Centricity LIVE Tokyo 2017

2017年10月号

GEヘルスケアITリーダーシップ・ミーティング

事例セッション 3 マルチシステム統合へのチャレンジ,更なる読影効率向上に必要な条件

当院の検査を支えるCentricity PACS System

竹本 弘一(広島市立広島市民病院放射線技術部主任技師 医療画像情報管理担当)

本講演では,広島市立広島市民病院におけるPACSについて,約10年前から現在に至るまでの歩みと,今後の構想について紹介する。

PACS構築と更新の経緯

当院では,2005年度にGE社製「Centricity PACS」を導入した。翌年には電子カルテ稼働に合わせて,LANとPACSサーバの冗長化とモニタ環境の整備を図った。この背景には,2008年度の診療報酬改定において,電子画像管理加算が設けられたことがある。その後,PACSサーバのデータ量の増大などにより,2011年度にはPACSを更新し,バージョンが「LX V2.0」から「EE V3.0」になった。さらに,2015年度の電子カルテ更新時には,PACSと内視鏡,生理検査,循環器,病理,文書管理の各部門システムを統合。広島市立舟入市民病院とのシステム統合を図るために,「EE V4.0」へとバージョンアップした。そして,2016年度にはPACSの2回目の更新を行い,GE社製の「Centricity Universal Viewer」と「Centricity Clinical Archive(CCA)」を導入した。
2007年ごろ,当院では,PACSの将来構想として,(1) マンモグラフィを含めた完全フィルムレスを実現,(2) 他部門の医用画像も含めた統合PACSの推進,(3) 遠隔画像診断センターや市立病院間,検査委託病院との施設間連携,の3点を挙げていた。その実現に向けては,放射線診断科主任部長の浦島正喜先生の指導の下,月1回,ベンダーとのワーキンググループミーティングと部門内委員会での協議を行ったほか,担当者3名による検討を重ねてきた。

完全フィルムレス化と統合PACS,施設間連携を実現

上記(1) のマンモグラフィのフィルムレス化のために,2009年にマンモグラフィ専用読影ビューワを3台導入した。1台を放射線部門の撮影室,2台を乳腺外科外来診察室に配置し,放射線診断科の読影室には,オプションの“Mammo Workflow”を搭載したGE社製読影ビューワ「Centricity RA1000」と5メガピクセルモニタのセットを設置した。これにより,PACSに保管されているマンモグラフィ画像を読影できるようにし,完全フィルムレスを実現した。
また,上記(2) の統合PACSの推進については,読影効率の向上などを目的に,前述のとおり2015年度の電子カルテ更新時に,内視鏡,生理検査,循環器,病理,文書管理の各部門システムを統合した。これにより,患者ごとに検査情報などが一元管理ができるようになった。さらに,GE社製「Centricity CDS/iDIR」を統合画像ポータルとして導入し,データ種別,時系列にマトリックス表示された画面から必要なデータを見たい時に,見たい場所で参照可能にした。
上記(3) の施設間連携は,2007年12月から外部への遠隔画像診断の依頼を開始して,2009年11月に市立病院間,近隣施設とのネットワークを構築し,オンラインでの連携をスタートしている。さらに,2014年度に広島市立リハビリテーション病院,2015年度に広島市立舟入市民病院とのPACSの統合を図り,市立病院3施設のサーバストレージを統一。当院のCentricity PACSのサーバに3病院のデータを保管する運用とした(図1)。なお,広島市立安佐市民病院も含めた4病院は広域イーサネットでの施設間連携を行っており,遠隔画像診断を依頼している大阪先端画像センターや近隣施設間は,Bフレッツで接続している。また,市立病院間のPACSの統合では,当院に非常用サーバを導入したほか,広島市立舟入市民病院からマンモグラフィ検診や脳ドックの遠隔画像診断依頼を受けるようにした。

図1 市立3病院のPACS統合化

図1 市立3病院のPACS統合化

 

今後の構想

今後の構想としては,広島市立安佐市民病院とのPACSの統合を進め,ハードウエアの共同利用により,導入・運用コストの最適化を図りたいと考えている。同院との連携では,バックアップ用の二次サーバを共通化し,将来的に災害対策としてGE社の「医知の蔵」のようなクラウドサービスの利用も検討している。また,当院内に読影センターを設け,Centricity Universal Viewerの画像連携機能である“Cross Enterprise Display(XED)”を利用して,市立病院内での読影負荷軽減・効率化を図りたいと考えている。さらに,クラウドサービスは地域の医療機関も利用できるようにして,画像連携を行うことも視野に入れている。

 

竹本 弘一(Takemoto Hirokazu)

