X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)
第4回X線動態画像セミナー[2022年10月号]
第3部 実臨床
診療科との連携と撮影手技 ─スタンダードな検査になるために
橋本 直也(杏林大学医学部付属病院放射線部)
当院では,2020年5月からX線動画撮影システムの臨床運用を開始した。当院でのX線動態撮影の検査や運用方法,臨床と研究について報告する。
当院でのX線動態撮影の運用
X線動態撮影は,主に胸部で行っている。胸部撮影では,最初にX線動態撮影についての説明を行い,撮影ガイダンスに則って撮影を進めている。終了後には深呼吸の程度を把握するため,動画上で肋骨2本分程度動いているか確認する。配信画像はX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」を用いて,オリジナルとPL-MODE,LM-MODE,PH-MODE,PH2-MODEなどを提供している。
そのほか,頸部撮影も施行している。術後の嗄声や反回神経麻痺を疑う患者を対象に,主に声帯運動の観察を目的とする。座位でオートボイスに従い自然呼吸を含めて発声をさせながら撮影を行う(図1)。照射野を適正な部位に絞り,撮影時間は10秒,被ばく線量は1mGy程度で,DRLs 2020の頸椎撮影の線量(0.8mGy)の2回撮影より少ない。配信画像はオリジナルとFE-MODEを提供している。X線動態撮影のフレームレートは15fpsであるため,声帯の速い動きを観察でき,FE-MODEにより低線量であっても声帯部が強調され,詳細な動きが観察しやすいことが利点である(図2)。
X線動態撮影を行っている診療科は,胸部が呼吸器外科・内科,循環器内科,放射線治療科,頸部撮影が甲状腺外科,耳鼻咽喉科となっており,呼吸器外科が約7割を占める。撮影プロトコールは診療科によって異なるため,各科の医師と実際の画像を見ながら撮影方法などを決定した。
撮影件数は,現在,月100件程度,2021年は年間約1300件に及ぶ。ここまで撮影件数が増えた背景には,研究会の存在が影響している。2020年6月から呼吸器外科,放射線科,放射線部,コニカミノルタの合同による動態撮影研究会を立ち上げ,X線動態撮影をテーマとし,対象患者や疾患,研究の進め方などを検討している。この研究会が,当初は診療科へのX線動態撮影の理解や周知につながり,少しずつX線動態撮影が院内に広がっていった。現在は2,3か月に1回のペースで開催しており,当初の呼吸器外科などに加えて呼吸器内科,感染症科,耳鼻咽喉科も参加して検討を行っている。
臨床と研究のつながり
当院でのX線動態画像の臨床と研究の事例を紹介する。循環器内科では,クライオバルーンを用いた心房細動のアブレーション治療後にX線動態画像の撮影を行っている。クライオバルーン処置では,一過性の横隔神経麻痺が起こる可能性がある。X線動態撮影を行うことで,静止画よりも明確に横隔膜運動の低下を可視化でき,さらにDM-MODEで横隔膜運動解析を行い,定量化することにより,呼吸サイクルに合わせた回復期の経時的な変化も確認できる(図3)。
このようにDM-MODEは有用な検査であり多くの領域への展開が期待されるが,さらに線量を低減できないかと考え,DM-MODEに特化した研究を行った。検証の準備として,胸部ファントムと放射線治療で使われる頭頸部用シェル,シリンジを用いて上下運動を行うファントムを作成した。当院の基準線量からどの程度まで線量を落として横隔膜運動解析が可能かを検証した。その結果,基準線量から1/4の線量でも,ファントムの上下運動に関しては視認性に大きな変化もなく,解析可能なことがわかった(図4)。DM-MODEでは,さらに低線量化が可能であると考えられる。
まとめ
当院でのX線動態撮影のスタートから2年が経過し,さまざまな診療科での撮影機会が拡大している。静止画から動画になったことで,従来は見ることができなかった臓器の動きを観察でき,多くの情報が得られるようになった。今後のさらなる拡大のためには,動画像でなければわからない臨床的な情報の提供や,KINOSISの機能の拡充が期待される。
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