技術解説(富士フイルムメディカル)

2019年7月号

企業における医療向けAI技術の開発動向

人工知能を応用した筋肉量の定量化技術

最近の人工知能(AI)ブームにより,医療分野においても診断や治療などのさまざまな領域でAI技術の応用が期待されている。日立でも,AIをはじめとするデジタルテクノロジーを利用し,健診・検診の画像における定量化や病変候補の検出を行う技術を開発中である。本稿では,AIを応用した定量化技術を紹介する。

●定量化技術

「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動〔健康日本21(第二次)〕」において,ロコモティブシンドロームの認知度向上が目標に設定されるなど,超高齢社会の日本において,QOL向上にはロコモティブシンドローム対策が欠かせない1)。その一つとして筋力の維持が重要であり,筋肉量を評価することで,運動の習慣化をはじめとした生活習慣の改善へつなげていくことが求められている。日立では,定量化の一例として,CT画像を利用して筋肉量解析を行う技術を開発している。

健診機関の検査メニューの一つに,へそ位置付近でCT画像を1スライス撮影して内臓脂肪型肥満のチェックを行い,健康管理や生活習慣病の予防に役立てる内臓脂肪CT検査がある。開発中の技術は,内臓脂肪CT検査の画像から大腰筋や脊柱起立筋の面積を算出したり,筋肉内脂肪量を算出し定量化するものである(図1)。個人差や撮影位置の微妙なズレに基づく画像内の筋肉形状や大きさの違いに対応するため,深層学習技術を用いている。また,内臓脂肪CT検査の画像だけでなく,大腸CT検査の画像にも対応している。
今後は,過去10年以上の検査データを基に,標準的な筋肉量・筋肉内脂肪量と受診者の筋肉量・筋肉内脂肪量との比較や,将来の疾患リスク予測を行う技術へと開発を進めていく。

図1 筋肉量の定量化

図1 筋肉量の定量化

 

AIを用いた定量化技術を紹介した。今後も,検診画像を対象とした定量化や病変候補の検出,疾患リスクの予測などの技術の開発を進めていく。

●参考文献
1)厚生労働省告示第四百三十号. 2012.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf

 

【問い合わせ先】
ヘルスケアビジネスユニット診断システム事業部
www.hitachi.co.jp/healthcare

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