GE Healthcare Japan Edison Seminar 2019
2019年12月号
GE Healthcare Japan Edison Seminar 2019
【基調講演1】次期健康・医療戦略の方向性について
宮原 光穂(内閣官房健康・医療戦略室参事官)
本講演では,わが国の健康・医療戦略の現状と次期の方向性を報告する。
健康・医療戦略の取り組み
従来,医療分野のイノベーションの研究開発は,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)などを中心に行われてきたが,2014年に日本の健康・医療分野の司令塔として健康・医療戦略推進本部が設置された(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/
)。2015年には,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)も設立された。
健康・医療戦略では,医療分野の研究開発,新産業の創出,医療の国際展開,医療のICT化を推進。そのうち研究開発については,医療分野研究開発推進計画が策定され,AMEDを中心に,医薬品創出や医療機器開発など5つの横断型プロジェクトと,がんや脳とこころ,感染症など4つの疾患領域対応型プロジェクトが進行している。
次期の方向性の見直し
健康・医療戦略および医療分野研究開発推進計画は,現在,2020年度以降の方向性を検討している。現行のプロジェクトの課題として,同一技術の開発が複数の疾患領域で行われていたり,認知症や糖尿病・循環器疾患などの慢性疾患が対象疾患として設定されていないことに加え,健康寿命延伸の観点から,予防やQOL改善なども重視する必要がある。
これらに基づき,次期の計画では,健康寿命の延伸を目標とし,医薬品や医療機器などのモダリティ領域を軸に,開発目的や疾患領域の観点を含めた横断型統合プロジェクトを中心とした再編を検討している(図1)。
検討に当たり,各学会や日本医療機器産業連合会,日本製薬工業協会などにアンケートを行った結果,データ基盤やがん,生活習慣病,認知症などの領域が健康寿命延伸への貢献度が高いことが示された。さらに,再生医療・遺伝子治療領域で日本の論文発表比率が高く,ウエアラブルデバイスなどの領域で論文発表の伸び率が高かった。また, JSTのシンクタンクである研究開発戦略センター(CRDS)の報告では,データ・情報統合型研究の必要性などが挙げられている。加えて,死亡と障害の双方を考慮した障害調整生存年(DALYs)を用いた推計では,認知症や老化に伴う疾患の負荷が大きいことが示された。
これらの点を踏まえた計画の見直しの方向性を図2に示す。(1) 医薬品,(2) 医療機器・ヘルスケア,(3) 再生・細胞医療・遺伝子治療,(4) ゲノム・データ基盤,(5) 研究開発基礎基盤の5領域を軸に,疾患を限定しない統合プロジェクトとして集約し,今後,関係省庁と議論を重ね,2019年度内に詳細を決定する予定である。さらに,公的保険外ヘルスケアサービスの需要喚起や,ベンチャーなどによるイノベーション創出の支援強化,医療の国際展開などを検討・推進していく。
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