技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年7月号

企業における医療向けAI技術の開発動向

キヤノンメディカルシステムズにおける医用画像の診断支援への人工知能(AI)技術応用

キヤノンメディカルシステムズは,医療従事者がより良い医療を効率良く患者に提供するためのさまざまなソリューションの実現に取り組んでいる。その実現には,医用画像はもちろん,画像を含めた多種多様な医療情報を収集・統合・分析・加工する必要があり,それらを支える技術の一つがAI技術である。医療機関で患者が受ける診断から治療に至る多くのシーンに,AI技術を適用する研究開発を進めている。

医用画像の高画質化に関しては,すでにCTやMRIの画像診断装置向けに,AI技術の一つであるディープラーニングを用いた高画質再構成技術に関する研究を進め,その成果の一部を“AiCE(Advanced Intelligent Clear-IQ Engine)”として実現している。

医用画像の高画質化に加えて,画像の後処理による診断支援技術も多数開発してきた。例えば,肺結節の領域抽出は,その有効なアプリケーションの一つである。肺結節のCT陰影は充実成分とすりガラス成分に大別されるが,各成分を構成するCT値に明確な閾値は存在せず,従来の閾値ベース手法による領域抽出精度には限界がある。当社は熟練した読影医が抽出した領域を教師データとし,ディープラーニングを活用した領域判別アルゴリズムを開発し,充実成分,すりガラス成分,さらには,がん細胞の壊死などに由来するキャビティ成分を自動抽出できることを確認した1)。抽出結果を図1に示す。

図1 肺野における領域抽出事例1) 上段は処理前の画像,下段はそれぞれのすりガラス成分(緑),充実成分(赤),キャビティ成分(青)をAIが区分した画像 (画像ご提供:藤田医科大学・大野良治教授)

図1 肺野における領域抽出事例1)
上段は処理前の画像,下段はそれぞれのすりガラス成分(緑),充実成分(赤),キャビティ成分(青)をAIが区分した画像
(画像ご提供:藤田医科大学・大野良治教授)

 

さらに,医師の負担を軽減し,かつ医療の質と効率を高めることを目的に,対象を医用画像に限らず,臨床検査の指示・実施記録,バイタルサイン,所見,看護記録など,多種多様な医療情報を収集・統合・分析・加工して,診療支援を実現するソリューションの研究開発にも取り組んでいる。

●参考文献
1)Yaguchi, A., Aoyagi, K., Tanizawa, A., et al : 3D fully convolutional network-based segmentation of lung nodules in CT images with a clinically inspired data synthesis method. Proc. SPIE 10950, Medical Imaging 2019 ; Computer-Aided Diagnosis, 109503G, 2019.

 

【問い合わせ先】
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TEL 0287-26-5100
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