竹本 弘一(Takemoto Hirokazu)
1990年川崎医療短期大学卒業,広島市民病院に入職。2002年から放射線部門システムの導入に携わり,2003年に医療情報技師を取得後はシステム専任となり,院内のICT化に尽力している。2013年から広島医療情報システム研究会副代表を務める。

 

 

Centricity Universal Viewerを使用した現状と将来への期待

浦島 正喜(広島市立広島市民病院放射線診断科主任部長)

本講演では,広島市立広島市民病院の放射線診断医の現状とGE社製「Centricity Universal Viewer」を使用した現状,今後予想される問題や課題,読影業務軽減のための要望について述べる。

当院の放射線診断医を取り巻く現状

当院は,病床数743床の大規模病院であるが,放射線診断医は常勤が4名しかおらず,マンパワー不足が問題となっている。一方で,放射線部門の2016年度のCT,MRI,核医学の検査件数は4万8977件,1日あたり204件で,放射線診断医数に対して,非常に多くなっている。
放射線診断科では,未読影検査を減少させるために,外来の予約検査には遠隔画像診断を利用しているほか,脳神経外科など専門性の高い領域は各診療科に任せて,緊急性の高い救急外来や入院患者の検査を中心に読影している。2016年度では,CT検査3万9770件のうち院内読影は1万8038件,遠隔画像診断は5847件,合計2万3885件で読影率は60%,MRI検査9207件のうち院内読影は4704件,遠隔画像診断は505件,合計5209件で56.6%となっている。また,年間の院内読影件数は,2016年度が2万5146件であるが,2008年度は1万2514件しかなく,9年間で約2倍に増加している。このように,当院では放射線診断医のマンパワーが不足している一方で,近年読影件数が増加しており,業務負担が増加している。

Centricity Universal Viewerを使用した現状

当院の放射線診断科は,2016年12月のPACS更新により,読影用ビューワにCentricity Universal Viewerを導入した。増加し続ける読影件数に対応するには,読影業務を効率化するビューワが必要であり,画面レイアウトの自動設定やシリーズの自動同期,容易な過去画像比較などといったことが,少ないマウス操作で行えることが望ましい。また,3D画像処理の機能を搭載していることや,他システムと連携できるビューワが求められる。
Centricity Universal Viewerは,ハンギングプロトコルにより,放射線診断医ごとに好みのレイアウトで画面を構成し,自動でシリーズを同期して表示するので,位置合わせなどの必要がない。過去画像との比較も,参照するべき検査や同一部位の検査を色で示して,容易かつ速やかに表示できるようにしている。さらに,ナビゲータ画面のサムネイル内のバーチャルモニタをクリックすると,マウス操作なしにメイン画面に画像を表示する。これにより,マウス操作を大幅に減らすことが可能となった。
3D画像処理機能も,Centricity Universal Viewerは数多く搭載している。PET画像の読影もSUVの測定を行え,3D画像処理ワークステーションを使用することなく,3D画像の作成や解析ができ,読影効率を高めている。
他システムとの連携については,「Centricity Universal Viewer ZFP PIV」を用いて,放射線検査画像やそれ以外の内視鏡画像やレポートなど,ほかの診療科の部門システムのデータを参照できるようにしている。電子カルテを介したデータ参照よりも効率的かつスピーディに行え,詳細な読影レポートを短時間で作成できる。また,確定診断後の病理画像との比較なども容易である。
Centricity Universal Viewerを導入した2016年12月の前後,半年間の院内読影件数を比較すると,導入前が1万2355件,導入後は1万3176件となっており,821件,約6.6%増加した(表1)。一方で,遠隔画像診断の件数は,導入前が3294件,導入後は2446件となり,848件減少した。これによって,遠隔画像診断の費用を削減することができた。

表1 Centricity Universal Viewer導入前後半年間の院内読影件数

表1 Centricity Universal Viewer導入前後半年間の院内読影件数

 

今後予想される問題や課題,読影業務軽減のための要望

今後もモダリティの高性能化によって画像データが増加し,これ以上の読影効率を改善することは困難であろう。そこで,人工知能(AI)などを活用した,放射線診断医を支援するシステムが必要だと考える。例えばCentricity Universal Viewerの“スマート・リーディング・プロトコル(SRP)”は,AIを用いたレイアウト学習機能を用いており,自分好みのレイアウトを学習させることができ,読影効率の向上に貢献する。今後も,GE社には,モダリティの高性能化だけでなく,放射線診断医の負担を軽減するシステムの開発を期待したい。

 

浦島 正喜(Urashima Masaki)

浦島 正喜(Urashima Masaki)
1987年鳥取大学医学部卒業。広島大学病院,国立福山病院,広島赤十字・原爆病院,安佐市民病院を経て,2001年から広島市民病院放射線科。2008年に同院放射線科主任部長となり,2015年に組織改編により同院放射線診断科主任部長。

 

TOP