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JIN整形外科スポーツクリニック
トップアスリートの診療で培ったノウハウを生かし地域のスポーツ障害の診療に貢献
腱損傷や鼠径部痛症候群などの診断にECHELON RXを活用
2015-4-27
さいたま市中央区のJIN整形外科スポーツクリニックは,Jリーグ・浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)の専任チームドクターを8年間務め,数多くのトップアスリートの診療を手掛ける仁賀定雄院長が開設した,整形外科,リハビリテーション科を標榜するクリニックである。同クリニックでは,超電導型1.5T MRI「ECHELON RX」を導入して,スポーツ外傷や障害などの診断に活用している。トップアスリートの診療で培ったノウハウを,広く一般のアスリートや地域に還元したいという思いで診療を展開する仁賀院長に,MRIの活用を中心にお話しをうかがった。
人工芝グラウンドを備え専門的な運動療法を提供
2013年5月にオープンしたJIN整形外科スポーツクリニックは,JR埼京線南与野駅から徒歩7分,780坪の敷地に建てられた400坪の倉庫を改装し,200坪のクリニック施設と公式試合が可能なフットサルコートの広さ(25m×15m)を持つ人工芝グラウンドを備える。トレーニングマシンなどを備えたリハビリテーション室があり,6名のリハビリスタッフと延べ十数名の診療補助スタッフが,問診,診断,治療に加えて運動療法を一体化したリハビリテーションを提供する体制を整えている。
仁賀院長は,川口工業病院整形外科部長を経て,2003年から8年間,浦和レッズの専任チームドクターとして,すべての練習,試合,遠征に帯同し,トレーナーとともに選手のメディカルサポートを行ってきた。その後,いったん病院勤務に戻ったが,トップアスリートの診療で培った経験や技術を,もっと多くのアスリートや患者さんに提供できる場を作りたいという思いから開業に至った。仁賀院長は,「浦和レッズでは,優秀なトレーナーやリハビリスタッフとともに,選手のけがの治療から競技への復帰まで,運動療法をメインに行ってきました。その中で,ランニングやステップ,キック動作といった動作を行いながら,機能回復や動きの習得を図るアスレティックリハビリテーションの重要性を実感していました。プロやトップレベルの選手だけでなく,一般のアスリートや患者さんにも,専門的な知識を持ったスタッフの下,障害からの回復や競技復帰が行える場となることをめざして開業しました」と述べる。
運動療法をメインにアスリートの障害を治療
同クリニックでは,仁賀院長が専門とする膝,肉離れ,鼠径部痛などのスポーツ外傷・障害だけでなく,子供から高齢者までの一般診療を数多く手掛けている。仁賀院長のスポーツ外傷・障害治療への信頼は厚く,Jリーグや柔道,野球,テニス,ラグビーなどのトップレベルの選手が診察に訪れる。外来患者数は,リハビリテーションも含めて1日平均140人。同クリニックは問診を重視し,サポートスタッフを含めて,時間をかけたていねいな問診を行っている。仁賀院長は,「けがや障害の原因を探るためには,直接的な経緯や症状だけではなく,普段のトレーニング方法などをトータルに把握することが必要です。機能不全に至った全体の経緯を理解することが,正確な診断から治療,リハビリ,予防につながります」と説明する。
仁賀院長は,サッカー選手に多く見られる“鼠径周辺部痛(groin pain)”について,“鼠径部痛症候群”という概念を提唱し,手術が必要と思われていた症例についても,器質的疾患がないことを診断した上でアスレティックリハビリテーションを行うことで,体幹から下肢の機能不全を改善し,手術をせずに競技に復帰できるようにした。さらに,浦和レッズでは,運動療法を予防の段階から取り入れて,けがの発生を抑え,発生したとしても短期間での競技復帰を可能にした。仁賀院長は,「プロチームでの運動療法のノウハウは,子供から高齢者まで多くの人たちの外傷や障害からの復帰,健康維持に役立つと考えています。地域住民のけがの予防や健康増進に役立つ施設となることが,当クリニックの役割の一つです」と述べる。
