セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)
2024年11月号
第47回日本呼吸器内視鏡学会学術集会スポンサードセミナー3 気管支鏡検査の正確性向上のために~CアームX線システムの最新活用法~
〈講演2〉X線透視システムの最大活用〜導入から実践まで〜
笹田真滋(同愛記念病院 呼吸器・腫瘍センター 呼吸器内科)
同愛記念病院では、2023年に新内視鏡センターが開設され、キヤノンメディカルシステムズのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」が導入された。コンパクト設計のため広いワーキングスペースを確保できるほか、Cアームや新画像処理条件などによって、高画質を維持しつつ、安全かつ正確な検査が可能となっている。本講演では、Ultimax-iの導入経緯や特長、診療の実際を報告する。
快適な検査環境の構築とUltimax-i導入の経緯
同愛記念病院は、建物の老朽化に伴い2018年から新病院の建設が進められ、2023年には新病院が竣工するとともに、新内視鏡センターが開設された。演者は2022年に当院での勤務を開始したが、当初は稼働する透視装置や設備が古く、厳しい環境での診療を余儀なくされていた。内視鏡X線透視室の設計も進んでいたが、演者も設計や導入機器、レイアウトなどについて意見を求められ、過去の経験を生かして透視装置の設置場所や荷重計算、陰圧の有無、モニタの数(天吊り)、操作室のガラス窓のサイズなどについて提案を行った。また、透視装置の選定に当たっては、ワーキングスペースの確保も考慮する必要がある。Ultimax-iは、Cアーム型でありながら奥行き・幅共にコンパクトな設計であることに加え、壁と装置の間に隙間を作らずに設置できるため、内視鏡やナビゲーションシステムのスペースを確保でき、広いスペースを活用した複数人での手技が可能となる。
これらを踏まえ、内視鏡X線透視室の設計やレイアウトなどを変更し、透視装置はUltimax-iを選定した(図1、2)。広いワーキングスペースとスムーズなスタッフ動線が確保され、非常に使い勝手の良い環境を実現できたほか、広いガラス窓や手洗いが設置され、無段階調光が可能な照明を採用した(図3、4)。
被ばく低減を実現するUltimax-iのさまざまな機能
1.「octave SP」とアンダーチューブによる被ばく低減
Ultimax-iの高画質・低線量検査コンセプトoctave SPは、独自のリアルタイム画像処理技術と低線量検査のためのさまざまな技術によって、従来よりも照射線量を65%低減することができる。
2021年4月に電離放射線障害防止規則が一部改正され、眼の水晶体に受ける等価線量限度が引き下げられた。改正前は「1年につき150mSvを超えないこと」とされていたが、改正後はこの値が、「5年間につき100mSv(1年あたりの平均は20mSv)および1年につき50mSv」と、非常に厳しくなっている。このため、現在は多くの術者が放射線防護メガネなどを装着して手技を行っていると思われるが、octave SPはこのような現状においてメリットが大きい。
また、Cアームでは、X線管が天板の上側にあるオーバーチューブと、下側にあるアンダーチューブでの検査が可能であるが、アンダーチューブで検査することでわれわれが手技を行う天板上側の散乱線量を少なくすることができ、術者の眼の水晶体の被ばくを抑制することができる。当院では、内科も外科も全検査をアンダーチューブで行い、術者の被ばく低減を実現しながら、支障なく手技を行っている(図5)。さらに、Ultimax-iのCアームは、側面から観察する際に散乱線量の多い領域がスタッフから離れる方向に動作する設計となっている点も、スタッフの被ばく低減においてきわめて有用である(図6)。当院では、医師が透視装置の操作を行う。Ultimax-iは、Cアームをレバーで直感的に操作することができ、後述する被ばく低減のための線量切り替えなどもワンタッチで簡単に行うことができる(図7)。
2.豊富な種類の被ばく低減機能
Ultimax-iの透視線量モードは、Normalモード(100%)、Midモード(50%)、Lowモード(35%)の3段階があり、モードを切り替えることで線量を低減できる。また、パルス透視は、フレームレートを1.0~15fpsの範囲で細かく選択することができる。当院では基本的に、透視線量モードはLowモード、フレームレートは7.5fpsを使用している。毎回、十分な画質が得られているため、症例による使い分けなどはほとんど行っておらず、日々の検査の被ばく低減を実現している。
3.透視デジタル補償フィルタ(DCF)
DCFは、X線の吸収差により生じる画像内の黒つぶれや白とびを自動で補正する技術である。従来は抜けが生じやすかった肺野領域においても、DCFを適用することで肺門や血管が明瞭に描出される(図8)。
4.新画像処理条件「Accent」
