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胸部X線AI読影支援システムと16列CTで確信度の高い診断と画像によるわかりやすい診療を提供 〜AI読影支援シス...

江田駅前内科外科

 

神奈川県横浜市青葉区の江田駅前内科外科クリニックは、佐治 攻院長が地域の家庭医、かかりつけ医をめざして2024年12月に開院した。同クリニックでは、キヤノンメディカルシステムズ製の16列CT「Aquilion Start / i Edition」、一般X線撮影システム「R-mini」とデジタルラジオグラフィ(DR)「CXDI-Pro」のほか、胸部X線画像のAI読影支援システムなど画像診断機器・システムを診療に活用している。これらの機器・システムについては、キヤノンメディカルシステムズが選定から導入、運用提案を含めて支援を行った。クリニックでめざす医療と新規開業における画像診断機器選定のポイントを中心に、開院直後の佐治院長に取材した。

佐治 攻 院長

佐治 攻 院長

 

地域のよろず診療所として風邪から外傷まで幅広い疾患に対応

江田駅前内科外科クリニックは、その名のとおり東急田園都市線江田駅西口から徒歩1分の距離に、2024年12月9日にオープンした。内科、消化器科、外科を標榜し、内視鏡検査にも対応する。クリニックがめざす医療について佐治院長は、「理想とするのは、地域の住民の方の健康や身体の困りごとに幅広く応えられるよろず診療所です。私は消化器外科を専門としておりましたが、風邪などの感染症から消化器の内科疾患、けがや傷の処置といった小外科まで、患者さんが困った時に頼れる地域のかかりつけ医をめざして開院しました」と述べる。
佐治院長は、聖マリアンナ医科大学卒業、外科、消化器外科の専門医・指導医として研鑽を積んできた。開業に至る経緯について佐治院長は、「研修医時代に総合診療内科(Family Practice)で学ぶ機会があり、患者さんを多角的に診る家庭医という分野に興味を持ちました。私の祖母と母が東京の下町で開業医をしていたこともあって、いつか自分もクリニックを開業したいと思っていました。しかし、まずは自信を持って診断できる、得意な領域を持つことが必要だと考えて、消化器外科を選んで研鑽を続けました」と言う。その後、開業を視野に入れて、2022年から埼玉県にある救急専門のクリニックに勤務した。佐治院長は、「ここでは専門以外の一般的な内科外来、例えば高血圧などの慢性期疾患、そのほか救急外傷、整形外科や小児などのさまざまな症例を経験することができました」と話す。

CTなど画像診断機器をそろえて精度の高い診断を提供

今回の開業に当たって重視したのが、画像を用いた確信度の高い診断と患者さんにわかりやすい情報の提供だ。そのためにクリニックには、16列CTや内視鏡システム(オリンパス製)のほか、一般X線撮影装置、DR、クラウドPACS、胸部X線画像のAI読影支援システムも導入した。画像診断機器導入のねらいを佐治院長は、「開業前に勤務した救急専門クリニックでは、CTやMRI、超音波などを導入して、その場で診断して迅速に治療を行っており、初期治療における画像診断の重要性を実感しました。画像による的確な診断が早期治療に結びつくというだけでなく、画像検査を行うことで患者さんの不安を取り除いたり、納得して治療を受けていただけるケースを数多く経験しました。開業に当たって、クリニックにCTは必要ないという意見もありましたが、治療による症状の改善だけでなく、患者さんの不安や悩みに迅速に応えるためにも画像診断がキーになると考えて導入を決断しました」と述べる。
Aquilion Start / i Editionは16列ながらガントリ回転速度0.75秒と高速で、AIを活用した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)」によって高画質の画像が得られるのが特長だ。佐治院長は機種選定について、「検査件数やクリニックでの造影検査の必要性なども考えると64列の必要性は乏しく、スペースや保守費用などのコストも考慮して16列を選択しました。Aquilion Start / i Editionは装置自体がコンパクトで、当院の限られたスペースでも余裕を持って設置することができました」と説明する。Aquilion Start / i Editionの使い勝手について佐治院長は、「画像は16列でも従来の64列と同等の画質が得られており、大学病院などで見ていた上位機種と遜色ありません。当院にはまだ診療放射線技師がいないので自分で撮影しますが、撮影時には難しい設定は必要なく、操作も直感的に扱えるので問題なく撮影できます。撮影後の画像再構成も速く、すぐに画像が確認できるので助かっています」と述べる。

AIによる診断支援とCTで迅速な診断と治療を展開

AIによる診断支援とCTで迅速な診断と治療を展開

 

デジタルラジオグラフィ「CXDI-Pro」

デジタルラジオグラフィ「CXDI-Pro」

 

