技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2024年8月号
Breast Imaging最新技術
Breast imagingにおける拡散強調画像の進化
乳房はその形状によって磁化率の影響を受けやすく,特に拡散強調画像(DWI)の撮像が本質的に難しい領域であるが,近年のDWI撮像の技術開発は日進月歩であり,静磁場均一性の向上や受信コイルなどのハードウエア開発も重要である一方で,SNR改善や歪みの低減など,ソフトウエアの進化による寄与も大きい。本稿では,breast DWIにおいて,特にこの2つの側面:SNRと歪みの改善に対する最新技術をそれぞれ紹介する。
●「AIR Recon DL」による画質の向上
昨今のAI技術の進化はあらゆる領域で顕著だが,特にMRIに関しては,deep learningによる画像再構成(DLR)が臨床に普及している。AIR Recon DLは,k-space raw dataに対して直接DLを適用することで,ノイズ低減のみならず,画像尖鋭度の向上とトランケーションアーチファクトの低減などの恩恵を同時に得ることが可能になる。breast imagingにおいては全シーケンスに適用可能であるため幅広く有用だが,特にDWIに対しては,画質の向上のみでなくADC mapなどの定量精度の向上も期待できる。
●さまざまなDWI歪み低減技術
DWIの歪み低減技術は,いくつかの手法およびその組み合わせによって,従来よりも大幅に進歩している。局所選択励起技術である「FOCUS(Fov Optimized and Constrained Undistorted Single-shot)」は,2D RF excitationを応用して,撮像領域を絞っても画像の折り返しが生じないため,Ky方向のデータ収集を短縮して歪みを低減することが可能になる。乳房領域においては片側のみに限定して高分解能化が可能になり,かつ上記のAIR Recon DLも併用可能なので,SNRをさらに向上させることもできる。
もう一つの選択肢として,multi-shot DWIである「MUSE(MUltiplexed Sensitivity Encoding)」は,複数の励起パルスでk-spaceデータを収集することによって歪みを低減させ,かつショット間で生じる潜在的な位相差を補正しながら画像再構成を行うことで,アーチファクトがなくSNRの高い画像を得ることができる。図1は通常のDWIとMUSE-DWIの比較だが,病変の微細な構造がより明瞭に描出されているのが確認できる。
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