技術解説(富士フイルムメディカル)
2024年4月号
腹部領域におけるXA/DR技術の最前線
低侵襲内視鏡治療をアシストする先進技術
上野 完[富士フイルムヘルスケア(株)診断システム営業部画像診断営業グループ]
■内視鏡治療のために。
近年,透視システムは,検査だけではなく,治療でも使用されるシーンが増加している。特に,胆膵疾患に対する内視鏡治療は,その低侵襲性から広く応用されており,主流の内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)だけでなく,近年ではinterventional EUSと総称される超音波内視鏡(EUS)を用いた治療も加わり,多岐にわたる手技が行われている。当社は,これらの低侵襲内視鏡治療をアシストするために,共同研究を通じてさまざまな独自技術を開発している。本稿では,フラッグシップモデル「CUREVISTA Apex」*1について紹介する。
■たて・よこ・ななめ,視たいアングルに。
当社のCUREVISTAシリーズ*2,3は,X線管とFPDが縦と横の2方向に動く映像系ユニット(2WAY ARM)を採用し,テーブル完全固定により被検者を動かさない検査を実現している。しかし,ERCPなどの検査時に内視鏡スコープとガイドワイヤが重なって見づらい場合は,被検者の体位を回転させ見やすい角度に調整する必要がある。その際,医療スタッフがX線照射エリアに近づくこととなり,職業被ばくの増加が懸念されている。その解決策としてCUREVISTA Apexでは,映像系ユニットが「縦」「横」に動く2WAY ARMに,「斜め」を加えた「3WAY ARM」(図1)を採用した。被検者体軸の左右方向の斜入(LAO/RAO)ができる3WAY ARMにより,肝内胆管の重なりや前後がわかりづらい時も医療スタッフを介さずに画像の角度を変えて観察することが可能となった。
■標的を逃さない。「TARGET」
ガイドワイヤを素早く動かすようなシーンで威力を発揮する低残像な透視画像技術である(図2)。ピクセル単位で動きベクトルを算出する「オプティカルフロー」技術を採用し,透視画像内の局所的な対象物の動きを的確に追従することができる。
■見えないから,視える驚き。「WOW*4」
透視下でガイドワイヤなどのデバイスを浮き出して見やすくする透視画像技術である(図3)。背景部に減衰処理を施すことで,椎体に重なるデバイスの視認性を向上させることができる。
■低被ばく。さらに半分。「IntelliFRAME」
散乱X線を減らし医療スタッフの被ばくを低減する技術である(図4)。透視パルスレートを1/2(被ばく線量半分) に設定しても,フレームレートを2倍で表示することができる。
■被ばく低減は見ることから。「IntelliMAP」
実際の照射線量から散乱X線マップ(線量・分布)をシミュレーションする技術である(図5)。医療スタッフが気になる散乱X線を可視化することができる。
*1 販売名:デジタルX線透視撮影システム
CUREVISTA Open / CUREVISTA Apex
医療機器認証番号:第302ABBZX00032000
*1 (CUREVISTA Apexは3WAY ARMを搭載したモデルの呼称です。CUREVISTAは富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です)
*2 販売名:汎用X線透視診断装置 CUREVISTA
医療機器認証番号:第219ABBZX00109000
*3 汎用X線透視診断装置(CUREVISTA),デジタルX線透視撮影システム(CUREVISTA Open/CUREVISTA Apex)
*4 WOWはWire Optimum Weighted imagingの略称です。