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Aquilion PRIME/Beyond Editionの初期使用経験

左より西村正樹、松原紀宏(筆者)、東修平、一原正樹

左より西村正樹、松原紀宏(筆者)、東修平、一原正樹

 

当院では2013年3月に、CTをAquilion64(64列)からAquilion PRIME/Beyond Edition(PRIME)に更新し稼働を開始した。武田病院グループの基幹病院の1つである当院は、総病床数394床(うちICU・CCU10床、SCU6床)あり、年間4573件(2012年度実績)の救急車を受け入れている。また、京都駅前という立地もあり、観光シーズンには修学旅行生や外国人観光客の診療も行い、頭部打撲から心疾患まで多種多様なCT検査を1日約50件実施している。反面、当院にはCTが1台しかなく、1日の検査のうち、約4割が当日至急検査であるため、検査待ち時間が1時間前後になることもしばしばである。今回のCT更新には、“検査スループットの向上”という要望があり導入に至った。本稿では、導入後約3か月の短期間ではあるが、初期使用経験について紹介する。

[外観(ガントリ)]

図1 64列で使用していたエポキシ樹脂にPRIMEを設置した状態

図1 64列で使用していたエポキシ樹脂に
PRIMEを設置した状態
矢印部分の面積だけ64列よりコンパクトに
なっていることがわかる。

PRIMEの特徴はいろいろあるが、特に大きいのが780mmワイドボアになったことである。当院のCT室は狭いため、基本的にHeadFirstで撮影をしており、持続点滴や挿管チューブのガントリ奥側への移動が楽にできる。救急時のバックボード、頸椎術後の固定具の使用や、仰臥位不可時の側臥位での撮影などの際に、ガントリに当たりにくくなった。64列よりも開口径がたった60mm広くなっただけだが、ガントリから感じる圧迫感がまったく違い、閉所恐怖症の方も安心して検査を受けられるのでは、といった印象を受けた。また、寝台を左右に42mmずつ移動できるので、被写体を回転中心に寄せることで分解能が向上するだけでなく、救急などの患者さんの再ポジショニングが減り、検査スループット向上にも寄与している。
外観は高さ、横幅がコンパクトになっており、当院のような狭いCT室(3980mm×4800mm)にも導入が可能な大きさとなっている。図1はPRIME導入後の写真だが、前装置の64列で使用していたエポキシ樹脂がはみ出し、横幅がかなりダウンサイジングされたことがわかる。また、アイソセンターが下がり、ポジショニング時の寝台が低くなったことで、背の低い技師や女性技師にはポジショニングがしやすくなり、時間も短縮されている。

[画像再構成時間]

画像再構成時間は体感でも実感できるほど速くなっており、64列との比較でも、明らかに短くなっていることがわかる(図2)。また、逐次近似応用再構成法(AIDR 3D)を使用しても再構成時間は変わらないため、ルーチン検査においてもAIDR 3Dを使用して、被ばく低減に努めることができる。従来では、心臓CTなどの心電同期スキャンの画像再構成で、急激な心拍変動などによりマニュアルで最適心位相を探さなければいけない場合は、各位相を1スライスずつ再構成して見つけ出していたが、PRIMEでは再構成時間が短くなり、心臓の全範囲を再構成しても撮影に負荷がかからず、すぐに次の検査を実施でき、心臓CTの検査当日診察にも対応できている。撮影後、すぐに画像確認を可能とする“InstaView”が搭載され、体動や息止め不良の可能性がある場合は即座に確認することができる。このような再構成時間の短縮は、検査スループットの向上に直結している。

図2 0.5mm厚/0.5mm間隔で500枚の画像を再構成した時間比較(sec)

図2 0.5mm厚/0.5mm間隔で500枚の画像を再構成した時間比較(sec)

 

[インターフェイス]

インターフェイスは、従来の64列とほぼ変わらず、導入当初よりすんなりと受け入れられ、すぐに操作できた。また、ガントリに新しく“i-station”が搭載され、視覚的に息止め等の指示が出るので難聴の患者さんを撮影する時や、また、検査説明時にタッチパネルで音声テストができるのでかなり便利になった。

[高ビューレート]

