技術解説(富士フイルムメディカル)
2019年6月号
US Today 2019 超音波検査・診断最前線
検査の質の向上・効率化を実現する超音波診断装置「ARIETTA 850」の高画質化技術
藤井 信彦[(株)日立製作所第一製品開発本部]
近年,GPUに代表されるようなプロセッサの演算性能が格段に向上している。これに伴い,超音波診断装置もリアルタイムに処理可能な情報量が増え,また,高度な画像処理アルゴリズムを搭載することが可能になり,高画質化を実現している。そのような背景の中,当社は「高画質」「シームレスなワークフロー」「ユニークなアプリケーション」をコンセプトに,超音波診断装置の理想形をめざして「ARIETTA 850*」(図1)を開発した。本稿では,「高空間分解能」「高コントラスト分解能」を追究したARIETTA 850の高画質化技術を説明する。
■“eFocusing”による高画質化
従来の送信ビームフォーミングでは,方位分解能はフォーカス点に近い深度ではビーム幅が狭く良好であるが,フォーカス点から離れた深度では劣化する。従来の送信ビームフォーミングに対して,ARIETTA 850に搭載されたeFocusingは,多方向同時受信によって形成される受信ビーム領域が重なるよう,位置をずらして複数回送信し,得られる受信ビームを合成する技術である(図2)。この結果,eFocusingは従来の課題の一つであったフォーカス位置設定を必要とせず,高空間分解能,高コントラスト,高ペネトレーションなBモード画像を提供することが可能である。
従来の送信ビームフォーミングとeFocusingの効果を比較した画像を図3に示す。aは従来の送信ビームフォーミングを用いてフォーカス位置を浅部に設定した画像,bは深部に設定した画像である。
aでは,浅部の血管腫(a➡)は明瞭に描出されている反面,深部の血管腫は不明瞭である。bは,同じくフォーカス位置を深部に設定した画像である。aとは逆に,深部(b➡)に対し浅部の血管腫は不明瞭となっている。cはeFocusingの画像で,2つの血管腫が共に明瞭に描出されている(c➡)。
■“Carving Imaging”による組織分別能向上
ARIETTA 850は,超音波画像診断に特化したさまざまな画質調整パラメータを備え,質的評価に適した画像から形態評価に適した画像までを表現可能である。特に,ARIETTA 850で,今回新たに開発したCarving Imagingは,組織構造の視認性の良さを追究した画像処理であり,明瞭な形態描出が可能で,ノイズレスでクリアな画像を提供する。図4はCarving Imagingの効果を示した画像である。aは原画像,bは原画像から算出された中間画像,cは合成画像であり,Carving Imagingの出力画像である。中間画像(b)は,原画像からノイズを除去し,明瞭な組織構造を抽出しており,その出力を原画像に合成することで,画像の視認性,組織分別能を向上させている。
◎
ARIETTA 850のeFocusingによる空間分解能を重視した画像と,Carving Imagingによる視認性を重視した画像を組み合わせることで,超音波検査の質の向上および効率化に貢献することを期待する。
販売名:超音波診断装置 ALOKA ARIETTA 850
医療機器認証番号:第228ABBZX00147000号
*ARIETTA,ALOKAは株式会社日立製作所の登録商標です。
【問い合わせ先】
ヘルスケアビジネスユニット診断システム事業部
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