次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2017年10月号

No. 186 AZE VirtualPlace標準機能を使った外傷CTでの効果的な3D画像作成法

阿部  駿(JA秋田厚生連秋田厚生医療センター放射線科)

はじめに

全身外傷などの救急症例において,骨折箇所を瞬時に判断しやすい3D画像は有用であり,よりわかりやすい3D画像の提供は迅速かつ正確な診断に貢献できる。本稿では,ワークステーション(以下,WS)で外傷CTの3D画像を作成する上で有用な,マスク画像データを用いた高分解能VR画像と頭部領域のsurface MIP画像について紹介する。

マスク画像データを用いた高分解能VR画像

VR画像で微細な骨折を検出するには骨用関数で作成する必要があるが,体幹部などは骨用関数を使用するとノイズが多くなり,作成時間が長くなる。そのため,限られた時間で作成しなければならない救急症例は,処理が簡単で,短時間で作成可能な標準関数を適用しているのが現状である(図1)。
「AZE VirtualPlace」(AZE社製)の標準機能にあるマスク画像データを活用することで,標準関数の処理の簡便さを維持したまま,短時間で骨用関数の高分解能VR画像が作成可能となる(図2)。

図1 標準関数(a)と骨用関数(b)を3Dで立ち上げたときのノイズの違い

図1 標準関数(a)と骨用関数(b)を3Dで立ち上げたときのノイズの違い

 

図2 標準関数と骨用関数のVR画像の比較 a:鼻骨骨折症例 b:肋骨骨折症例 c:骨盤骨折症例

図2 標準関数と骨用関数のVR画像の比較
a:鼻骨骨折症例 b:肋骨骨折症例 c:骨盤骨折症例

 

作成では最初に,スライス厚,間隔,FOVが同一の標準関数と骨用関数のボリュームデータを準備する。次に,標準関数のボリュームデータを3Dで立ち上げ,目的の骨の抽出を行う。抽出後,画面右下にある共通メニュー「特殊」ボタンをクリックし,「保存」の「マスク画像」をクリックする。マスク画像データが入った画像を名前を付けて保存する(図3)。骨用関数のボリュームデータを立ち上げて「特殊」ボタンをクリック,「開く」の「マスク画像」をクリックし,先ほど保存したマスク画像を開くと,骨用関数のボリュームデータに標準関数で作成したマスク画像データが展開され,高分解能VR画像が作成できる(図4)。
マスク画像データを活用することで,普段CT業務や3D画像作成をしていないWSの操作に不慣れな診療放射線技師でも,容易に高分解能VR画像の提供が可能となる。また救急症例だけでなく,血管の石灰化や細い血管の描出など,日常のVR画像作成にも幅広く活用できる。

図3 マスク画像データの保存

図3 マスク画像データの保存

 

図4 マスク画像データの展開

図4 マスク画像データの展開

 

頭部外傷CTでのsurface MIP画像

頭部においても高分解能VR画像で小さい骨折を描出できるが,一部の線状骨折はWSのスムージング処理などの影響により描出されにくく,骨折が見落とされる可能性がある(図5)。
線状骨折は厚いスライスを平行移動するslab MIP画像ではっきりと見ることができるが,骨折線とスラブの角度により,骨折線の描出に差が出る(図6)。そのため,骨表面に合わせてスラブの角度が変化するsurface MIP画像が線状骨折を見るのに最適であり,VR画像やslab MIP画像で描出しにくい小さな骨折線をより鮮明に描出でき,線状骨折のスクリーニングに有用である(図7)。

図5 VR画像とsurface MIP画像の骨折線の描出能の違い a:側頭骨骨折症例 b:後頭骨骨折症例

図5 VR画像とsurface MIP画像の骨折線の描出能の違い
a:側頭骨骨折症例 b:後頭骨骨折症例

 

図6 骨折線とスラブの角度による骨折線描出の違い

図6 骨折線とスラブの角度による骨折線描出の違い

 

図7 Slab MIPとsurface MIPの違い

図7 Slab MIPとsurface MIPの違い

 

画像作成は,最初にボリュームデータを3Dで立ち上げ,各種レンダリングモードからMIP画像を選択する。ボリュームクリップのカットプレーンを選択し,プレーンの厚さ(スラブ厚)を70mmとし,「向きの変更時のクリップ向きの正規化」のチェックボックスをオンにする。カットプレーン断面を頭部冠状断に平行になるようにし,頭蓋骨前面の中央正面に配置し,ムービー作成の自由回転の追加ボタンを押す。位置移動の自由回転で右に45°回転し,MIP画像が画面の中央になるように,アキシャル画像からカットプレーン断面の中心点を平行移動させ,画像をムービー作成の自由回転に追加する。この手順を7回繰り返し,ムービー作成することで横回転のsurface MIP画像を作成できる。画像作成には3分程度時間がかかるため,救急時には,スラブを手動で頭蓋骨に合わせ,骨折病変を発見した場合に画像を保存する。頭蓋骨全体を1分程度でスクリーニングできるので,ほかの画像作成時間に影響を及ぼさない範囲で小さな骨折の見落としを減らすことが可能となる。しかし,surface MIP画像も万能ではなく,凹凸の変化はVR画像が見やすいので,骨折診断にはVR画像,surface MIP画像の両方の作成が必要である(図8)。

図8 VR画像(a)とsurface MIP画像(b)の骨折線と凹凸の描出能の違い

図8 VR画像(a)とsurface MIP画像(b)の骨折線と凹凸の描出能の違い

 

まとめ

外傷CTの3D画像作成は,多くの施設で診療放射線技師が携わっている業務である。マスク画像データを用いた高分解能VR画像やsurface MIP画像は,特殊なソフトウェアを必要とせず,AZE VirtualPlace標準機能で行えるので,どの施設でも作成可能である。われわれ診療放射線技師が救急症例や日常業務でWSを効果的に活用し,よりわかりやすい3D画像を提供することで,画像診断の質の向上に貢献できると考える。

【使用CT装置】
SOMATOM Definition Flash(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

TOP