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AI技術を活用した高精細画像と高速回転を実現した新しいADCTで冠動脈CT撮影を実施 ~0.24s回転や超解像再構成

愛知医科大学病院

 

愛知医科大学病院(900床、道勇 学病院長)では、2023年10月にキヤノンメディカルシステムズのArea Detector CT(ADCT)の新たなフラッグシップとなる「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」が先行導入された。高精細CT「Aquilion Precision」と先進のAI技術で実現した超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」によって、ADCTの可能性をさらに広げたAquilion ONE / INSIGHT Editionの初期経験について、冠動脈撮影での評価を中心に循環器内科の安藤博彦特任教授と中央放射線部の近藤賢一副技師長、清水 希技師、桐生和馬技師に取材した。

循環器内科・安藤博彦 特任教授

循環器内科・
安藤博彦
特任教授

中央放射線部・近藤賢一 副技師長

中央放射線部・
近藤賢一
副技師長

清水 希 技師

清水 希 技師

桐生和馬 技師

桐生和馬 技師

 

年間1000件を超える冠動脈造影、PCIを実施

同院は1974年の開院以来、地域の基幹病院として一貫して安全で質の高い医療を提供してきた。開設40周年の2014年には新病棟が竣工し、最新の医療機器の導入や救急・集中治療部門を整備して、高度で先進的な医療を提供する体制を整えた。なかでも、救急医療に関しては高度救命救急センターやドクターヘリの運航など愛知県の救急・災害医療の要の役割を果たしている。
循環器内科は、虚血、不整脈、心不全・心筋症領域の3つのグループで構成されており、3つの領域が連携して循環器疾患に対する診療や研究、教育に当たっている。安藤特任教授は、「虚血性心疾患や不整脈は、最終的には心不全に至ることが多く、各グループが専門性を持ちつつ、心臓外科や救命救急科などの診療科とも連携して対応しています。私が所属する虚血グループでは、冠動脈CTや光干渉断層法(OCT)などの冠動脈イメージング、FFR(冠血流予備量比)による機能的虚血評価法を活用して、最適なPCIや冠動脈造影(CAG)の適切な選択を行っています」と説明する。CAGは年間約800件、冠動脈形成術(PCI)は年間約300件を行っている。
放射線科医師は24名。検査部門である中央放射線部の診療放射線技師は66名、看護師15名、受付事務7名で核医学検査、放射線治療までを行う。その中でCT、IVRが1つのグループになっており、23名の診療放射線技師が在籍する。CTは、中央棟1階の画像診断センターにAquilion ONE / INSIGHT Editionのほか、Aquilion Precision、他社製2管球CTなど各社のフラッグシップCTがそろい、高度救命救急センターにはハイブリッドER(Angio-CT設置)に80列の「Aquilion Prime SP/ i Edition」が導入されている。

ADCTの新たなフラッグシップ機を先行導入

Aquilion ONE / INSIGHT Editionの導入について近藤副技師長は、「2021年に導入したAquilion Precisionは、当初は単純撮影が中心でしたが、診療科から造影検査で使用したいとの要望があり、画像への評価が高く検査が拡大していました。今回のCT装置のリプレイスに当たっても、その流れの中でハイブリッドERへの80列CTの導入に合わせて、最新のADCTを先行導入することになりました」と述べる。
ADCTの新たなフラッグシップとなるAquilion ONE / INSIGHT Editionは、AIを活用した超解像画像再構成技術のPIQEによって、ADCTの高精細化とさらなる被ばく低減を可能にしている。筐体の設計も一新され、新型X線管と新型検出器を採用。これにより従来型検出器に比べて約40%の電気ノイズを低減して、さらなる低被ばくと高画質検査を可能にする。高剛性フレームの採用でガントリ回転速度も0.24秒となり、高速撮影が可能になった。また、ガントリに装備された液晶パネルや内蔵カメラを使ったポジショニングのサポートやAIを活用した自動化技術「INSTINX」によって、複雑な撮影の手順をサポートし迅速で効率的な検査ワークフローを提供する。

