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胸部、血管系、骨領域などで高精細画像(0.25mmスライス×AiCE)による画像診断を展開 〜AiCEによるノイズ除去

新潟大学医歯学総合病院

 

新潟大学医歯学総合病院(827床)では、2022年12月からキヤノンメディカルシステムズの高精細CT「Aquilion Precision」が稼働している。0.25mmの高精細画像とディープラーニング技術を応用した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」で、肺がんなどの呼吸器疾患や血管系、骨領域などの診断を行うと同時に、1日40件近い検査にも対応し高度先進医療を行う大学病院の診療を支えている。放射線診断科の石川浩志教授、山崎元彦講師、放射線部の金沢 勉技師長、能登義幸副技師長、倉元達矢主任に高精細CTの運用と画像診断の現況を取材した。

石川浩志 教授

石川浩志 教授

山崎元彦 講師

山崎元彦 講師

金沢 勉 技師長

金沢 勉 技師長

     
能登義幸 副技師長

能登義幸 副技師長

倉元達矢 主任

倉元達矢 主任

 

 

新潟県の高度先進医療と医育機関として人材育成の役割を担う

新潟大学は、旧六医大(千葉大学、金沢大学、岡山大学、長崎大学、熊本大学)の流れをくみ、大学病院は前身を含め140年あまりの歴史を持つ伝統のある医療機関である。石川教授は病院について、「大学の附属病院として、また、県内唯一の特定機能病院として、高度で先進的な医療を展開する責務があります。その一方で、医師不足が進む新潟県で唯一の医学部として地域医療を担う人材育成を両立させていくことが役割と言えます」と述べる。また、同院は医学部と歯学部が連携して総合的な診療を行う“医歯学総合病院”でもあり、放射線診療においても顎・顔面領域では歯科放射線科と連携して検査、読影が行われている。石川教授は、「検査結果は合同のカンファレンスやミーティングを開いて知識や経験を共有しています」と話す。
放射線診断科の専門医は16名、放射線部の診療放射線技師は常勤、非常勤合わせて42名。金沢技師長は、「放射線部長である石川教授の下で、多職種が連携したチーム医療を展開しています」と述べる。

高精細画像とDLRに期待してAquilion Precisionを導入

Aquilion Precisionの導入で、同院ではArea Detector CTの「Aquilion ONE」、Dual Source CT(他社製)、救急がメインの64列CT(他社製)の計4台が稼働する。CTの更新について石川教授は、「Aquilion Precision導入前には、メーカーの違う3台のCTが稼働していました。今回の更新では面検出器と2管球のCTが稼働する中で、特長が異なるCTによる検査が行える環境がよいのではと考えました。国立大学病院として経営面へも配慮をしながらも、今回は高精細画像とAI技術を応用した画像再構成(Deep Learning Reconstruction:DLR)という特長に期待して、Aquilion Precisionの選定に至りました」と説明する。高精細CTへの期待について石川教授は、「自分の専門である胸部領域では、高精細画像が従来にはない高い描出能があることはわかっていましたので、それがさまざまな領域に展開されることを期待しました。また、DLRは初めての導入であり、今後普及する技術であることは間違いありませんので、その知見についても医師と技師で共有しながら進めたいと考えていました」と述べる。

0.25mmで呼吸器や血管系、骨領域の描出能が向上

Aquilion Precisionでは、0.25mmスライス厚・1792chでデータ収集を行うSHRモード、0.5mmスライス厚で面内分解能の高い1792chでデータ収集するHRモード、0.5 mmスライス厚で従来CTと同等の撮影を行うNRモードでの撮影が可能だ。同院では、AiCEが使えない頭部領域はNRモードで撮影しているが、基本的にHRモードで撮影し、SHRモードは線量制限やデータ容量を考慮して、側頭骨、胸部や頭頸部・四肢の血管系、四肢骨、歯科領域など限定した領域で使用している。
石川教授はAquilion Precisionの画質について、「見た目の印象だけでなく、実際に同一患者で従来CTの画像と比較してみると、微細な構造や病変内部の微妙な濃度差の違いが描出されていることがわかります。従来は見えていなかったものが見えていると感じるところがあり、診断能の向上につながるのではと期待しています」と述べる。山崎講師はAquilion PrecisionのSHRモードでの画質について、「胸部領域では肺の微細な構造がとらえられるようになりました。末梢の気管支や細血管まできれいに描出されています。それによって3D画像もより詳細な描出が可能になっており、呼吸器外科の医師からもAquilion Precisionで撮影した画像は見ただけで違いがわかると評価を得ています。これは脳神経外科医による頭部血管の評価でも同様です」と述べる。金沢技師長も、「血管系の描出能の向上は明らかで、診療科の先生方も視覚的に違いがわかるので、Aquilion Precisionへのオーダが増えているのが現状です」と述べる。
救急用以外の3台のCTの使い分けについて能登副技師長は、「3台のCTの特長に合わせて検査を振り分けています。Aquilion Precisionでは、高精細画像を生かし側頭骨、肺がんの術前検査、頭部や頸部などの血管系を優先しています。特に、脳神経外科からの術前精査を目的とした検査依頼では、高精細画像の指名オーダが増えつつあります」と言う。

