CURRENT TECHNOLOGY
3T MRI装置「TRILLIUM OVAL」におけるRF照射技術
2014-3-25
![図1 3T超電導MRI装置「TRILLIUM OVAL」 図1 3T超電導MRI装置「TRILLIUM OVAL」](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/83005-1-jpn-JP/CURRENT-TECHNOLOGY-3T-MRI-TRILLIUM-OVAL-RF_reference.jpg)
図1 3T超電導MRI装置「TRILLIUM OVAL」
日立の3T超電導MRI装置「TRILLIUM OVAL」(図1)は,楕円形状のワイドボアを採用した高機能な超電導MRI装置です。その特徴的な技術のひとつに,新たに搭載されたRF照射技術があります。3TのMRI装置で特に問題となるRF照射分布(B1 map)の均一性改善に関する技術を紹介します。
3T MRI装置におけるRF照射不均一の問題
3T MRI装置の撮像では,図2に示すようにRF信号の高周波化に伴い,人体におけるB1 mapの不均一が顕著になります。これは,
・生体内でのRFの減衰が大きくなる。
・部分的な位相回転が大きくなる。
などの理由により,照射強度に局所的な強弱が生じるためです。
また,特にRF波長よりも幅の大きな腹部においてこの影響が顕著で,輝度ムラの大きな画像になる場合があります(図3)。
![図2 RF照射分布のシミュレーション結果と撮像例 図2 RF照射分布のシミュレーション結果と撮像例](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/02/83021-1-jpn-JP/02.jpg)
図2 RF照射分布のシミュレーション結果と撮像例
![図3 3T MRIにおけるRF照射 図3 3T MRIにおけるRF照射](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/03/83024-1-jpn-JP/03.jpg)
図3 3T MRIにおけるRF照射
4チャンネル-4ポート独立制御RF照射コイル
![図4 QUARTET(4チャンネル-4ポートの独立制御) 図4 QUARTET(4チャンネル-4ポートの独立制御)](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/04/83027-1-jpn-JP/04.jpg)
図4 QUARTET(4チャンネル-4ポートの独立制御)
TRILLIUM OVALでは,図4に示す4チャンネル-4ポートの独立制御可能なRF照射コイル“QUARTET(Quad RF Transmission Optimized Technology)”を採用し,高画質を実現しています。
撮像では,人体の影響により生じたB1 mapの不均一を補正するRFシミングを行いますが,このためにはマルチチャンネル照射に対応したRF照射コイルシステムが必要となります。
一般的には,2チャンネルのRFパワーアンプの出力をRF照射コイルの2点に独立して印加する2チャンネル-2ポート方式,または,4点に印加する2チャンネル-4ポート方式が用いられます。これに対し日立は4つの独立したRFパワーアンプを使い,RF照射コイルの4点から印加する「4チャンネル-4ポート独立制御RF照射コイル」を採用することで,RF照射不均一を低減するように4チャンネルを独立して制御可能にしました。被検者ごとに,RF照射コイルの各チャンネルに与える振幅と位相を最適に制御することで,照射不均一の少ない画像を得ることができます。
この最適制御には,RF照射の状態を確認するための各チャンネルのB1 mapを得る必要があります。そこで日立は,高速で効率的なRF照射分布を取得するシーケンスを独自に開発し搭載しました。
高速・高精度なB1 map計測手法“Blink”の搭載
![図5 独立4チャンネルB1map計測“Blink”の結果 図5 独立4チャンネルB1map計測“Blink”の結果](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/05/83030-1-jpn-JP/05.jpg)
図5 独立4チャンネルB1map計測“Blink”の結果
最適なRFシミングを行うためには,正確なB1 mapが必要となります。従来のB1 map計測手法であるDAM(Double Angle Method)法は,縦緩和の影響を排除するため長いTR(5秒程度)を使用する必要があり,計測時間が長く,実際の撮像には適していないという問題がありました。また,チャンネル数が増えるとB1 map計測をチャンネル数の分繰り返す必要があるため,撮像時間が延長するという課題や,各チャンネルのB1 mapはSNRが低いため計測精度が劣るという課題もありました。
日立は独自に,プリパルスからの遅延時間(Td)を複数設けた高速Gradient Echoシーケンス“Blink”(高速B1 map取得シーケンス)を開発し,プリパルス印加前と異なる2つのTdで取得した3つの画像データからB1 mapを計算する手法を搭載しました。複数の画像データを連続的に取得することで計測時間を短縮し,わずか数秒でB1 mapを取得できます。さらに,図5のように,全チャンネルで照射したB1 mapから各チャンネルのB1 mapを計算する手法を確立し,計測時間を延長せずにSNRの問題も回避してチャンネル数を増やすことを実現しました。
図6にRFシミングの効果の例を示します。最適な4チャンネルの制御によりB1 mapの均一性が改善しています。
図7に,均一に制御されたRF照射により撮像した腹部画像例を示します。
さらに,これらのRF均一化技術では,3T MRI装置で問題となるSAR(比吸収率:RF照射による発熱現象)の問題を低減するような制御も可能であり,今後の応用が期待されます。
![図6 RFシミングによる照射分布の均一度向上効果 図6 RFシミングによる照射分布の均一度向上効果](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/06/83033-1-jpn-JP/06.jpg)
図6 RFシミングによる照射分布の均一度向上効果
![図7 3T腹部画像例 図7 3T腹部画像例](/var/ezwebin_site/storage/images/ad/suite/hitachi/sup201404/currenttechnology/07/83036-1-jpn-JP/07.jpg)
図7 3T腹部画像例
日立MRイメージング装置 TRILLIUM OVAL
医療機器認証番号 第225ABBZX00066000号
*TRILLIUM OVAL,OVAL,OVALのロゴ,TRILLIUM OVALのロゴは,株式会社日立メディコの登録商標です。