技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2019年7月号
企業における医療向けAI技術の開発動向
ディープラーニングを用いた新しいCT画像再構成アルゴリズム“TrueFidelity Image”
CTの40年以上の歴史の中で,画像再構成アルゴリズムも時代とともに進化してきたが,当初の30年ほどは主にfiltered back projection(FBP)が用いられてきた。FBPは計算時間も短く,適度な線量で読影しやすい自然な画像を描出することができ,現在に至るまでCT画像再構成アルゴリズムのベースを担ってきた。しかし,低線量時や薄いスライスで表示する際にノイズが増加するというデメリットがあるため,2008年に,逐次近似法を応用したiterative reconstruction(IR)を発表した。IRはFBPと比較し,特に低線量時におけるノイズを大幅に取り除くことで,低被ばくかつ低ノイズ画像を実現した。IRはその後広く普及し,現在では臨床において一般的に使用されている。しかし,デメリットとしては,ノイズの低減とともに画像の質感がFBPと乖離し,読影者から見て違和感があると指摘されるケースがあった。
そこで従来の画像再構成アルゴリズムのメリットを維持しつつ,デメリットを解消した“TrueFidelity Image”(TFI)を開発した。TFIは低ノイズかつ読影しやすい質感を両立した画像を再構成することが可能で,米国FDAに承認された世界初のディープラーニングを利用したCT画像再構成アルゴリズムである。以下に,TFIの開発過程を示す。
(1) CT画像を再構成する。
(2) この画像と教師画像との誤差を導き出す。この教師画像に高品質のFBP画像を使用し,“Ground Truth”と呼び,高画質の臨床画像および比較対象としての高線量および低線量でのファントム画像が含まれる。
(3) 誤差逆伝播と順伝播を繰り返し,膨大なパラメータを最適化しながら学習することで,ニューラルネットワークを構築する。
(4) これを膨大なデータセットに対して繰り返し学習を行うことで,よりGround Truthに近い画像を生成可能な学習ずみdeep neural network(DNN)が構築される。
(5) このDNNをCT装置に画像再構成アルゴリズムとして実装する。
(6) 臨床現場でCT撮影が行われ,そのデータが画像再構成フローに入力されるとDNNが推論処理を行い,処理を最適化しGround Truth画質をめざした画像再構成を行う。これにより,あらゆる撮影条件において常にGround Truthに近い画像を実現する。
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