技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2018年11月号

Nuclear Medicine Today 2018

3検出器型SPECT装置「GCA-9300R」の最新技術「IBUR法」

太田 瑞紀(キヤノンメディカルシステムズ(株)核医学営業部)

キヤノンメディカルシステムズ社製3検出器型SPECT装置「GCA-9300R」は,核医学の中で実施割合が高い頭部検査および心臓検査に最適化した装置である(図1)。今回,脳血流定量法の一種であるbrain uptake ratio(BUR)法を改良した,GCA-9300Rに搭載されるImproved BUR(以下,IBUR)法について概説する。

図1 GCA-9300Rの外観

図1 GCA-9300Rの外観

 

BUR法は,1990年代後半に小視野のガンマカメラ向けに開発された,99mTc-ECDを使用した採血を必要としない脳血流定量法の一つである。99mTc-ECD の脳内での再循環による取り込みがなく,いったん取り込まれたトレーサーは長時間脳内にとどまるといったマイクロスフェアモデルに基づいており,動脈血中の放射能濃度(入力関数)を99mTc-ECD 投与直後から経時的に得られた胸部ダイナミック画像の大動脈弓部に設定した関心領域(region of interest:ROI)内の時間-放射能曲線(time-activity curve:TAC)から算出する1)図2)。
このBUR法をGCA-9300R向けに改良したものが,今回紹介するIBUR法である。以下に記載する3点が従来のBUR法と異なる。

図2 BUR法の基本式

図2 BUR法の基本式

 

■入力関数からSPECT収集までファンビームコリメータを使用

従来,入力関数測定の胸部ダイナミック画像はパラレルホールコリメータ(平行多孔型)を使用して撮像する必要があったが,IBUR法ではファンビームコリメータを使用することが可能である1)。よって,検査途中でコリメータを交換することなく,ファンビームコリメータを用いた高分解能のSPECT画像を得ることができる。

■上行大動脈から入力関数を推定

BUR法では,大動脈弓部に設定したROIからTACを作成し入力関数を求めていた。しかし,近年の研究によると,大動脈弓部では血管分岐による血流損失と弓部血管壁への衝突による血流速度低下によって,正確かつ安定した入力関数が得られず,脳血流値にも誤差が生じる可能性があることがわかった。
Itoらによる検討の結果,最も安定して入力関数が得られるROI位置は上行大動脈であることが判明し,IBUR法では上行大動脈にROIを設定する仕様になっている。大動脈弓部へのROI設定と比較して,123I-IMPを使用した持続動脈採血法や15O-水を使用したPET検査とも相関性が向上することが示された2),3)

■操作者依存がない自動ROI設定

ダイナミック画像から上行大動脈を推定し,ROIを自動作成するアルゴリズムを採用。これにより,操作者の感覚的な操作を減らし,定量値の再現性を高めることが可能になった。検討の結果,上行大動脈への自動ROI設定の精度は98%と高く,スループット改善とマニュアル操作による誤差除外に寄与できることが示された4)図3)。

図3 自動ROI設定&定量画像

図3 自動ROI設定&定量画像

 

頭部検査で高画質なSPECT画像を提供できるGCA-9300Rは,IBUR法の搭載により,簡便な方法で非採血の脳血流定量法を適用することが可能になり,頭部検査におけるさらなる診断能向上につながると考える。

*「GCA-9300R」はキヤノンメディカルシステムズ株式会社の商標登録

●参考文献
1)猿渡一徳・他 : ファンビームコリメータを用いた非採血脳血流定量法〔improved brain uptake ratio(IBUR)〕の基礎的検証. 日本放射線技術学会雑誌, 2018年(in press).
2)Ito, S., et al. : Improvement of the(99m)Tc-ECD brain uptake ratio(BUR)method for measurement of cerebral blood flow. Ann. Nucl. Med., 26・4, 351〜358, 2012.
3)井上信哉・他 : 99mTc-ECD非侵襲脳血流定量法(Brain Uptake Ratio)における入力関数の最適ROI設定位置の決定. 日本放射線技術学会雑誌, 68・3, 269〜276, 2012.
4)Masunaga, S., et al. : Development of an automatic ROI setting program for input function determination in 99mTc-ECD non-invasive cerebral blood flow quantification. Phys. Med., 30, 513〜520, 2014.

 

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