技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2016年4月号

Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

消化器内視鏡診断・治療をサポートするCアームX線TVシステム「Ultimax-i」

荒木 陽子(X線営業部)

近年の医療環境の変化に伴い,医療設備の効率的な運用が求められる中,X線TVシステムは,各診療科の多様な要求に応える装置としてのあり方が期待されている。特に,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連手技やInterventional EUSなどのX線を用いた胆・膵内視鏡検査の件数は増加傾向にあり,高度な技術を必要とする内視鏡手技を効率的に実施するための使いやすいX線検査室の構築が望まれている1)
本稿では,胆・膵内視鏡医が求めるX線検査室の姿として,高画質,低被ばくで,使いやすさを追究した東芝メディカルシステムズのCアームX線TVシステム「Ultimax-i(アルティマックスアイ)」(図1)を紹介する。

図1 CアームX線TVシステムUltimax-i

図1 CアームX線TVシステムUltimax-i

 

■Cアームにより得られる最適な視野

Ultimax-iのCアームは,スムーズなLAO/RAO,CRA/CAUの角度づけによってさまざまなアングルの観察を実現する。例えば,脊椎やスコープと胆管が重なる場合,術中に重なりのない視野を得ようと,セデーションされた患者の体位を変換させることは容易ではない。また,胆管穿刺しているような場合に患者を動かすことは危険を伴う2)。しかし,Cアームを動かせば,患者の体位はそのままで,正確な処置をサポートする視野が得られる。Cアームは,レバー操作で直感的かつ簡便に動作させることができ,肝門部胆管の分岐部,胆囊管口の分岐部などの複雑な形状も,最適な視野と三次元的な情報をCアームが提供し,確実なガイドワイヤ操作をサポートする3)

■アンダーテーブルチューブによる術者被ばくの低減

検査数の増加に伴い,被ばくの低減は重要な課題である。Ultimax-iは,術者やスタッフの被ばく低減に着目し,アンダーテーブルチューブでの検査が可能である。術者被ばくの主な要因である患者や天板からの散乱線量を比較すると,オーバーテーブルチューブはX線管に近い術者の上半身側の線量が多く,アンダーテーブルチューブは術者の下半身側の線量が高い1)。患者の上方の空間で手技を行うこともあるため,オーバーテーブルチューブでは直接X線も考慮する必要があるが,手技を妨げない最適な防護は難しい。アンダーテーブルチューブとX線防護垂れの組み合わせは,術者を散乱X線から防護しやすく,適切な被ばく低減を実現する(図2)。

図2 術者の被ばく低減をサポートするアンダーテーブルチューブ

図2 術者の被ばく低減をサポートするアンダーテーブルチューブ

 

Cアームは,先述の散乱線特性を考慮した動きを採用した。Cアームを動かして側面から観察する場合,患者からの散乱線量の多いX線管側が,術者から離れるように動作する(図3)。Ultimax-iは,Cアームの動作も術者の被ばく低減をサポートする。

図3 術者の被ばく低減を考慮したCアーム動作

図3 術者の被ばく低減を考慮したCアーム動作

 

■低フレームレートのパルス透視による低線量検査

安全確実な手技を行うためには,透視像におけるデバイスの視認性が重要である。例えば,0.025インチのガイドワイヤの先端位置を確認する際,Ultimax-iの透視画質が手技をサポートする。視野を拡大しても画像が鮮明で,迷わず手技を進めることができる1)
患者の被ばくについても十分考慮する必要がある。Ultimax-iは連続透視に加え,15.0〜1.0fpsの低フレームレートのパルス透視が可能である。低線量検査となる低フレームレートのパルス透視であっても,Ultimax-iのパルス透視は手技を進める上で必要な高画質を保持したまま4),患者と術者双方の被ばく低減を実現する。フレームレートの変更は,操作卓上のボタン一つで行うことができるため,手技中,状況に応じてフレームレートを切り替えることも可能であり,低フレームレートのパルス透視を検査に導入しやすい。Ultimax-iは操作性からも,より低被ばくを意識した,必要な線量の検査の実現をサポートする。

■画像処理コンセプト:PureBrain

先述の低被ばくと高画質,これらの相反する要求を満たすために,最新鋭の画像処理技術を統合した画像処理コンセプト“PureBrain”を搭載した。その機能の一つであるノイズ低減フィルタ“Super Noise Reduction Filter(SNRF)”は,デバイスの視認性,残像の少ない透視像,低被ばく,これらの要求に応えた新しい画像フィルタ処理である。SNRFは,画像内の必要な信号とノイズを計算して有用な情報を抽出する当社特許技術を用いることで,微細な構造を残したまま粒状性を改善する。SNRFによるノイズ低減効果を被ばく線量の低減に置き換えることで,より低被ばくの検査が実現する。

■内視鏡手技のためのモニタレイアウト

必要な情報をわかりやすく表示するモニタレイアウトも重要である(図4)。術中には,透視像と内視鏡の画像を同時に確認する必要がある。さらに,撮影像あるいはMRIやCTなどの関連画像も確認することで,術者は安心して確実な手技を進めることができる1)。例えば,MRCP像を表示し,Cアームを活用してMRCP像と透視像を同じアングルにすることにより,ガイドワイヤの誘導をサポートする。

図4 モニタレイアウトの例(モニタ2面の場合)

図4 モニタレイアウトの例(モニタ2面の場合)

 

Ultimax-iは,X線TVシステムとしての基本機能と性能を,患者と医療スタッフの立場から再度分析して改良を行い,さらに画像処理コンセプトPureBrainを融合させて高画質・低被ばくを実現した。東芝メディカルシステムズは,国内トップメーカーとして長年培った経験と
ユーザーのご意見を基に,常に進化させたX線TVシステムを提供し,一人でも多くの患者に優しさと確かな診断情報を届けることを目標としている。

*Ultimax,PureBrainは東芝メディカルシステムズ株式会社の商標です。

●参考文献
1)真口宏介 : 最新のX線システムを用いたERCP関連手技の進歩. Rad Fan, 12・1, 2~5, 2014.
2)原 和生 : CアームX線システムを用いた胆膵内視鏡治療Update ; Interventional EUS. Rad Fan, 12・9, 6~9, 2014.
3)潟沼朗生 : 胆膵治療内視鏡2015~最新の情報をあなたに~ ; ERCP関連手技. Rad Fan, 13・15, 2~5, 2015.
4)花田敬士 : 膵疾患の内視鏡診断・治療Update ; 膵上皮内癌の内視鏡的診断~現状と課題~. Rad Fan, 13・10, 2~5, 2015.

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/

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