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1.5Tの高精細画像を駆使して傷害部位を描出
同クリニックでは,超電導型1.5T MRIのECHELON RXのほか,16列CT(日立メディコ社製ECLOS),透視X線撮影装置を導入し,総合病院と同レベルの検査が行える体制を整えている。MRIの導入では,当初は永久磁石型オープンMRIを候補にしていたが,1.5TのECHELON RXに変更した。その理由について仁賀院長は,「病院勤務で日立のオープンMRIを使った経験があり,その画質や使い勝手の良さはわかっていましたが,クリニックでは患者さんによりスピーディな検査を提供したいということと,1.5Tの高画質を求めてECHELON RXを選びました」と説明する。ECHELON RXは,超電導1.5Tで高い磁場均一性,高画質・高機能,ワークフローの向上に貢献する操作性などの特長を持つ。コンパクトな設計によって,オープンタイプを予定していたスペースにも設置することができたという。MRIでは,四肢関節,体幹部の撮像が多く,疾患としては靱帯や軟骨損傷,肉離れ,不全剝離,疲労骨折などで,月間で250〜260件の検査を行っている。
画像検査についても,仁賀院長は問診や理学所見を十分に取ってから,診療の合間に自らほとんどの検査に立ち会っている。仁賀院長は,「器質的疾患の有無を確認するためにMRIなどの画像は重要な情報ですが,それだけに頼りすぎないことが大切です。問診や理学所見に基づいて痛みや障害の原因を絞り込み,それに合わせた撮像を行うために,診察が忙しくても診察を中断して検査に立ち会うようにしています」と述べる。撮像条件などは,MRI検査を担当する診療放射線技師が部位や目的に合わせて最適な条件を作成している。事前の診察で痛みや障害の原因を絞り込み,最適な条件でのMRI検査によって,他施設ではわからなかった腱の不全剥離や骨折などが特定でき,早期の競技復帰につながっている。仁賀院長は,「正しい診断によって,その後の治療方針が明確になります。MRIによって障害部位を把握することは,治療や機能回復に向けた運動療法のための重要なエビデンスとなります」と述べる。
仁賀院長はECHELON RXについて,「実際に撮像時間も短く,1.5Tの高磁場によって確実に画質も向上しており,筋肉や腱,軟骨の損傷などに対して,さらに突きつめた診断が可能になっています」と評価する。
同クリニックでは,ECHELON RXの画質向上について,日立メディコへの定期的なフィードバックを行っている。仁賀院長は,「導入当初から同社には装置やソフトウエアの調整などで真摯に対応していただきました。保守やメンテナンスなどのサポートを含めて高く評価しています」と述べる。脂肪抑制法については,現在はSTIR法を用いているが,日立メディコがオープンMRIで開発し搭載してきたDIXON法の水脂肪分離計測である“FatSep”についても臨床評価を進めているところだ。
■症例1:ハムストリング総腱の不全剥離
■症例2:鼠径部痛症候群に伴う恥骨浮腫
MRIを生かしたスポーツ医学への貢献をめざす
これまでの診療において,さまざまな症例に対してMRIを撮像する中で,MRIでしか描出されない潜在性の疲労骨折など,新たな知見が得られている。鼠径部痛症候群では,MRIで恥骨部分に高輝度所見を認めても,必ずしも痛みや競技への復帰と相関しないケースがある。仁賀院長は,「問診,理学所見に基づいて,立ち合ってMRI検査ができる環境を生かして,最適な治療方法の選択やより早い競技復帰が可能になるよう,今後さまざまな検証を進めていきたいと考えています」と述べる。地域の中で最先端のスポーツ医学の成果を提供する同クリニックは,子供から高齢者までの多くの患者さん,アスリートにとって福音となるに違いない。
(2015年1月24日取材)
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