東京都足立区の西新井駅前さくら参道内科クリニックは、2017年4月に開業した総合内科、循環器科、腎臓内科、リウマチ科を標榜するクリニックである。同クリニックでは、キヤノンメディカルシステムズの80列CT「Aquilion Lightning/Helios Edition」を導入し、ていねいで専門的な医療を提供する中で診療や各種ドックにおいて全身CTや心臓CTをはじめ画像診断を積極的に活用している。市中クリニックにおける80列CTの運用と活用の現況について、齋藤 穎(さとし)名誉院長と診療放射線技師の長野 章技師に取材した。
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東武スカイツリーラインの西新井駅西口から徒歩1分、同クリニックが入るさくら参道ビルは、眼科、皮膚科、整形外科、小児科、耳鼻科、歯科などが入居する医療モールになっている。西新井駅の西口地区は、2003年から工場や鉄道車両基地の跡地を利用した再開発が進められており、周辺には大型マンションや商業施設、公園などが整備されている。
同クリニックは、日本大学医学部先端医学講座教授、循環器内科部長および日本大学病院顧問を歴任した齋藤名誉院長と、腎臓内科、リウマチ膠原病内科を専門とする齋藤督芸院長の親子で診療を行っている。齋藤名誉院長は、「それぞれの領域で学会認定専門医による診療を提供できるのがクリニックの一つの特徴です。2人の専門領域が異なるのでバランスの取れた診療が行えます。駅前ということもあり、外来は風邪など一般的な疾患での受診も多いですが、そういった患者さんも含めてていねいで良質な診療を提供することが当クリニックの理念です」と説明する。
開院して1年で外来患者数は1日平均40〜50人、多い時には70人を超える。専門的な医療を求める患者のほかに風邪など一般的な疾患で受診する患者も多く、年齢層も若いのが外来の特徴だ。また、CTや超音波診断装置を活用した人間ドック(全身CT含む)、心臓ドック、肺がん検診など各種のがんドックや検診も行っている。
同クリニックは、画像診断機器が充実しているのも特徴で超音波診断装置(Aplio 300)のほか、CTについては80列のAquilion Lightning/Helios Editionを導入した。CTをはじめとする機器導入のねらいを齋藤名誉院長は次のように述べる。
「クリニックだからこそ、しっかりとしたエビデンスに基づいた診療を行うことが必要だと考え、画像診断機器を充実させました。特にCTの導入はクリニックの特色にもなり、また、画像診断の結果がすぐに出ることで、患者さんの満足度や納得のレベルが高まります。他院に依頼することなく、院内で速く正確な診断が行えることは医師にとってもストレスが少なく、経営的なメリットが大きいと考えました」
とはいえ、CTの導入は採算性などコスト面から意見が分かれたが、齋藤名誉院長は「Aquilion Lightning/Helios Editionは、心臓検査にも対応できる高解像度の画像を低被ばくで撮影できる性能と、クリニックレベルでも導入できる高いコストパフォーマンスを期待して選定しました」と述べる。
Aquilion Lightning/Helios Editionは、“PUREViSION Optics”の搭載や逐次近似応用画像再構成“AIDR 3D Enhanced”などで、高画質と低被ばく撮影を可能にした新世代の80列CTである。CT検査を担当する長野技師は、前任の日本大学板橋病院でEMIスキャナの時代からAquilion ONEまで多くのCT装置を使用した豊富な経験を持つ。長野技師は使用経験について、次のように述べる。
「CTの撮影は線量と画質がトレードオフの関係にありますが、Aquilion Lightning/Helios Editionでは低被ばく線量でも高画質の撮影が可能です。従来、後頭蓋窩は骨からのアーチファクトで描出が難しかったのですが、きれいに描出されています。線量についても従来の装置の約半分程度で撮影できており、これまでに比べて大きく進化していると感じています」
また、市街地のビル診療所として装置のコンパクトな設計も重要なポイントになった。Aquilion Lightning/Helios Editionは、検査室の最小設置面積9.8m2での導入が可能で、限りのあるスペースの中で無理なくレイアウトできた。長野技師は、「Aquilion ONEに比べるとかなりコンパクトですが、開口径も広く、患者さんへの圧迫感が少ないのでリラックスして検査を受けていただけます」と評価する。
