高知県高知市の青木脳神経外科形成外科は、青木道夫院長が受け持つ脳神経外科と青木葉子副院長の形成外科・皮膚科を中心に、心臓血管外科、循環器科などを標榜する19床の有床診療所である。脳神経外科では、脳、脊髄疾患や交通事故などの外傷、認知症の診断・治療だけでなくがんや冠動脈、大動脈など血管系までを含めた全身疾患をカバーした診療を行っている。同クリニックでは、2016年3月に16列/32スライスの「Aquilion Lightning」を導入した。頭部だけでなく、全身の疾患を把握しフォローアップする必要性を説く青木院長の診療スタイルの中でのCTの活用について取材した。
青木院長は、1974年京都大学大学院を修了後、川崎市立井田病院(一般外科)、京都大学医学部附属病院(脳神経外科)などを経て、1991年11月に同クリニックを開業した。1日平均外来患者数は140人で、そのうち9割は脳神経外科の患者となっている。脳神経外科では、頭痛やめまい、肩こり、腰痛など脳と脊髄に関する疾患の診断と治療、交通事故など外傷疾患、認知症の診断と治療などを中心に行っている。また、脳ドックやアルツハイマードックなどさまざまなドックを行っており、CTを用いた胸腹部のドックも提供しているのが特徴だ。
青木院長は、脳神経外科の専門クリニックとしての診療コンセプトについて次のように述べる。
「脳神経外科として頭の疾患だけではなく、慢性疾患はもちろん、心臓や血管、体幹部の疾患まで、患者さんの全身の状態を把握した診療を心掛けています。例えば、頭痛や肩こり、めまいといった症状は、頭だけに原因があるわけではなく、脊髄から来る頸性頭痛や心血管や大動脈、肝胆膵の疾患から起こるものもあります。また、近年、転移性脳腫瘍が増加していますが、発見した場合にはできるだけ早く治療に移るために、原発巣を特定して紹介する必要があります。そのために、開院当初からCT、MRIを導入して画像診断に力を入れており、頭部だけでなく、脊髄から血管系、全身のがんの検査が可能な体制を整えました。小回りが利く脳神経外科の専門クリニックとして、患者さんの全身状態を把握して次の治療につなげることで、質の高い診療を提供しています」
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青木院長は、京都大学病院に在籍当時にEMIスキャンでのCT検査の経験を持つなど、画像診断には豊富な経験と深い造詣がある。その経験から開業に当たってはCTとMRIを導入、特にMRIについては常に最新機種に更新して、頭部だけでなくMRAによる下肢血管やDWIBSを用いた体幹部のがんのスクリーニングなどを行ってきた。そして、2016年3月にシングルCTを、東芝メディカルシステムズの16列/32スライスのAquilion Lightningに更新した。青木院長は、クリニックでの画像診断について、「アテローム血栓性(ATIS)など末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)が増えていることから、MRI、CTによる心臓を含めた全身の血管撮影も欠かせません。さらに近年、転移性脳腫瘍が増えていることから、MRIのDWIBSによるがんの検索を行っており、さらに詳細な診断と迅速な治療を進めることを考慮して、今回、最新のCTに更新しました」と説明する。
Aquilion Lightning選定の理由を青木院長は、「これからの脳神経外科専門クリニックの診療には高性能でコンパクトなCTが必要だと考えて、各社のCTを検討しましたが、最先端の技術を搭載しつつ国産企業としての充実したサポートを期待できることから東芝メディカルシステムズのCTを選択しました」と述べる。Aquilion Lightningは、新型検出器“pureViSION Detector”による0.5mmスライススキャン、さらに進化した画像再構成技術“AIDR 3D Enhanced”の搭載など、同社の上位機種で培われた先進技術をベースとした機能が反映されているのが特長だ。また、最小設置面積9.8m2と省スペース設計を実現しており、同クリニックでもシングルCT(Xvision)の設置されていた検査室にそのまま導入することができた。