胸部X線画像のAI読影支援で胸部の異常陰影をチェック

胸部X線撮影では、キヤノンメディカルシステムズが取り扱う胸部一般X線撮影AI読影支援ソリューション「EIRL Chest Screening LE」を導入した。EIRL Chest Screening LEは、胸部X線画像から肺結節や浸潤影などの異常陰影を検出して、対象領域を画像上で四角で囲んで読影を支援する。佐治院長はAIによる読影支援の導入について、「幅広い疾患を扱う中で胸部X線検査は不可欠ですが、呼吸器非専門医にとって胸部X線画像の読影は難しく、しかも短時間で多くの患者さんを診察しなければならない日々の診療の中では見逃しがないか不安でした。機器の選定に当たって、キヤノンメディカルシステムズからX線撮影装置とDRに加え、撮影したX線画像から異常陰影をサジェストしてくれるAI読影支援システムの導入の提案があり導入しました」と言う。発熱や咳など肺炎などを疑う症状がある患者に対しては、X線撮影を行いEIRL Chest Screening LEで所見が指摘されれば、再度見返し、ほかのデータも加味した上で、必要があればCT撮影を追加する。佐治院長は、「解析の結果は、撮影後すぐに読影端末で確認できます。異常陰影の指摘があれば、すぐにCT撮影の必要性を判断できますし、高い確信度で次の治療に移行できます。患者さんへの説明もしやすいですし、CT画像では肺炎がより明瞭に描出できるので、X線画像よりも患者さんに納得して治療を受け入れていただけます」と言う。
実際に、3週間前から咳が続き、2日前から発熱の症状があった初診の患者に対してX線撮影を行ったところ、EIRL Chest Screening LEで異常陰影の指摘があり(図1 a)、CT撮影を行ったところ、肺炎と診断できた(図1 b)。佐治院長は、「AI読影支援システムがあることで病気の見逃しを防ぐのと同時に、CTを撮影するかどうかの判断も的確に行えます。以前の救急クリニックでは、インフルエンザの流行時期と重なると発熱外来を含めて1日200人以上を診察することがありましたが、当クリニックでは開院時に導入したAI読影支援システムによって今は見逃しの心配が少なく、安心して多くの患者さんに対応することができています」と話す。

■Aquilion Start / i EditionとEIRL Chest Screening LEによる迅速診断

AI読影支援システムとCTによる肺炎疑い症例のピックアップ

図1 AI読影支援システムとCTによる肺炎疑い症例のピックアップ
a:EIRL Chest Screening LE(エルピクセル)による解析結果
b:Aquilion Start / i Editionによる胸部CT
胸部X線画像からEIRL Chest Screening LEが結節候補を指摘(a)。それを基にCTを撮影し肺炎と診断(b)

 

クラウドPACSなど新規開業のトレンドを踏まえた提案で選定

PACSに関してはオンプレミス型での導入も検討したが、初期導入コストと数年後にかかるハードウエアの更新費用などランニングコストをトータルに判断してクラウド型を選択した。導入されたのは、クリニック向けクラウド型PACS「Climis」(ジェイマックシステム製)で、月額1万5000円(税別)で容量無制限で運用されている。クラウドPACSの導入について佐治院長は、「画像データの容量が増え続ける中で、院内のPCを増やすにも限界があります。クラウドであればサーバの設置も必要なく、メンテナンスの手間もないので、スペースやマンパワーの限られるクリニックでは、コストも含めてメリットが大きいと感じています」と述べる。クラウドPACSの使い勝手については、「クラウド型で表示スピードなどを心配されますが、過去画像の表示を含めてパフォーマンスに不満はありません。メンテナンスやセキュリティ面を含めて、管理の手間がないのは開業医にとっては助かりますね」(佐治院長)とのことだ。
今回、画像診断機器およびシステムは、キヤノンメディカルシステムズの提案した組み合わせを選択した。選定の理由について佐治院長は、「価格だけでなく、運用提案や保守・サービスなどの体制、市場のシェアを含めてトータルに判断しました。CTの選定時にフロアの狭いスペースに設置できるかどうか相談した際に、検査室のレイアウト打ち合わせの中でこちらの要望を踏まえて、明確に提案いただきました。また、少ないスタッフで診療を回しているクリニックにとって、機器の不具合などはダイレクトに診療に影響しますので、モダリティや画像系のシステムはできれば1社で統一したいと考えていました。クラウドPACSや診断支援AIなど、自社製品だけでなくコストや実際の運用を含めて最適な組み合わせで提案いただいたことで納得して導入できました」と述べる。

地域のかかりつけとして困りごとに対応

開院から1か月弱だが、発熱外来を中心に多くの患者が来院しており、すでに外来は混雑している。佐治院長は、「開院からしばらくはゆっくりでも徐々に地域に浸透していければと考えていたのですが、予想以上のスタートダッシュになっています。まだ、スタッフが完全にそろっていないところもあり、内視鏡検査など手が回っていない部分もありますが、今後、体制が整い次第、順次内視鏡検査も始めていく予定です。風邪や外傷など地域の患者さんの“よろず”の困りごとに対応して、信頼される診療を提供していきたいですね」と述べる。
佐治院長がめざす地域のかかりつけ医の役割を高精細画像やAI読影支援の技術がサポートしている。

(2024年12月27日取材)

*EIRL Chest Screeningは、アプリケーションの総称です。
*本システムによる検出結果のみで病変のスクリーニングや確定診断を行うことは目的としておりません。
*本記事中のAIという表現は設計段階でAI技術を用いたことを意味しており、システム自体に自己学習機能は有していません。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion Start TSX-037A
認証番号:230ACBZX00022000

一般的名称:X線画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:医用画像解析ソフトウェア EIRL Chest XR
製造販売元:エルピクセル株式会社
製造販売承認番号:30400BZX00285000

一般的名称:X線画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:医用画像解析ソフトウェア EIRL Chest Metry
製造販売元:エルピクセル株式会社
認証番号:302AGBZX00101000

一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:画像診断用ビューアプログラムJM14001
製造販売認証番号:227AFBZX00074000
製造販売元:株式会社ジェイマックシステム

 

江田駅前内科外科

江田駅前内科外科
クリニック
神奈川県横浜市青葉区荏田北3-1-2 1F
TEL 045-507-3423
https://www.mint-eda-clinic.jp

 

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