開院前には採算性が不安視された80列CTだったが、開業後のCT検査は1日平均で3〜5件、多い日には10件以上になり、採算ラインとされた検査件数を大きく上回っている。検査としては、胸腹部、頭頸部に加えドック受診者も増えており、全身CTや肺がんドックでのCT撮影も増加している。齋藤名誉院長は、「高精細な画像で、冠動脈の石灰化から副鼻腔炎(図2)まで診断できています。必要な時に他院へ依頼せずに,すぐに撮影して結果を患者さんに説明できるメリットを実感しています」と述べる。
長野技師は、迅速な検査と結果のフィードバックと同時に、クリニックだからこそ患者にもわかりやすい画像を提供することが必要だとして次のように説明する。
「大学病院と違って患者さんとの距離が近く、よりていねいな検査や説明をするように心掛けています。画像についても、診断だけではなく患者さんへの説明も考慮して、3D画像を含めてMPRや多断面の画像を用意し、よりわかりやすい説明ができるように作成して提供しています」
検査の際には、標準搭載のガントリモニタで、患者名の確認や息止めの練習のコンテンツなどを活用してスムーズな検査が可能になっている。長野技師は、「外国人の方の受診もあるので、モニタを使った説明と息止めアナウンスなどの多言語対応は役立っています」と述べる。また、齋藤名誉院長はクリニックだからこそ、CT検査での造影剤の副作用にも細心の注意を払い、アレルギーなどへのケアを行って検査を行っていると説明する。
心臓CTは診療とドックを合わせて月間2、3件。精査目的の検査では、βブロッカーを使用して心拍数をコントロールした撮影を心掛けている。Aquilion Lightning/Helios Editionは、ガントリ回転速度が最速0.5秒だが、“PhaseNAVI”で静止位相を取得することで冠動脈のプラークと石灰化の評価が可能になっている(図1)。齋藤名誉院長は、「心臓CTの件数は、まだ多くはありませんが、病変の有無や治療方針の決定について確実に判断ができる画像が得られています。件数についても、今後少しずつ増やしていく予定です」と述べる。
また、Aquilion Lightning/Helios Editionには、金属アーチファクト低減技術の“SEMAR”が標準搭載されている。SEMARの適用について長野技師は、「撮影後でも必要があれば後から処理ができるので便利です。腹痛を訴えて受診された患者さんで、腹部に滞留した金属製の義歯の状態がSEMARで明瞭に描出できたという症例(図3)を経験しました。アーチファクトの低減効果を実感しています」と述べる。
被ばく線量については、医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)の診断参考レベル(DRLs)のCTDIvolの半分以下の線量でどの部位も撮影を行っている。長野技師は、「CTの被ばく線量については、DRLの数値を含めて患者さんに説明して検査を行っています。撮影後には線量も表示されますので、患者さんにも実際の数値を説明しています」と述べる。
■Aquilion Lightning/Helios Editionによる臨床画像
長野技師は、Aquilion Lightning/Helios Editionについて、国産企業の製品でありメンテナンスも含めた確実なアフターフォローへの安心感が大きいと言う。「故障などで検査ができないというのはクリニックとしてはマイナスになります。その点で故障が少なく、トラブル時にも迅速に対応してもらえることは大きなメリットです」
クリニックの今後について、齋藤名誉院長は、ゆくゆくは画像を使った臨床試験などにも取り組みたいとして次のように述べる。
「画像診断をさらに充実させたいというのが今後の希望で、将来的にはMRIの導入も検討しています。そのためにはCTをさらに活用しながら、患者さんに対してていねいでやさしい診療を提供し続けて、地域に根ざした医療を展開していきたいと思います」
駅前クリニックという絶好の立地の中で、専門的医療を展開する同院で、Aquilion Lightning/Helios Editionのますますの活用が期待される。
(2018年5月14日取材)
西新井駅前さくら参道内科クリニック
東京都足立区西新井栄町2-3-3 さくら参道ビル2階
TEL 03-5888-6635