Case 15 社会医療法人輝城会 沼田脳神経外科循環器科病院
地域包括ケアを支える法人のIT化をFileMakerのユーザーメードシステムがサポート
システムマネジメント部門 西松浩太郎氏 塩谷 勇氏
2014-2-1
病棟でのiPadとFileMaker Goによる看護必要度入力
群馬県沼田市に本拠を置く輝城会グループ(西松輝高理事長)は,急性期病院の沼田脳神経外科循環器科病院を中核とする社会医療法人輝城会と,医療法人社団高仁会,社会福祉法人なごみの杜の3法人を運営し,群馬県北部で訪問看護ステーション,ケアセンター,特別養護老人ホームなど介護,福祉まで幅広いサービスを提供する。2009年には群馬県で初の社会医療法人として認可されるなど,救急医療やへき地医療など公益性の高い事業を展開している。同グループでは,沼田脳神経外科循環器科病院を中心にグループ内の情報共有,連携を中心にしたITシステムの構築をFileMakerによるユーザーメードで進めている。グループ内のIT関係の構築や管理を行う品質管理部システムマネジメント部門の西松浩太郎氏と塩谷勇氏に,グループ内でのFileMakerによるシステム構築の現状を取材した。
●病院を中核に介護,福祉,在宅医療まで地域に根ざした事業を展開
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輝城会グループの3つの法人では,沼田脳神経外科循環器科病院をはじめとする4医療機関(1病院,3クリニック),特別養護老人ホーム,2つの訪問看護ステーション,4つのケアセンターなど13介護施設を運営する。また,厚生労働省の「平成24年度在宅医療連携拠点事業」を受託し,訪問看護ステーションまつかぜ内に在宅医療連携拠点室を立ち上げ,地域での包括的かつ継続的な在宅医療の提供への取り組みを進めるなど,利根沼田地域を中心に地域包括ケアを視野に入れた事業を展開している。
グループの中核となる沼田脳神経外科循環器科病院は,病床数は84床ながら脳動脈瘤のクリッピング術,冠動脈・大動脈バイパス手術,ステントグラフト内挿術など高度な手術に対応し,救急告示病院として24時間365日断らない救急医療を提供する。医療情報システムとしては,レセプトコンピュータのみで紙カルテでの運用となっているが,一方でグループの全施設をインターネットVPNで接続し,予約や画像情報などの情報共有を図っている。このネットワークは,当初は病院のPACS(画像情報)の連携を目的に構築されたが,現在では介護系施設を含めて全施設を結んだ情報共有に活用されている。グループとしてのIT導入の方向性を西松氏は次のように説明する。「ITの導入については,組織内でのスムーズな連携や情報共有を目的に積極的な投資を行っています。一方で,電子カルテに関しては当院の病床数が少ないこともあって機動性を重視し,システムに縛られないように無理に電子化はしていません。その中で,業務の効率化や診療をサポートするためのシステムを,FileMakerによるユーザーメードで構築しています」
●病棟業務をサポートする病床管理システムを構築
FileMakerによる本格的なシステム構築のきっかけになったのが,2006年に病院機能評価を更新したことだと西松氏は言う。以前から個人や診療科単位ではFileMakerが使われていたが,病院機能評価を受けるにあたって,病棟でホワイトボードを使って行っていた病床管理を個人情報保護の観点からシステム化したことが,病院全体としての本格的なFileMakerによる構築の第一歩となった。社会医療法人化された2009年には,グループ内の施設から沼田脳神経外科循環器科病院の診察や検査の予約をオンラインで行う予約管理システムをFileMakerで構築した。この時にFileMakerをバージョン10にバージョンアップしてFileMaker Server Advancedを導入,施設間を結ぶインターネットVPNを利用してインスタントWebで公開するスタイルを確立した。塩谷氏は,「それまでレセコンの予約管理画面で各施設からの問い合わせに電話で対応していましたが,VPNによるセキュアなネットワークで各施設予約状況を把握できるシステムが構築できました」と説明する。
そのほか,現在FileMakerを使って構築されているのは,(1) 退院サマリや診療情報提供書などの各種文書管理システム:患者情報をレセプトコンピュータから取り込んで(ODBC接続)作成できるように連携,(2) 未収金管理システム:レセコンから未収の収納データを取り込み(ODBC接続),該当者へのコンタクト履歴などを管理,(3) 会計・請求書発行システム:へき地の出張診療の際に出張先でスタンドアローンで使用,などであり,多様なシステムが稼働している。