PRIMEは、64列に比べ、ビューレートが1800view/secから2572view/secに向上している。管球1回転当たりのビュー数は、0.35sec/rotで900view(64列:600view)、0.5sec/rotで1200view(64列:900view)となり、0.35sec/rotでも高ビューレートで撮影できる。図3はCT設置時試験において、Catphan528を用い900viewになる同一条件下にて比較した結果である。profile curveを比べても遜色なく、64列で0.5sec/rotで撮影を行っていた部位は、0.35sec/rotでの高速撮影が可能で、息止めができない患者さんでも静止画像を得ることが可能となっている。図4は救急搬送され、息止め不可であった臨床例であるが、0.35sec/rot、high pitch(BP:1.388)の高速撮影を用いることにより、肺尖から骨盤までを4.3secで撮影し、呼吸性移動のない画像を提供することができた。

図3 同一view数(900view)での64列との比較

図3 同一view数(900view)での64列との比較

 

図4 0.35sec/rot、high pitch(BP:1.388)で高速撮影した臨床例(腸閉塞)

図4 0.35sec/rot、high pitch(BP:1.388)で高速撮影した臨床例(腸閉塞)
救急搬送され、息止め不可であったが呼吸性移動のない画像を提供することができた
(撮影時間:4.3sec)。

 

[被ばく低減]

心臓CTにおいては、積極的に心電同期FlashScan(FlashScan)やAIDR 3Dを使用して被ばく低減が行える。図5は、心拍数ごとに水ファントムをFlashScanとCTA modulationで撮影し、各心位相で再構成した画像のSD値を表したグラフである。FlashScanではCTA modulationに比べ、設定心位相のみに間歇X線曝射されており、被ばく低減されていることがわかる。図6はFlashScan使用の臨床例で、間歇X線曝射によるズレは見られず、明瞭に冠動脈の連続性を見ることができる。

図5 心電同期FlashScanとCTA modulationの比較

図5 心電同期FlashScanとCTA modulationの比較
水ファントムを同条件で撮影し、SD値(反転)によってX線出力を推定

 

図6 FlashScan使用の臨床例(HR:50bpm、♯7stenosis)

図6 FlashScan使用の臨床例(HR:50bpm、♯7stenosis)
a:VR、b:CPR
間歇X線曝射によるズレは見られず、明瞭に冠動脈の連続性を見ることができる。

 

また、AIDR 3Dはprospectiveに使用して被ばく低減できるが、retrospectiveに使用することでアーチファクトの低減も可能である。図7は左腕拳上不可症例だが、original画像は体幹部に腕からのストリークアーチファクトが認められるが、AIDR 3Dの強度を上げていく(下側)に従い、アーチファクトが軽減されているのがわかる。

図7 左腕拳上不可症例でのAIDR 3D画像比較

図7 左腕拳上不可症例でのAIDR 3D画像比較
a:SCANO、original画像(FC13)
b:AIDR 3D画像
下側ほどAIDR 3Dの強度が強く、アーチファクトが軽減されているのがわかる。
c:original画像からAIDR 3D画像をsubtractionした画像
AIDR 3Dの強度が上がるにつれ、軽減したアーチファクトが増えていくことがわかる。

 

[経営面から見た導入経緯]

今回の導入にあたり、先述した1日50件という件数が実施できる高スループットで、当院の狭いCT室に入るコンパクトでありながら、コストパフォーマンスの良いCTを検討した。PRIMEは心臓CTやCT perfusionなどの先進的な検査を実施可能にし、トータルワークフローを短縮させ、われわれ技師の1件1件の検査に対する余裕を生み出した。さらに、撮影後すぐに画像が見られるという効率性や、検査スループット向上の生産性は、PRIME導入後、約100件/月の検査数増加につながっている。また、導入から現在まで、検査を止めなければいけないような大きなトラブルもなく、初期故障率0%で安定して稼働している。

[最後に]

PRIMEは当院のように、CTが1台しかなく、検査数も多く、さまざまな部位の検査がある病院にとっては、診療の幅を格段に広げてくれる装置である。今後はますますの被ばく低減や検査時間の短縮など、CTが患者さんに優しい検査になるように努力を続けていきたい。Aquilion PRIME/Beyond Editionは、その一助となる装置であり、CTを使う側にとっても、撮影される側にとっても優しい装置であると言える。

 

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