次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2018年6月号

No. 194 整形単科小規模病院におけるAZE VirtualPlaceの活用

中島 幸治/山口  永/野村 優香(医療法人米田病院放射線科)

はじめに

当院は1951年に医療法人を開設して以来67年,愛知県名古屋市西区で運動器医療およびスポーツ整形を中心に診療を行ってきた整形外科の専門病院である。許可病床数54床の小規模病院であるが,腰椎,膝関節,股関節,手関節〔近年は特に腰椎分離症,アキレス腱断裂,初期変形性関節症(OA)〕を扱う経験豊富な医師が多く,この地域や県外でも知名度は高い。それ故に画像診断は重要で,1.5T MRI2台,CT1台,DR装置,全身用DXA装置,一般撮影装置といった充実した画像診断装置があり,医師の要望や患者の期待に応えるため診療放射線技師は切磋琢磨している。

ワークステーションの導入

整形外科単科で画像処理にワークステーションを導入している施設は全国的にも少ないようだが,MRIやCT装置付属の画像解析ソフトウェアで行う画像処理は,multi planar reconstruction(MPR)や簡易3Dが大半であり,操作性,次の検査への影響,処理速度,再現性などに限界がある。そこで当院は,医師の要望する画像処理に応えるため,2012年12月に「AZE VirtualPlace」(AZE社製)を導入した。現在は,腰椎分離症の再現性あるMPR,前十字靭帯再建術後の骨孔確認の3D,アキレス腱断裂における腱の体積の評価,初期OAのT2マップなど,臨床の現場で活用するだけでなく学会発表にも利用している。本稿では,前十字靭帯再建術の3D解析と,アキレス腱断裂における腱の体積の評価を紹介する。

症 例

1.前十字靭帯断裂
バスケットボールにてリバウンドボールキャッチの着地時に左膝関節をひねって受傷し,前十字靭帯断裂と診断された。その後,半月板断裂も合併したが,大学進学に当たり競技レベルでバスケットボール継続を希望されたため,前十字靭帯再建術と半月板縫合を施行した。
図1は,前十字靭帯再建術後の3D-CT画像である。本画像は大腿骨・下腿骨・膝蓋骨の骨表面を透かしたものに,抽出した骨孔と固定金具に色を付けマルチレイヤー表示したものである。
骨孔の描出は,WWを下げて骨と骨孔との差が明瞭になるような条件に合わせ,骨孔の走行を順に領域追加抽出する。大腿骨・下腿骨の骨表面は,もともとの骨3Dからマスクを4ボクセル縮小させた骨3Dを引き算することで得られ,オパシティを下げることで透かした3Dを作成する。骨表面を透かし,抽出した骨孔に色を付けることで骨内部の移植腱の走行が明瞭となり,患者にも理解しやすい画像となっている。
経過を追うごとに骨孔が抽出しづらくなるが,骨孔を描出する際にWW,WLを微調整し,骨と骨孔の差を可能なかぎりはっきりさせることで抽出できる。
骨孔作成位置や固定金具設置位置の術後評価では,骨内での骨孔方向まで確認できるため,手術手技の安全性や確実性の向上に寄与しており非常に有用である。

図1 前十字靭帯再建術後3D-CT

図1 前十字靭帯再建術後3D-CT

 