Accentは、Ultimax-iの高画質・低線量検査コンセプトはそのままに、見にくい部分を強調表示する新しい画像処理条件である。気管支鏡検査においては、Accentを適用することで透視下での病変やデバイスの視認性が改善され、吸引生検針「PeriViewFLEX」やガイドシース「SG-400C」(共にオリンパス社製)といった細径デバイスの先端もより見やすくなるなど、きわめて有用な機能である。
図9は、肺がん症例における気管支鏡下生検(TBB)の透視像であるが、通常の透視像と比較して、Accentの透視像の方が病変、生検鉗子共に明瞭である。同様に、Accentでは細胞診ブラシの視認性も向上する(図10)。
図11は、炎症性肉芽腫症例におけるクライオ生検の透視像である。当院では1.1mmのクライオプローブを主に使用しているが、Accentによってプローブ先端や病変が明瞭となり、プローブ位置を正確に調整することができる。
図12は、ガイドシース下経気管支穿刺吸引針生検(GS-TBNA)の透視像であるが、Accentによって生検針がきわめて明瞭に描出されている。
図13は、肺がん止血目的に気管支充填剤(EWS)を充填した症例である。Accentを適用した透視像では、充填剤、病変共にきわめて明瞭である。
Cアームの回転方向は、症例によってRAOとLAOを正しく使い分けるとともに、事前に適切な方向を確認した上で手技に臨むことが重要である。図14は炎症性肉芽腫の症例であるが、CアームをLAO 17°に振り、Accentを適用したことで、病変と鉗子を良好に観察可能であった。また、細胞診ブラシも、Accentの適用によって良好に描出された(図15)。
呼吸器領域におけるトモシンセシスの活用
気管支鏡検査において、トモシンセシスはきわめて有用であると考える。検査直前にトモシンセシス撮影をすることで、病変がどこに、どのように存在するかを瞬時に把握できるほか、トモシンセシスはCTと異なり冠状断像であるため、病変の位置情報を感覚的にとらえやすい。また、小病変やすりガラス状陰影(GGO)の診断にも有用である。われわれは、トモシンセシスで肺尖部のGGOを良好に描出し、超音波気管支鏡(EBUS)にてブリザードサインを確認した上で生検を行い、診断が可能であった例を報告した1)。
当院では、Ultimax-iのほか、トモシンセシス撮影が可能なキヤノンメディカルシステムズのデジタルX線TVシステム「Astorex i9」も稼働している。以下に、トモシンセシスが有用であった実際の症例を提示する。
肺がん症例では、トモシンセシスによって病変の輪郭がきわめて明瞭に描出された(図16)。また、器質化肺炎症例では、EBUSプローブを挿入したままリアルタイムにトモシンセシス撮影をすることで、病変が立体的に描出できた(図17)。肺膿瘍の症例では、EBUSプローブが病変の空洞近くに到達していることや、細胞診ブラシで擦過している位置を確認できた(図18)。
さらに、Astorex i9は、天板上の広い範囲でトモシンセシス撮影が可能である。被検者が天板の端にいても撮影可能な点は、気管支鏡検査中にトモシンセシス撮影をするために被検者の位置を変える必要がなく、有用である。
まとめ
使い勝手の良い内視鏡X線透視室を設計するためには、臨床医が積極的にかかわることが重要である。Cアーム型の透視装置は安全かつ正確な検査が可能であり、Ultimax-iではさらに、octave SPや新画像処理条件Accentによる視認性向上、アンダーチューブの利用、透視線量モードやパルス透視のフレームレートの切り替えなどにより、高画質を維持しつつ、大幅な被ばく低減が可能となる。このほか、呼吸器領域の診療にトモシンセシスを用いることで、トータルの診断精度の向上が期待できる。
また、このような環境において、診療放射線技師や看護師も含めたチーム医療を行うことで、より安全・正確な検査が実現できると考える。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
●参考文献
1)Izumo, T., Sasada, S., et al. : The diagnostic utility of endobronchial ultrasonography with a guide sheath and tomosynthesis images for ground glass opacity pulmonary lesions. J. Thorac. Dis., 5(6) : 745-750, 2013.
一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:デジタルX線TVシステム Astorex i9 ASTX-I9000
認証番号:302ADBZX00081000
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