技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)
2016年3月号
US Today 2016
超音波診断装置「Aplio Platinum Series」の新展開
島野 俊彰(東芝メディカルシステムズ(株)超音波営業部)
東芝のハイエンド超音波診断装置「Aplio Platinum Series」は,臓器の機能を反映する血流の観察機能として,従来からあるColor Doppler Imaging(以下,CDI)や“Advanced Dynamic Flow(ADF)”よりも低流速で微細な血流の表示を可能にした“Superb Micro-vascular Imaging(SMI)”を搭載し,臨床で活用されてきている。また,push pulse(高音圧バースト波)により発生する剪断波の速度や組織の弾性率を解析できる“Shear Wave Elastography(SWE)”では,肝臓や表在臓器の硬さの定量化が可能となっている。これらの機能については,装置のバージョンアップにより性能がさらに向上し,新たな機能追加で,より使いやすく,より客観的に,より定量的な応用ができるようになっている。今回はそれらの新たな展開について紹介する。
■SMIの進歩
低流速の血流検出を妨げていたモーションアーチファクトを選択的に取り除くFilterの導入で,埋もれていた微細な血流の観察を可能にしたのがSMIである。これを利用することにより,腹部や表在臓器内の血流や腫瘍内の血管構築などを高フレームレートで高感度に可視化できるようになった。2015年にこのSMIをさらに発展させ,より使いやすくするために,流速レンジ操作の対応やFilter設定の最適化が適用され血流の表示感度の向上が図られた。また,より客観的なSMIを実現するため,“Smart 3D”による三次元表示が行えるようになった。そして,SMIによる血流表示をさらに定量的な情報とするために,ピクセルカウント機能の“Vascular Index”が追加された。そのほかにも造影剤によるSMIのエンハンス表示やSMI画像とCT・MR画像の“Smart Fusion”による同期表示も行えるようになっている。
■Smart 3Dによる三次元表示
Smart 3Dというのは,通常の検査で用いられる一次元配列のプローブを用い,スライス方向に一定速度でプローブをあおり操作(FAN操作)もしくは平行移動(SLIDE操作)することにより取得した複数の画像から,三次元画像を表示する機能である(図1)。使用する画像の範囲とFAN角度やSLIDE距離を設定し,ボリュームレンダリングやMIPで再構成した三次元ボリューム画像やMPR画像を表示することができる。特に“Volume Color”機能ではCDIやADF,そしてSMI,さらにはcontrast harmonic imaging(CHI)で得られる血流の三次元画像と組織の断面像やボリューム画像を組み合わせて表示できるので,さまざまな方向から,より客観的に血流の状態を把握することができる(図2)。
■SWEの進歩
push pulseを送信することにより発生する剪断波の伝播速度から組織の硬さを映像化するSWEも,ペネトレーションが向上しデータの収集が容易になっている。さらに,伝播状態を可視化するPropagation表示の見やすさの改善とRange設定機能の追加,局所の伝播速度のばらつきを表すVariance表示の追加,そしてElasticityとPropagationなど異なるモードの2断面表示(TwinView)が行えるようになり,より信頼性の高い硬さの把握ができるようになっている(図3)。
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