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●iPadによる看護必要度チェックシステムを運用
同院では,FileMaker GoとiPadを使った“重症度・看護必要度チェックシステム”を構築し2012年から運用している。同院は入院基本料7:1を取得しているが,入院基本料の算定要件を満たすためには,定期的に入院患者の看護必要度のチェックを行い,基準を満たす患者の割合が15%以上であることが求められる。以前は,1日に1回看護師が紙ベースでチェックを行い,病棟クラークが点数の計算や集計を手作業で行っていた。これをiPadとFileMaker Goによる“看護必要度入力システム”を作成し,タッチ入力と結果の自動計算によって病棟での業務の省力化を図った。集計結果は病床管理システムに表示されるようにして,入院状況について情報共有を可能にした。塩谷氏は,病棟の看護必要度のチェックシステムについて,「FileMaker Go 12アプリが無料でAppStoreからダウンロードできるようになり,病棟の業務支援を目的に,2つの病棟でiPad4台を導入しましたが,手間が少なくなったとスタッフからは好評です」と語る。同グループでは,介護系のベンダー製システムでiPadを導入しているが,西松氏は介護系での導入は医療現場でのタブレット端末の利用のテストケースでもあると次のように言う。「データの入力はシステム導入における課題のひとつです。iPadなどのデバイスを利用して,タッチ入力などさまざまな可能性を検討していきたいと考えています」
●システムマネジメント部門を中心にグループ内のIT化を推進
システムマネジメント部門は,輝城会の社会医療法人化など組織の発展に伴うグループ内でのPC利用の拡大に対応するため,IT関連の管理,インフラ整備を行う部署として2010年に立ち上げられた。現在,4名のスタッフで,FileMakerの構築,ハードウエアの調達,ソフトウエアのライセンス管理やインフラ整備を行う。西松氏は,「これまで機器やソフトウエアの購入は,各施設が個別に発注していましたが,それらを法人として把握し一括管理することにして,FileMakerライセンスについても2012年にパッケージから,年間更新型ライセンス(AVLA)契約に切り替えました。ボリュームライセンスによる導入コストの削減と管理のしやすさは大きなメリットですね」と述べる。
FileMakerの構築については,院内からの要望があった時点でシステムマネジメント部門内で必要性や優先順位などを見極めて検討を行い,構築にあたっては現場のスタッフの意見も聞きながら進めている。システムマネジメント部門でのユーザーメードシステムの管理について西松氏は,「グループ内には小規模の多くの施設がありますので,個人的にFileMakerで作成したシステムが業務の中に組み込まれて,本人がいなくなった場合には混乱の原因になります。サーバのリソースにも限りがありますので,組織内のユーザーメードシステムをシステムマネジメント部門でうまくコントロールしていくことが今後の課題です」と説明する。
今後の方向性について,西松氏は「輝城会グループでは,在宅医療の連携拠点としての事業を進めていますが,セキュリティなどの関係からFileMakerでの構築は今のところ考えていません。ただ,今後,社会保障・税番号制度(マイナンバー)などの後押しによりシステム化を進めることになれば,組織内に構築のノウハウがあるFileMakerを生かすことも検討していきたいと思います。また,院内のシステム構築については,将来的な電子カルテシステムの導入や介護システムとの連携などを含め,自分たちでコントロールできるFileMakerのユーザーメードの良さを生かして,柔軟な対応を行っていきたいと考えています」と語る。
医療から介護,福祉まで提供する地域包括ケアシステムでは,それぞれに異なる多様なニーズに対応することが望まれる。FileMakerによるユーザーメードが力を発揮する領域のひとつといえるだろう。
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社会医療法人輝城会
沼田脳神経外科循環器科病院
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FileMaker Pro:110(AVLA)
FileMaker Pro Adv:5
FileMaker Server :1