放射線技術科の大西 学技師長は、Aquilion Lightningへのリプレイスについて、「撮影はもちろん、撮影後の画像処理まで処理スピードが速く、迅速にスムーズな検査が可能になりました。シングルCTから16列に更新したことで生データからサジタル画像、コロナル画像の再構成やMPRを作成することが増えましたが、コンソールの操作性も良く業務効率が向上しています」と評価する。放射線技術科のスタッフは大西技師長1名で、CT、MRIから一般撮影まですべての検査を行っている。CTの検査件数はAquilion Lightning導入後に増加しており、現在は月60〜100件を撮影する。撮影部位は頭部が6割以上を占め、そのほか胸腹部や下肢などの血管系の検査となっている。
Aquilion Lightningへの期待を青木院長は、「脳神経領域では多くの場合、MRIがファーストチョイスになりますが、閉所恐怖症やクリップ留置後などMRIでは検査ができない患者さんがいます。そういった場合に感度が良く血管がしっかりと描出でき金属アーチファクトを除去する“SEMAR”などを用いた検査が可能であれば、CTで評価することができます。また、転移性脳腫瘍が見つかることも多く、その場合はその原因となる疾患を含めた検査を行ってから他院に紹介することで、患者の経済的、時間的負担を低減できます」と説明する。
Aquilion Lightningでは、金属アーチファクトを除去する画像再構成技術であるSEMARが標準搭載されている。同クリニックでは、脳動脈瘤のクリッピング術後のフォローアップの際にSEMARを用いた検査を行っている。大西技師長は、「クリップ留置後の検査では、金属アーチファクトの影響で観察可能な画像が得られにくかったのですが、SEMARによってアーチファクトが軽減され評価が可能な画像が提供できるようになりました。義歯の種類や位置によって、アーチファクト低減が異なるため、今後、撮影方法の検討を行う予定です」と述べる。また、頭部造影CTでは、単純と造影撮影の差分から画像を再構成するサブトラクション撮影を行っている。大西技師長は、「Aquilion Lightningでは高い精度のサブトラクションにより、WSでは処理がしにくい後頭蓋窩領域の骨除去が可能で良好な画像が得られています」と述べる。
Aquilion Lightningには被ばく低減技術として“AIDR 3D Enhanced”が搭載されているが、同クリニックでは、AIDR 3Dについてはあらかじめ撮影部位ごとにプロトコールに組み込まれており、ほぼ全例で適用されている。シングルCTの時に比べて低被ばくでの撮影が可能になった。造影剤については使用量の変更はないが、撮影時間が短縮されたことで今後削減することも可能ではと大西技師長は期待する。
さらに、同クリニックでは頭部のCTAのデータを用いて、ステレオ視が可能な立体鏡を使って患者自身が立体的に血管像を見られるサービスを提供している。青木院長は、「裸眼の立体視は訓練しないと難しいですが、立体鏡を使えば患者さんにも簡単に血管を立体的に見てもらえます。患者さんも納得しやすく、レベルアップしたインフォームド・コンセントが可能です」とねらいを説明する。
■Aquilion Lightningによる臨床画像
青木院長は専門クリニックでのCT導入について、「高齢化が進むにつれ、地域の中で専門領域だけでなく、患者さんの症状や療養環境にも配慮したきめ細かい診療の提供が必要だと実感しています。今後、脳神経外科を専門とする開業医は、クリニックといえども専門領域だけではなく全身を把握した広い知識と、さまざまな疾患の検査に対応可能なCTは必要不可欠だと思います」と述べる。また、同クリニックでは、警察からの依頼でオートプシー・イメージング(Ai)にもAquilion Lightningを活用している。青木院長は、「地域では独居の高齢者が増え、死因究明ためのAi の依頼が増えています。Aquilion Lightning ではボア径が広くご遺体の撮影にも素早く対応できます」と述べる。
脳神経外科領域のみならず幅広い領域で地域に貢献する同クリニックの診療にAquilion Lightningの貢献が期待される。
(2016年6月14日取材)
青木脳神経外科形成外科
高知県高知市高須新町1-6-26
TEL 088-885-3600