次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)
2015年10月号
No. 162 乳房再建腹直筋穿通枝皮弁法におけるCT細血管解析を用いた下腹壁動脈穿通枝の描出方法
大西 宏之/山本 裕子(王子会神戸循環器クリニック放射線技術科) 福家 啓起(王子会神戸循環器クリニック循環器内科)
はじめに
乳がん切除後の乳房再建を腹直筋穿通枝皮弁法で行う症例においては,臍周囲に存在する下腹壁動脈から分枝する穿通枝動脈(以下,穿通枝)の位置,太さを術前に把握しておくことが大変重要である。また,穿通枝の本数によっては移植する穿通枝を術中に見誤る可能性があり,画像上に描出されたすべての穿通枝を同定し画像構築することで,安全な再建を行うことができる。
画像作成における問題点
従来の作成方法では,1本の穿通枝を描出,作成することは大変な労力を要した。その理由として,画像作成では膨大なデータ(約700枚)から穿通枝を同定し,リージョングローイングなどの機能で穿通枝の抽出を行うが,良好に抽出できるのは太い穿通枝や末梢血管まで十分な造影効果が得られた場合のみであり,それ以外の条件では,穿通枝の同定から描出までマニュアルで行わなければならず,大変長い作成時間が必要であった。
CT細血管解析の応用
「AZE VirtualPlace 雷神」(AZE社製)の“CT細血管解析”は,冠動脈を解析するためのソフトウェアであるが,これは心臓画像以外にも適用することが可能である。このソフトウェアの利点は,始点を設定し血管を同定しながらトレースすることで,抽出とマスクの作成ができることである。そのため,容易に血管の三次元画像を作成することができる。
CTA撮影方法
本検査においては,下腹壁動脈のみならず内胸動脈,胸背動脈の走行を確認する必要があるため,撮影範囲は胸腹部とする。造影剤は高濃度造影剤を使用し,注入速度3.5mL/sで注入している。撮影タイミングは,総腸骨動脈レベルの被写体の外側に関心領域を設定し,造影剤の到達と造影濃度を目視で確認した後,尾頭方向で撮影を開始している。また,穿通枝を目的としているため,循環器内科医の協力の下,禁忌事項がないことを確認した上で亜硝酸スプレーを舌下噴霧して撮影を実施している。
画像再構成は,腹直筋を中心にFOV200mm程度で恥骨から鎖骨までをスライス厚1mm,再構成スライス間隔0.8mmで行い,AZE VirtualPlace 雷神へ転送している。
穿通枝の抽出
AZE VirtualPlace 雷神での穿通枝の抽出は,以下の手順で行う。まず,画像をCT細血管解析に取り込み,“解析モード”をマニュアルで実行する。次に,“大動脈抽出”では膀胱辺りに仮想点を設定する(図1)。“細血管抽出”は,左右総腸骨動脈から分岐している下腹壁動脈におのおの数点打ち,自動追跡を行う。自動追跡で下腹壁動脈本幹が抽出された後,穿通枝をマニュアルで抽出していく。本ソフトウェアでは各断面が1画面で表示されているため,同定しやすい断面で穿通枝にポイントを設定して抽出し,マスクの反映を行っていく。この方法であれば,皮下レベルの血管まで作成可能である。また,マスク反映した血管はカラー表示されるため,未抽出血管も一目でわかり,見落としなく作成することが可能である(図2,3)。
元画像で同定できるすべての穿通枝を描出した後,3Dレイヤーへ移動し,腹直筋のマスクを作成してマルチレイヤー表示させれば完成である。当院では,動脈の腹直筋内の走行や穿通枝の分岐がわかりやすいことから,MIP表示で行っている(図4)。
術前画像の作成
作成した画像は,形成外科医とともに筋膜から分岐する穿通枝と臍にポイントを描画し,術前画像として役立てられている。臍からの距離と個々の穿通枝との関係を事前に同定しておくことで,術中においても目的とする穿通枝を同定することが可能となる(図5)。
まとめ
穿通枝の抽出は,従来法では先の見えない画像処理であったが,本法を使用することで順序立てて処理を行えるようになり,大幅な時間短縮と良好な画像作成が可能となった。
【使用CT装置】
SOMATOM Definition AS+(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製)