ユーザー訪問
彩のクリニック
APERTO Lucentを有効活用し地域に根ざしたかかりつけ医の役割を果たす
オープンMRIの特長を生かした優しい検査を実施
2015-4-27
彩のクリニックは,1999年12月に永久磁石型0.3TオープンMRI「AIRIS-Ⅱ」を導入した。同装置の使用経験は,『磁遊空間 Vol.5』で取材記事として紹介した。その後2013年9月に,永久磁石型オープンMRIの最上位機種である0.4Tの「APERTO Lucent」に更新。操作性やスループットが向上し,高画質化が図られたことで有効活用されている。オープンMRIを知り尽くした同クリニックがAPERTO Lucentを採用したねらいを,駒崎敏郎CEO,放射線科の松嶋民夫技師長,清水雅明技師に取材した。
地域に根ざしたかかりつけ医としてモダリティの整備にも注力
「ユーザー訪問」2回目の登場となる彩のクリニックは1995年,埼玉県所沢市に開院した。「地域密着型総合診療所」をうたう同クリニックは,地域に根ざしたかかりつけ医として,地域中核病院や大学病院との“かけ橋”となって,地域住民の健康を守ってきた。無床診療所でありながら,標榜する診療科目は内科,外科,小児科など10科目。加えて,脳ドックをはじめとした人間ドックやはり治療といった東洋医学など,多岐にわたる診療を手がけている。通常,午前が7診または8診,午後が4診または5診と,中小病院規模の外来診療体制となっており,それぞれ専門医が対応している。加えて,早期発見・早期治療に結びつくように即日診断を原則としている点も,同クリニックの特色だと言える。駒崎CEOは,「患者さんが受診しやすいように,幅広い疾患に対応できるのが当クリニックの強みです。コンビニエンスストアのように,地域住民にとって便利な存在でありたいと思います」と説明する。
このような外来診療体制を支える放射線科も,モダリティのラインナップを充実させている。0.4TオープンMRIのAPERTO Lucentのほか,CTには同じく日立メディコ社製16列マルチスライスCT「ECLOS」を採用。X線透視撮影システム,X線一般撮影装置も日立メディコの製品でそろえている。さらに,PACSも導入しており,検査画像はフィルムレスで運用している。これにより,検査終了後すぐに診察室で診断,患者説明まで行え,即日診断に役立てられている。
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選定では低ランニングコストとオープンタイプであることを重視
彩のクリニックが最初に導入したAIRIS-Ⅱは,1999年12月に稼働してからAPERTO Lucentに更新されるまで,14年近く使用された。1日10件前後の検査件数で,年間3000件程度の検査が施行されたという。松嶋技師長はAIRIS-Ⅱを採用した理由について,「装置のユニット数が少なく,設置面積がコンパクトであり,狭小な施設にとってはスペースを有効活用できます。また,ヘリウムが不要な点など,超電導型の1.5T装置に比べてランニングコストを低く抑えられることも,採用する上で重要なポイントでした」と振り返る。
AIRIS-Ⅱは,ランニングコスト面で病院経営へ貢献するだけでなく,オープンガントリという特長を生かし,患者さんに優しい検査と画質を両立させ,同クリニックの診療に貢献してきた。清水技師は,「患者さんの中には,閉所恐怖症の方も多くいます。そのような方々でも納得して,安心して検査を受けられるのがオープンMRIの良いところだと言えます」と説明する。それに加え,松嶋技師長は,「AIRIS-Ⅱは,非常に画質が安定しており,故障もなく信頼性の高い装置でした」と話す。安定して稼働し続けることは,限られたマンパワーで確実に日々の検査を行っていかなければならない診療所にとっては,重要な要件だと言える。
AIRIS-Ⅱの信頼性の高さは,装置更新におけるAPERTO Lucentの採用理由の一つにもなった。松嶋技師長らは,他施設の見学やユーザー会などを通じて,APERTO Lucentの安定した画質や信頼性の高さを評価する声を直接耳にする機会が多かったという。選定を開始した当初は1.5T装置も候補には挙がったものの,永久磁石型オープンMRIのコンパクトさやランニングコストの良さに加えて,高画質画像を安定して撮像できることが,APERTO Lucent採用の決め手になった。