PIQEによる画像再構成で確実な冠動脈CTを実施

安藤特任教授は、安定冠疾患へのPCIの現状について、「近年のISCHEMIA試験など各種の臨床試験の結果から、PCIの長期的な予後改善の効果は限定的というエビデンスが出ており、今後は施行数は減少すると考えられます。それだけに非侵襲的な冠動脈CT検査は、狭窄度や虚血の評価に加えて、血管内腔のプラークや石灰化の性状評価などで、将来的なイベント予測の精度を上げることが期待されます」と言う。
心臓CTに関しては、Aquilion ONE / INSIGHT Editionの導入後、循環器内科を中心に画質や検査成功率などをトータルに検討した結果、現在はAquilion ONE / INSIGHT Editionをメイン装置として使用している。その経緯を安藤特任教授は、「最初に冠動脈の画像を見た時に、ノイズが少なくきめの細かい画像が描出されていることに驚きました。装置本来の性能か、PIQEの効果かはわかりませんが、解像度が上がることで内腔や血管壁など辺縁構造が明瞭に確認できることがわかり、冠動脈CTに関してはAquilion ONE / INSIGHT Editionで撮影するように変更しました」と述べる。
もう一つ、Aquilion ONE / INSIGHT Editionでの心臓CT検査に踏み切った理由として、検査に失敗しない点を安藤特任教授は挙げる。
「CAGでは期待した画像がほぼ100%得られるのに対して、従来の冠動脈CTでは、画質不良のために評価できないケースがしばしばありました。冠動脈の描出不良の要因は息止め不良や高心拍、高体重などさまざまですが、検査の1割程度で発生し、読影できなければCAGに回す必要がありました。Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは、従来であれば読影不能だったような症例でも、最低限、解剖学的な狭窄の有無の解釈ができる画像を提供してくれることを実感しています」
冠動脈の描出精度の向上は、0.24秒の高速回転とセグメント再構成による時間分解能の向上に加え、PIQEの効果が考えられるが、安藤特任教授は、「実際に何が有効なのかは検証が必要ですが、描出不良になりやすい心囊水が貯留した症例でも、PIQEによる画像処理によって冠動脈の解析が可能になった例を経験しています」と述べる。

■Aquilion ONE / INSIGHT Editionによる臨床画像

図1 従来のCTとAquilion ONE / INSIGHT Editionを血管内超音波と比較

図1 従来のCTとAquilion ONE / INSIGHT Editionを血管内超音波と比較
a:従来CT b:Aquilion ONE / INSIGHT Edition c:血管内超音波
Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは従来のCTと比べて石灰化の輪郭がより明瞭に描出され、血管内超音波と非常に類似した画像が得られている。

 

図2 心囊水が多量に貯留した症例のPIQEによる再構成

図2 心囊水が多量に貯留した症例のPIQEによる再構成
多量の心囊水のために描出が困難であった冠動脈および心筋が、PIQEを用いることで評価可能になった一例

 

AIを活用した操作体系で検査効率を向上

同院では、冠動脈CT検査には循環器内科医が立ち会い、必要に応じてβブロッカーなどでの心拍コントロールを行っている。心臓CT検査について清水技師は、「不整脈のある患者では、バンディングアーチファクトによって冠動脈の評価ができないケースが以前はあったのですが、Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは心拍数が100に近くてもアーチファクトの少ない画像を得られるようになりました。以前は静止位相を探すのに時間がかかることがありましたが、Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは複数心拍からのセグメント再構成で、不整脈があってもバンディングアーチファクトがない冠動脈が描出できるようになりました」と述べる。
Aquilion ONE / INSIGHT Editionの新しいユーザーインターフェイスについて清水技師は、「操作系は一新されていますが、操作の流れに沿った画面のレイアウトになっていて、初めて操作する技師でも迷うことなく業務が進められます」と説明する。低線量で撮影した3D Landmark Scanを用いたAutomatic Scan Planningでは、三次元データを含めた位置決め画像を取得し臓器を自動認識して最適な撮影範囲を設定できる。桐生技師は、「従来のスカウト画像による位置決めでは、心臓が外れてしまうことがあったのですが、3D Landmark Scanでは自動認識されて撮影範囲の設定をしやすくなりました」と評価する。
Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは、80cmの大開口径と寝台左右動機構(オプション)を生かして、骨生検や膿瘍ドレナージなどCT透視下穿刺の件数も増えている。また、低管電圧撮影については70kVでの肝臓のダイナミック撮影の検証を進めている。従来の半分程度の造影剤量での検査が可能になっており、冠動脈CTについても今後検証を進めていく予定とのことだ。

高精細画像による血管内腔の評価に期待

Aquilion ONE / INSIGHT Editionによる冠動脈CTの今後の期待について安藤特任教授は、「CTの解像度が上がったことで、OCTなどの血管内イメージングに匹敵するプラークや石灰化の観察が可能になることを期待しています。CTでは、3D再構成することで形状の立体的な把握や、血管内だけでなく脂肪などの周囲組織の観察が可能なこともメリットです。複合的に評価することで予後予測の精度が向上することが期待されます」と述べる。PIQEによって低侵襲に血管内の性状評価を行い、治療部位やデバイスの選択などPCIの治療戦略を立てることが可能になることが期待される。安藤特任教授は、「CTによるPCIの治療パッケージのプロトコール作成の臨床試験などにも取り組んでいく予定です」と今後の取り組みについて語る。
ADCTでの高精細画像の取得を可能にしたAquilion ONE / INSIGHT Editionが、冠動脈疾患の画像診断に新たなステップを刻むことが期待される。

(2024年2月7日取材)

※本記事中のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion ONE TSX-308A
認証番号:305ACBZX00005000

 

愛知医科大学病院

愛知医科大学病院
愛知県長久手市岩作雁又1-1
TEL 0561-62-3311
https://www.aichi-med-u.ac.jp/hospital/

 

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