第2回 医療現場のワークフロー変革セミナー 2019
2020年1月号
人工知能 セッション2
GEが取り組む,AI活用プラットフォームEdison AI Servicesについて
中西 克爾(GEヘルスケア・ジャパン株式会社EDS本部アジアパシフィックコマーシャルソリューションリード)
本講演では,GEの人工知能(AI)活用プラットフォームとして,“Edison AI Services”などを紹介する。
オープン戦略でAI開発を推進
医用画像におけるAIアルゴリズムの開発は,さまざまなモダリティ,手技,撮影部位などの組み合わせにより,膨大な機会,可能性があるが,臨床応用に向けては,臨床現場での優先度を設けなければならない。また,これらの膨大なAIアルゴリズムをGEだけで開発することは不可能である。
GEは,医用画像管理(VNA+OCDB)などでオープン戦略を展開しており,AIについても既存システムとの相互運用性を確保し,自社,他企業とのパートナーシップによって優れたアプリケーションを開発してユーザーに提供する。
GEでは,AIにおけるオープン戦略として,Amazon Web Services(AWS)とのパートナーシップを2018年に締結し,米国では,ピッツバーグ医療センター,ボストン小児病院,カリフォルニア大学サンフランシスコ校,ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院/マサチューセッツ総合病院をクリニカルパートナーとして,AIアルゴリズムを開発している。さらにGEは,世界中のAI関連開発企業とも協業していく。
Edison AI ServicesでのAIアルゴリズムの開発
GEのAI活用プラットフォームであるEdison Platformでは,AWS上に開発環境“Edison AI Services”を構築した(図1)。これは,AWSの汎用AI 開発プラットフォーム“Sage Maker”をベースに, HL7やDICOMなどの標準規格に則ったデータを扱えるようにし,医療業界に必要なセキュリティなどのツールを加えて,医療向けの人工知能開発プラットフォームを構築したものである。実際の開発では,必要な教師データは世界各国のアカデミック・クリニカルパートナーとの契約に基づいて提供され,良質なデータと,プロフェッショナルとしてのラベリング,アノテーション付けなどを行う。それをサポートし,マネジメントして,製品化や市場への投入を行うのがGEの役割であり,数百名のデータサイエンティストがEdison AI Servicesに携わっている。
このようにして開発されたAIアルゴリズムは,ソフトウエア単体の“Edison Applications”と,モダリティに組み込んだ“Edison Smart Devices”として提供される。Edison Applicationsは,クラウドや,GE「AW Server」上で使用でき,画像ビューワ「Universal Viewer」や他社ビューワとの連携が可能である。一方,Edison Smart Devicesの例として,RSNA 2018で,CTの画像再構成アルゴリズム“TrueFidelity Image”を発表した。
GEでは,今後もAIアルゴリズムを搭載したモダリティを開発する。
AIを開発・使用するためのアプリケーションを提供
Edison Platformではユーザー向けに,AIを開発するための“AI Workbench Service”と,AIを使うための“AI Inferencing Service”の2つのアプリケーションを提供する(図2)。
AI Workbench Serviceは,データ使用契約からアノテーション付け,トレーニング,評価,デプロイまでのAI開発環境を,監査査証も含めてアプリケーションとして提供する。まずはクラウドでのサービスを計画しているが,医用画像という機微な情報を考慮して,オンプレミスでの導入も可能である。
AI Inferencing Serviceは,前述のクリニカルパートナーと開発したAIアルゴリズムや,世界中の企業が提供するAIアルゴリズムを,ユーザーが選択して利用できるようにする。AI Inferencing Service の利用に当たっては,“Edison AI Workflow Orchestration”というアプリケーションを用いて,ユーザーがAI アルゴリズムを使用するためのワークフローを,簡単なダイアグラムを使用して設定可能である。Edison AI Workflow Orchestrationでは,例えば,頭部MRI検査を行った場合,AI Inferencing Service上に配置された,どの脳梗塞検出アルゴリズムで検出を行い,その結果をビューワ上に表示するといった一連のワークフローを,ユーザー自らが設定できる。
まとめ
GEでは,今後もオープン戦略で医療分野のAIの普及を進める。そのためにも,各種モダリティへのAIアルゴリズムの搭載を進め,既存システムと容易に接続できる相互運用性を重視して開発を行う。そして,クリニカルパートナーや企業とのパートナーシップを基に,優れたAIアプリケーションを提供していく。
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