新MRI導入による安心と信頼のワークフロー向上 
佐々木竜輝(医療法人社団正風会小林病院放射線科)
Users session 1.5T ECHELON Smart Plusの使用経験

2021-5-25


新MRI導入による安心と信頼のワークフロー向上 
佐々木竜輝(医療法人社団正風会小林病院放射線科)

当院(東京都板橋区)は,病床数は115床,11診療科を有する地域に密着した病院である。2005年から日立製作所の0.4TオープンMRI「APERTO」を使用してきたが,2019年9月に1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」に更新した。同時に,ボア内映像投影システム「Smart Theatre」を導入し,患者が安心して検査を受けられる環境作りに取り組んでいる。約1年間の使用経験を踏まえて,ECHELON Smart Plusの特徴的な機能とその効果について紹介する。

“IP-RAPID”による撮像時間短縮

ECHELON Smart Plusでは高速撮像技術IP-RAPIDにより,高画質を維持しつつ撮像時間を短縮できるようになった。頭部ルーチン撮像では,各シーケンスを1〜2分程度で撮像でき,ポジショニングも含めて約15分で検査を終了できる。また,脊椎検査ではT2強調画像と脂肪抑制画像を同時に取得できる“FatSep”併用により,約13分で一通りの画像を得ることができる。関節領域においても短時間で明瞭な画像を得られている(図1)。
IP-RAPIDはコイルや部位に依存せず,大部分の2Dシーケンスに適用できるため,当院ではすべてのルーチン検査に適用して撮像時間を短縮している。長時間の検査が困難な高齢患者も多いため,患者の負担軽減と安心にもつながっている。また,撮像時間を短縮しても画質が劣化しないため,診断に必要な画質を担保でき,医師の信頼に応え,ひいては患者の信頼に応えることができると考える。

図1 関節へのIP-RAPIDの適用 短時間撮像でも,FatSatによる脂肪抑制(a)やプロトン密度強調画像(b)で信号変化を明瞭にとらえている。

図1 関節へのIP-RAPIDの適用
短時間撮像でも,FatSatによる脂肪抑制(a)やプロトン密度強調画像(b)で
信号変化を明瞭にとらえている。

 

“AutoExam”によるワークフロー向上

AutoExamは,頭部検査において位置決め(AutoPose)とMRAのMIP処理(AutoClip)を含めて自動的に検査を実行する機能である。AutoPoseは,全脳やMRAの撮像において任意の角度・範囲をあらかじめ設定でき,時間短縮に加え,検査担当者が変わっても安定的な角度と範囲で検査できるメリットがある。
装置更新で検査時間が短縮したことで,MRA撮像後の切り抜き作業に充てられる時間も短くなったが,AutoClipによりマニュアルによる処理がほぼ不要となった。処理精度は高く,作業量は格段に減少している。
AutoExamは検査担当技師の負担を軽減してワークフローを向上させることができ,その分,患者に手厚い医療の提供が可能になる。

FatSepの有用性

Dixon法を応用した脂肪抑制FatSepは,in phaseとout of phaseを撮像して水画像と脂肪画像を作成する機能で,脂肪抑制ありとなしの画像を一度の撮像で取得できる。設定の手間を省くことができ,ワークフロー向上に貢献している。
また,磁場不均一にも強く,磁場が乱れやすい頸椎や,腰椎など広範囲の検査においても均一に脂肪を抑制できる。オフセンターの関節においても,周波数選択による脂肪抑制であるCHESS法に比べて脂肪抑制ムラが生じにくく,炎症性変化などの評価に役立っている。安定的に脂肪抑制ができるため再撮像が減少し,患者の負担軽減にもつながっている。

導入の効果

ECHELON Smart Plus導入により,膝の専門医から依頼された軟骨の高解像度画像など,高SNRの画像取得が可能になった。また,腹部撮像も簡便に行えるようになっており,IP-RAPIDを息止めや呼吸同期撮像に適用し画質向上に役立てている。3D MRCPにはIP-RAPIDを適用できないが,呼吸同期で安定的かつ明瞭な画像を撮像することができる(図2)。
当院では装置更新により,1検査あたりの検査時間が以前の20〜40分から10〜15分へと短縮した。また,検査枠を60分から30分に変更したことで検査枠が増え,1か月あたりの検査数が30%増加している。なお,検査数増加に対応するため,診療放射線技師を1名増員し5名体制となった。領域としては,高分解能が求められる頭部や関節の検査が増えており,今後は腹部の検査の増加も予想される。
今後もECHELON Smart Plusを最大限に活用し,患者に安心と信頼の医療を提供していきたい。

図2 ECHELON Smart Plusによる腹部画像

図2 ECHELON Smart Plusによる腹部画像

 

佐々木竜輝(Sasaki Ryuki)
2009年 城西放射線技術専門学校卒業。東京都足立区,江東区の総合病院で各モダリティの経験を経て,2015年 医療法人社団正風会小林病院入職。

 

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