2.アキレス腱皮下断裂
外傷によるアキレス腱皮下断裂の症例である。新鮮アキレス腱皮下断裂は,ほとんどが運動中に発生したもので,激しい動きの最中に断裂音を聞いて足関節後面に鋭い痛みを経験することが多い。アキレス腱皮下断裂に対する治療法としては,断裂した腱を縫合する手術療法と,腱を縫合せずギプスなどで固定する保存療法がある。新鮮アキレス腱皮下断裂の治療は手術療法が主流であったが,手術療法と早期加速リハ保存療法の間に再断裂率の差はないというエビデンスレベルの高いメタアナリシス1)が示されたことで,近年では欧米を中心に保存療法が優勢となっている。一方,保存療法の一部で手術療法より治療成績が劣るとのエビデンスレベルの高いランダム化比較試験2),3)も見受けられる。
当院ではアキレス腱皮下断裂の保存療法に力を入れ,ほとんどの患者に対して保存療法を行っており,日本整形外科学会をはじめ主要な学会で発表なども行っている。経過観察のためMRIは定期的に撮像しており,MRIやエコーにてアキレス腱皮下断端が接触していると確認できた肢位(足底の角度)でギプスを作成し,固定具へ移行する時期などを決定している。
MRIは,足底の角度など再現性を重視して撮像している。AZE VirtualPlaceによるアキレス腱計測では,再現性を高めるためMR画像の矢状面を使用して計測データの位置決めを行う(図2)。アキレス腱付着部から近位に向かって100.0mm内にある横断面のすべてのスライスのアキレス腱部をAZE VirtualPlaceにて選択し,処理する(図3)。このような解析によってMRIやエコーでは簡単に比較できないアキレス腱の体積や面積(図4),太さなどの変化を前回と比較し経過を追っている。当院では受傷時より,4か月・6か月・1年経過時点でアキレス腱の体積や面積を計測している4)。4・6か月経過時で腱は肥厚し,1年経過時で腱体積は減少傾向にあるということがわかっており,腱断裂修復過程で腱は肥厚してくると考えられる。また,患側と健側の差は顕著である。

図2 計測データの位置決め 再現性を高めるため,アキレス腱の体積を計測する位置決めを行う。アキレス腱付着部から近位に10cmと決め,その範囲内にあるスライスからアキレス腱部のみを選択する。

図2 計測データの位置決め
再現性を高めるため,アキレス腱の体積を計測する位置決めを行う。アキレス腱付着部から近位に10cmと決め,その範囲内にあるスライスからアキレス腱部のみを選択する。

 

図3 アキレス腱部選択画像 計測するスライスを決め,アキレス腱部(緑色)を目視にて選択していく。

図3 アキレス腱部選択画像
計測するスライスを決め,アキレス腱部(緑色)を目視にて選択していく。

 

図4 アキレス腱計測データ 選択したアキレス腱部のみの体積や,それぞれのスライスの面積を計測することができる。信号強度の範囲を決めると,選択したアキレス腱部の中でも,信号範囲内にあるアキレス腱部のみの体積や面積を計測することができる。

図4 アキレス腱計測データ
選択したアキレス腱部のみの体積や,それぞれのスライスの面積を計測することができる。信号強度の範囲を決めると,選択したアキレス腱部の中でも,信号範囲内にあるアキレス腱部のみの体積や面積を計測することができる。

 

まとめ

当院は早期検査,早期診断,早期治療を強みとしている。1.5T MRIを2台配置し,新患の半数を当日対応している。CT検査やその他検査においても検査結果は早急に求められることがほとんどである。AZE VirtualPlaceは,臨床的価値が高い処理を特に難しい操作を行わず簡便に行える画像解析ソフトウェアであり,当院の画像診断の質と速さへの貢献度は大きい。

●参考文献
1)Soroceanu, A., et al.:Surgical versus nonsurgical treatment of acute Achilles tendon rupture;A meta-analysis of randomized trials. J. Bone Joint Surg. Am., 94, 2136〜2143, 2012.
2)Lantto, I., et al.:A prospective randomized trial comparing surgical and nonsurgical treatments of acute Achilles tendon ruptures. Am. J. Sports Med., 44, 2406〜2414, 2016.
3)Nilsson-Helander, K., et al.:Acute Achilles tendon rupture;A randomized, controlled study comparing surgical and nonsurgical treatments using validated outcome measures. Am. J. Sports Med., 38, 2186〜2193, 2010.
4)永田和平,米田 實・他:新鮮アキレス腱断裂保存療法にて早期加速リハプロトコールを施行した患者の腱の経時的変化について. 第27回日本臨床スポーツ医学会学術集会, 2016.

【使用CT装置】
ECLOS 16列(日立社製)
【使用MRI装置】
MAGNETOM Avanto 1.5T(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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