日本発のX線動態撮影技術が,新たな診断技術として保険収載されることだと考えている。参加された皆様には各領域における学会などのキーマンとして,この技術を牽引していただきたい。そして,「単純X線検査は静止画像」という従来の常識を変えた日本発のこのすばらしい技術が,世界中で広く使われることを期待している。
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