次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2017年11月号

No. 187 当院の循環器分野におけるAZE VirtualPlace使用経験

坂本 和翔(医療法人社団高邦会 福岡山王病院放射線室)

はじめに

2009年5月に開院した当院は,医療法人社団高邦会グループの一員であり,福岡市近郊の地域医療を支えている。国内のCT検査の件数は年々増加傾向にあり,当院では特に循環器分野での件数増加が著しい。この背景にはCT装置の性能向上もあるが,画像作成や解析などを行うワークステーションの性能向上も大きく寄与していると考える。当院は開院当初より「AZE VirtualPlace」(AZE社製)を使用しており,2016年10月に東芝メディカルシステムズ社製 320列CT「Aquilion ONE」導入とともにAZE VirtualPlaceのバージョンアップも行った。本稿では,この1年間の循環器分野におけるAZE VirtualPlaceの使用経験をまとめる。

当院の循環器分野のCT検査ワークフロー

当院では,冠動脈CT撮影の際にカルシウムスコアの撮影を行っていない。この理由は,高い解析値であっても冠動脈サブトラクション処理を行うことで冠動脈解析を可能にしているからである。その代わりに,造影剤使用前に胸部から臍部まで単純撮影を行い,本スキャンの位置合わせや,胸部や肝臓などの読影とともに内臓脂肪測定を行っている。また,心臓に疾患や違和感がある患者の中には全身血管に異常が見られることがあり,必要に応じて冠動脈CTと全身血管精査を一連の検査として一度に撮影している。
撮影後はワークステーションを使用して画像解析し,診療放射線技師が一次読影まで行う。検査後の当日診察を第一に考え,撮影から解析・一次読影終了まで1〜2時間を目標とし,撮影から診察までのスループット向上に努めている。1人の患者に対して内臓脂肪測定,冠動脈VR画像作成,冠動脈解析,一次読影レポート作成,全身血管VR画像作成を行うことが多く,この作業を技師が1人で行っている。そのため,多くのアプリケーションを同時に操作できることが望まれるが,AZE VirtualPlaceはアプリケーションタスクを最大4つまで開くことが可能であり,同時に解析やVR画像作成を行うことができる(図1)。

図1 アプリケーションタスク機能

図1 アプリケーションタスク機能

 

内臓脂肪測定

近年,メタボリックシンドロームと動脈硬化の関係性について多くの情報が世の中に浸透し,関心が高まっている。冠動脈CT画像は,医療従事者の目で見ると石灰化やプラーク,それに伴う狭窄などを把握することが可能であるが,患者にとって画像の理解は容易でない。そこで役に立つのが,生活習慣改善指導を行う際の内臓脂肪測定のレポートである。AZE VirtualPlaceの内臓脂肪測定アプリケーションで作成したレポートは,実際の画像と測定結果がわかりやすいレイアウトとなっており,主治医にも患者にも喜ばれている。

冠動脈解析とVR画像作成

AZE VirtualPlaceの“新CT細血管解析”アプリケーションには,ボリュームデータを開くと,心筋,大動脈,右冠動脈,左冠動脈を認識し,VR画像作成やCPR画像作成まで行う自動解析機能がある。また,AZE VirtualPlaceには予約機能が搭載されており,新CT細血管解析アプリケーションを予約すると,ほかのアプリケーションを使用している間にバックグラウンドでVR画像作成とCPR画像作成が行われ,ワークリスト保存される。この機能はスループット向上に大きく役立っている。
現在,レポート作成には新CT細血管解析アプリケーション内のレポーティングシステムを使用している。このレポーティングシステムは,実際に画像を作成し動かしながら,石灰化やプラーク,狭窄率などの入力が可能であり,FileMakerを使用する場合と比べ,別端末や回線などの用意や,FileMaker構築などの面倒な手間が一切必要ないというメリットがある。また,初期設定されている文言もメーカー側で変更可能な部分があり,ユーザーの要望に可能なかぎり対応してくれる。
curved/straight MPRは事前に任意の角度・方向・枚数を登録可能であり,ワンクリックで作成,DICOM保存される。保存後はDICOMシリーズごとにRCAやLAD,LCXなど名称を変更することでPACS上のサムネイルに名称を表示することができ,主治医が電子カルテで画像を確認する際に素早く選択できる。

全身血管精査

冠動脈疾患を有する患者は末梢動脈疾患(PAD)を有することが多く,当院では冠動脈撮影の半数近くで冠動脈撮影と同時に全身血管撮影を行っている。しかし,それに伴い造影剤量と被ばく線量が増加するため,撮影プロトコールや造影剤注入プロトコールの改善を行っている。冠動脈と全身血管を分けて撮影するのではなく,一連の流れで一度に撮影することで,少量の造影剤追加で双方の撮影を可能にし,冠動脈撮影で使用するニトログリセリンの効果が効いている間に全身血管が撮影可能であるので,診断に大きく役立っている。
精査としては,3DアプリケーションでVR画像作成とMIP画像作成を行い,必要があれば狭窄・閉塞部に対してCPR表示し,解析を行っている。慢性完全閉塞病変(CTO)に対しては,VR画像の正常血管とCTO血管に違う色付けを行い,手術支援画像としている。

その他血管作成(静脈系)

血管系のCT検査では静脈系に対しても力を入れている。頭部領域においては,メインの静脈洞の描出はもちろんのこと,錐体静脈洞,錐体静脈,小脳テント静脈洞,各架橋静脈などのVR画像作成(図2)もルーチンワークであり,循環器領域では総腸骨静脈や外内腸骨静脈,表在静脈などのVR画像作成を行っている。血栓後遺症症候群(PTS)患者の器質化血栓による外腸骨静脈狭窄に対する血管内治療(EVT)でのステント留置を経験し,2016年より術前の手術支援画像と術後のフォローアップ画像作成(図3)を行っている。

図2 錐体静脈洞,錐体静脈,小脳テント静脈洞,架橋静脈などの描出

図2 錐体静脈洞,錐体静脈,小脳テント静脈洞,架橋静脈などの描出

 

図3 PTS患者の下肢静脈狭窄に対するEVT支援画像(術前・術後)

図3 PTS患者の下肢静脈狭窄に対するEVT支援画像(術前・術後)

 

まとめ

今回,AZE VirtualPlaceの使用経験についてまとめてみると,ワークステーションのあり方を考えるきっかけともなった。特に,冠動脈解析や大腸CT解析において,ワークステーションは元画像が持つ情報を最大限に抽出してくれる。その一方で,サーバに画像を転送するまでに撮影条件の調整や,機器や画質のQA/QCなどはあるものの,ワークステーションでの作成画像についての評価は聞いたことがない。ワークステーションが必須になった今,われわれユーザーは作成画像に責任を持ち評価を行う必要があり,メーカーへのフィードバックも重要である。今後もワークステーションの向上とともに地域医療に貢献していきたい。

〈謝辞〉
AZE VirtualPlaceのバージョンアップから,日常業務,AZE展,INNERVISION誌執筆などに当たり,株式会社AZEの関係者の方々には迅速な対応と多大なご指導をいただき,深謝いたします。

【使用CT装置】
Aquilion ONE(東芝メディカルシステムズ社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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