検査時間の短縮,高画質化による高精度で豊富な情報が早期診断に寄与
現在,APERTO Lucentでは頭頸部の検査が最も多く,そのほかに四肢,腹部の撮像が行われている。また,脳ドックの受診者に対してもMRIを施行している。1日の検査件数は,AIRIS-Ⅱと同じく平均10件程度。ただし,検査件数は変わらなくても,0.3Tから0.4Tとなった静磁場強度の差は大きく影響し,検査の質が向上するとともに,診断にもメリットをもたらしている。AIRIS-Ⅱでは少なかったMRアンギオグラフィ(MRA)の撮像が増加していることが一例として挙げられる。清水技師は,「AIRIS-Ⅱよりもスループットが向上したことで,従来は1時間の検査枠で行っていたMRAを,30分枠に収めることができるようになりました。短時間でMRAを含めた撮像ができるようになったことで,医師もオーダしやすくなり,脳ドッグでの施行も含めて件数が増えています」と述べている。また,APERTO Lucentに更新したことで,脂肪抑制法であるCHESS法を用いた撮像が可能となり,整形外科領域での検査でいままで以上に有用な情報を提供できるようになった。松嶋技師長は,「T2強調画像においてCHESS法により脂肪信号を抑制することで,炎症や変性などの部位だけを高信号に描出するなど,診断精度を高める画像を提供できるようになりました」と説明する。
APERTO Lucentにより,画質が向上し,情報量が増えたことは,診断する医師にとっても大きなメリットになる。駒崎CEOは,「地域における当クリニックの役割を考えた場合,できるだけ早く診断して今後の治療方針を決定し,連携先の病院に紹介することが求められます。その観点からも,APERTO Lucentは大きな役割を果たしてくれます」と評価している。
■症例1:頭部
■症例2:骨盤部
“RADAR”などによる効率的で患者さんに優しい検査
APERTO Lucentへの更新は,さらなる撮像の効率化につながるとともに,患者さんの負担を軽減し,優しい検査の実施にも結びついている。例えば,APERTO Lucentには,モーションアーチファクトを軽減するRadial Scanの独自技術である“RADAR”が搭載されており,静止が困難な小児や高齢者の検査においてもブレのない画像を提供でき,再撮像などのリスクを抑えられるようになった。特に小児の撮像では,検査時の鎮静によるリスクへの十分な配慮が求められることから,RADARは非常に有用なアプリケーションだと言える。
また,シングルピラーによる320°の開口径を確保したガントリデザインや,横方向に300mm左右動できるラテラルスライドテーブル,フットスイッチによって,患者さんのポジショニングが容易になり,スムーズに検査を施行できるようになった。清水技師は,「フットスイッチだけでテーブルを操作でき,両手で患者さんを支えながら位置決めなどを行えます」とメリットを説明する。
このほか,撮像パラメータの設定に際して適切な値を示す“サジェスチョンUI”などにより,効率的で確実な検査を行えていることも,APERTO Lucentへの更新の恩恵だと言えよう。
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地域包括ケアシステムの中で在宅患者の検査受け入れもめざす
稼働開始から1年以上が過ぎ,彩のクリニックにとってAPERTO Lucentは欠かせないモダリティとなっている。駒崎CEOは,「地域包括ケアシステムが構築されると,私たちのようなクリニックが,在宅の患者さんのMRI検査をするといったケースが増えてくると思います」と,今後のMRIの活用について展望する。同クリニックは,これからもAPERTO Lucentを活用し,地域に根ざしたかかりつけ医としての役割を果たしていくに違いない。
(2015年1月31日取材)
〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町4-1-1
TEL 04-2949-1118
http://www.saino.or.jp
診療科目:内科,外科,小児科,胃腸科,循環器科,神経内科,呼吸器科,リハビリ科,放射線科,整形外科,人間ドック,はり治療
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