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「大腸がん撲滅」を掲げ、年間600件の大腸CT検査を行う専門病院で高画質・低被ばくの検査を実施 ~SilverBeam Fi...

大腸肛門病センター高野病院

 

熊本県熊本市の大腸肛門病センター高野病院(166床)は、1981年の開院以来、大腸肛門領域の専門病院として総合的な診療を提供している。大腸がんに対しては「大腸がんの撲滅」を目標に掲げ、内視鏡検査に加えて2002年からいち早く大腸CT検査をスタートし、大きな成果を挙げてきた。同院で2024年2月、キヤノンメディカルシステムズの80列CT「Aquilion Serve」が稼働した。AIを活用した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)」や効率的なワークフローを実現する「INSTINX」の腹部画像診断における運用と評価を高野正太理事長と放射線科の有馬浩美科長、北村燎平技師に取材した。

高野正太 理事長

高野正太 理事長

有馬浩美 科長

有馬浩美 科長

北村燎平 技師

北村燎平 技師

 

大腸肛門病を中心に急性期から回復期までトータルに対応

高野病院は、大腸と肛門の急性期・専門病院として、大腸がんなど悪性疾患のみならず、痔核や痔瘻などの良性疾患、便秘や便失禁、過敏性腸症候群などの機能性疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患(IBD)など、下部消化管の疾患に対して総合的な診療を行っている。高野理事長は、「大腸肛門領域のあらゆる疾患に対応できるように4つのセンターを設けて総合的に対応するとともに、西日本最大の内視鏡センター、IBDに対する化学療法、緩和ケア病棟の開設など、日本でもトップクラスの診療を提供しています」と述べる。
大腸がん検診には1983年から取り組み、便潜血検査は年間13万件を実施、内視鏡検査が可能な大腸がん検診車2台を導入して巡回型検診も行っている。高野理事長は、「大腸がんに対しては、開院当初からの理念である大腸がんの撲滅に向けて、予防・検診から治療、そして緩和ケアまでトータルにカバーする体制を整えています」と述べる。

2002年から大腸CT検査を開始、年間600件を実施

放射線科の診療放射線技師は11名(常勤8、非常勤3)で病院と総合健診センターの検査を担当する。画像診断機器は、CTのほか一般撮影装置、X線透視装置2台、マンモグラフィ、骨密度検査装置、超音波診断装置などで、検査件数はCT6000件、超音波6000件、透視検査1500件など(年間)。超音波検査も診療放射線技師が担当し、便秘エコーなど特殊な検査も行っている。
大腸CT検査(CT colonography:CTC)は、2002年のマルチスライスCTの導入と同時にスタートし、2021年から始まった大腸CT検査技術施設認定を全国第1号で取得している。現在、検査件数は年間約600件で、検査目的は大腸がんの術前検査や内視鏡挿入困難例、人間ドックなどのスクリーニング検査で、精密検査とスクリーニングはほぼ半々の割合だ。CTCの1日検査数は最大7件だが、内視鏡センターでの内視鏡挿入困難などでCTCへ移行するケースに対応することも多いという。有馬科長は、「内視鏡センターでは年間8000件近く、1日で30件程度の検査を行っているので、挿入困難や癒着で検査ができなかった患者さんへの対応や、大腸がんが見つかった場合にはそのまま術前検査のためのCTCを行うなど、予約以外の検査にも柔軟に対応しています。そこは専門病院ならではの体制ですね」と述べる。

大腸CT検査技術施設認定を全国第1号で取得

大腸CT検査技術施設認定を全国第1号で取得

 

低被ばく、高画質、高スループットのAquilion Serve導入

同院では、2012年から稼働していた64列の「Aquilion / CXL Edition」を更新して、2024年2月に80列のAquilion Serveを導入した。有馬科長はCTの更新について、「腹部領域の検査が中心の当院のCTとして、画質や被ばくの低減、ワークフローを含めた検査スループットを優先に考え機種選定しました。AIを活用した画像再構成や検査の自動化技術、SilverBeam Filter(以下、SB Filter)を用いた被ばく低減などを評価してAquilion Serveの導入に至りました」と述べる。
実際に検査を担当する北村技師は、前機種からAquilion Serveへの変化について、「80cmの大開口径で、患者さんの体位の自由度が増し検査がしやすくなりました。また、ガントリ自体もコンパクトになり、CTC検査前の準備作業などもしやすくなっています」と評価する。また、Aquilion Serveでは、INSTINXによって検査のプロセスを支援して、簡便な操作で迅速な検査を可能にしている。北村技師はINSTINXによる操作性について、「オートマティックカメラポジショニングでは、ガントリのタッチパネルで部位を選択してボタン1つでセッティングができ、検診の胸部CT検査などでは助かっています。また、コンソールのユーザーインターフェイスもシンプルで、以前とは操作性が変わりましたがすぐに慣れることができました」と述べる。検査時には、低線量のヘリカルスキャンで位置決め画像を取得する「3D Landmark Scan(以下、3DLS)」で取得したデータを基に撮影領域を自動で設定する「Anatomical Landmark Detection(ALD)」が利用できる。北村技師は、「検診の胸部CT検査など単純な検査では、ALDを使うことで簡単に撮影範囲を設定することができます。ハードウエア性能の向上による画像再構成処理の高速化と併せてワークフロー改善の効果を実感しています」と話す。