■Aquilion Precisionによる臨床画像

図1 症例1 70歳代、男性、Lepidic adenocarcinoma

図1 症例1 70歳代、男性、Lepidic adenocarcinoma
再構成条件:AiCE Lung Standard、0.25mm厚、1024マトリックス
横断像(左)、再構成冠状断像(右)共に、部分充実型結節の内部性状が明瞭に把握可能である。

 

図2 症例2 40歳代、男性、全身性強皮症

図2 症例2 40歳代、男性、全身性強皮症
再構成条件:AiCE Body Sharp Mild、0.25mm厚、1024マトリックス
動脈優位相のMIP像では、右第1~5指動脈の途絶と第2・4指動脈周囲の側副路形成が確認できる。

 

図3 症例3 40歳代、女性、セメント質骨性異形成症

図3 症例3 40歳代、女性、セメント質骨性異形成症
再構成条件:AiCE Inner Ear Mild、0.25mm厚、1024マトリックス
左下3根尖周囲の病変内の石灰化の程度が明瞭に把握できる。

 

線量低減とAiCEによって1日40件のルーチン検査を実現

リプレイス前の64列CTでは、単純や造影検査を中心に1日30件以上を撮影していたことから、Aquilion Precisionでも同等の検査スループットが期待された。リプレイス前の検査件数は、2021年度4997件、2022年度は4898件だったが、Aquilion Precision導入後の2023年度は10月時点で5400件と、1日平均40件近い検査件数となっている。Aquilion Precisionの解像度の高さから血管系を中心にオーダがさらに増えているのが現状だが、Aquilion Precisionでの検査について倉元主任は、「AiCEを適用してノイズを除去することで、撮影時の画像SD設定をAquilion ONEに比べて2倍程度に設定しています。これによって、管球の熱容量を抑えて1日40件近い検査が可能になりました。75kg以上の高体重の患者では、ダイナミック撮影を行う場合には線量制限がかかり、多少の待ち時間が生じることがありますが、単純のみ、造影のみであれば100kg超でも問題なく撮影が可能です」と述べる。
Aquilion Precisionでは、中内耳用の「Inner Ear」や脳血管用の「Brain CTA」、骨・軟部用の「Bone」などのAiCEの新しいパラメータが追加されている。AiCEの活用について能登副技師長は、「AiCEは頭部の単純撮影以外はすべての領域で使っています。側頭骨はInner Earを、脳血管領域でBrain CTAを積極的に使っています。AiCEは、当初少し不安もありましたが、実際に検査に適用してみると画質の向上は予想以上で、かなり鮮明な画像が得られています。特に高コントラスト領域に関して評価が高い印象です」と述べる。山崎講師も、「歯科の医師からも画像が明瞭で、顎骨の内部性状の観察がしやすくなったと評価をいただきました」と言う。AiCEは再構成のスピードも検査のスループットに貢献している。能登副技師長は、「逐次近似画像再構成では15~20分かかることがありましたが、AiCEでは処理が速く日常検査の中で十分に運用できています」と評価する。

臨床データを基に高精細画像の評価を進める

現在は、肺がん術前の精査では、全肺は1mm厚で、原発巣の部分のみ0.25mmスライスで再構成して画像が提供されている。山崎講師は、「腫瘍だけでなく周囲の肺野の状態を把握したいので、できれば全肺を高精細画像で見たいところです」と言う。一方で金沢技師長は、「診断医や臨床医から高精細画像で見たいという要望が出てくることは当然ですが、高精細画像ではデータ容量が指数関数的に増大しネットワークが対応できません。今回もAquilion Precisionの高精細画像を効果的に扱うために新たに別のネットワークを構築しましたが、今後、広帯域のネットワークや高速なスイッチなど大容量画像を前提としたPACSが不可欠だと思います」と述べる。能登副技師長は、「AiCEで線量を抑えた撮影を行っていますが、まだ撮影線量を低減する余地は残されていると思いますので、AiCEのパラメータの調整などでさらなる被ばくの低減を進めていきたいですね」と言う。
Aquilion Precisionでの今後の取り組みについて山崎講師は、「肺がんを中心に治療効果や予後などが、高精細画像でより正確に予測できるのかを、データを蓄積した上で検討したいと考えています」と述べる。石川教授は、「画質の向上がどこまで診断能や検査の効率に寄与するのか、検査数の多い胸部の肺疾患、頭部の側頭骨、血管系などで客観的な評価を行っていきたいですね」と述べる。
大学病院での高精細CTの運用によって得られる知見が、CTの可能性をさらに広げていくに違いない。

(2023年10月31日取材)

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion Precision TSX-304A
認証番号:228ACBZX00019000

 

新潟大学医歯学総合病院

新潟大学医歯学総合病院
新潟県新潟市中央区旭町通一番町754
TEL 025-223-6161(代)
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