AiCE-iとSilverBeam Filterで検診胸部CTの線量を80%削減

Aquilion Serveでは、AiCE-iに加え、銀フィルタによってX線の低エネルギー成分を低減することで被ばくを抑制するSB Filterで低被ばくでの検査が可能だ。同院では、検診の胸部CTで両技術を併用することで従来の2割の線量で検査が可能になった。さらにCTCへの適用も進めており、AiCE-iでは約3割、SB Filterを加えることで約5割の被ばく低減になっている。北村技師は、「CTCでSB Filterを入れても読影には支障がないことがわかりましたが、タギングの視認性なども含めて、今後さらに検証を進めていく予定です」と話す。CTCでは2体位(腹臥位と背臥位)の撮影を行うが、同院では1体位目を低線量で、2体位目を低管電圧で撮影を行っている。有馬科長は、「低管電圧撮影では造影剤のコントラストが上がるので2体位で撮影条件を変えて撮影していますが、SB Filterをどのように組み合わせるのが最適か今後検討を進める予定です」と言う。
CTCでは、良好な画像を得るために炭酸ガスを用いた腸管拡張を行うが、有馬科長は腸管拡張の確認に3DLSの位置決め画像が有用だと次のように言う。
「腸管の拡張具合は本スキャンの前に位置決め画像で確認しますが、従来の平面像(コロナル)の位置決め画像では、S状結腸などの重なりがある部分では確認が難しいことがありました。3DLSでは横断像(アキシャル)で確認でき、腸管の拡張不良が格段に確認しやすくなりました。本スキャン後に拡張が不十分な場合、3体位目を撮影することもありますので、拡張の状態を正確に把握できることは被ばく低減や患者さんの負担軽減につながります」
同院ではまた、骨盤臓器脱症候群に関する検査(DP-3DCT検査)を行っている。骨盤内臓器の動きを、安静時と怒責時(息んだ状態)でCTで撮影し、3D画像を作成して臓器の変化を確認する検査だ。Aquilion Serveの導入後、このDP-3DCT検査の画像を大きく改善したのが、キヤノンメディカルシステムズ独自の金属アーチファクト低減技術である「Single Energy Metal Artifact Reduction(SEMAR)」だ。北村技師は、「前機種はSEMARがなく、人工骨頭などが留置されている患者さんでは、アーチファクトによって画像に欠損領域が生じ、確認できる範囲で診断するしかありませんでした。SEMARを適用することで金属アーチファクトが低減され、診断や術式の選択に大きく貢献しています」と説明する。

■Aquilion Serveによる臨床画像

図1 3D Landmark Scanを用いた腸管拡張の確認

図1 3D Landmark Scanを用いた腸管拡張の確認
a:従来の位置決め画像 b:3D Landmark Scan
大腸CT検査において、位置決め画像のみではS状結腸の拡張の正確な判断が難しい場合があるが、3D Landmark Scanを用いることで腸管の重なりがあっても拡張の程度の判断が容易になる。従来の位置決め画像(a)ではS状結腸も拡張しているように見えるが、3D Landmark Scan(b)で確認するとS状結腸の拡張不良が判断できる。

 

図2 骨盤内臓器の下垂の程度の評価目的で検査施行

図2 骨盤内臓器の下垂の程度の評価目的で検査施行
a:SEMARなし b:SEMARあり
aは人工骨頭置換(両側)後の金属アーチファクトにて画像評価が困難であった。bはSEMARを用いることで骨盤内臓器の評価が可能になった。

 

図3 大腸CT検査における前機種とAquilion ServeのCTDIvolの比較

図3 大腸CT検査における前機種とAquilion ServeのCTDIvolの比較
前機種と比較しAiCE-iとSilverBeam Filterを併用することでCTDIvolは約5割低減した。

 

 

大腸肛門病の臨床研究に取り組み地域に貢献

同院では、病院として臨床研究にも積極的に取り組んでいるが、有馬科長は、「SB FilterのCTCでの活用や撮影方法の検討、さらなる被ばく線量の低減など、CTCでの可能性についてキヤノンメディカルシステムズとも連携しながら取り組んでいきたいですね」と展望する。高野理事長は病院の今後の方向性について、「大腸肛門病の専門病院として、常に新しい領域や技術にチャレンジすること、緩和ケアも含めて地域包括ケアの中で回復期の医療を提供すること、この両輪を回すことでさらに地域に貢献していきたいですね」と抱負を語る。
大腸がんの撲滅という理念達成に向けて走り続ける同院の取り組みは、地域を超えて大きく広がっていく。

(2024年8月29日取材)

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion Serve TSX-307A
認証番号:304ACBZX00001000

※本記事中のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

 

大腸肛門病センター高野病院

大腸肛門病センター高野病院
熊本県熊本市中央区大江3-2-55
TEL 096-320-6500
https://www.takano-hospital.jp

 

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