次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2013年7月号

No.135 AZE VirtualPlaceと根本杏林堂インジェクタの連携によるインジェクタ情報の抽出および臨床応用

五味 達哉/長谷川 誠(東邦大学医療センター大橋病院放射線科)

●はじめに

CTの造影方法に関してはさまざまな検討がなされており,特に腹部ダイナミックCTについては使用する造影剤濃度,造影剤量および造影剤の注入速度に至るまで細かな検討が行われている。しかし,CTの造影検査におけるインジェクタ情報に関しては,いままでは検査時に画面に表示される時間-圧力曲線を目視するだけであった。また,CTの造影方法はさまざまな検討がなされているにもかかわらず,検査前に設定された造影剤の注入量および注入速度と,実際に投与された注入量と注入速度に相違があるかの検証が行われることはなかった。
加えて,読影の際には肝臓を含めた臓器,あるいは腫瘍の造影増強効果を判断する上で,実際に投与された造影剤注入量,注入速度を含めたインジェクタ情報を参照することは重要であると考える。
今回われわれは,インジェクタ情報を数値として取り出すシステム“InfoSync”を構築した。本稿では,その臨床応用に関する経験を報告する。

●方法

インジェクタ情報は,造影検査前に 「AZE VirtualPlace」(AZE社製)のInfoSyncに患者を登録するだけで,自動的にAZE VirtualPlaceに転送されるように設定した。また,インジェクタ情報は読影時に画像サーバを介してAZE VirtualPlaceに画像を呼び出すだけで参照可能である(図1)。転送されるインジェクタ情報は,造影剤名,造影剤濃度,設定注入速度,設定注入量,実注入時間,実注入量,0.25秒ごとの圧力,最大圧力である。

図1 インジェクタ情報のキャプチャ画像

図1 インジェクタ情報のキャプチャ画像

 

●インジェクタ情報の利用

図2 時間-圧力曲線 造影剤の濃度,種類の相違により時間-圧力曲線も異なる。

図2 時間-圧力曲線
造影剤の濃度,種類の相違により時間-圧力曲線も異なる。

インジェクタ情報は,エクセルデータとして抽出が可能である。また,このエクセルデータから時間-圧力曲線を作成できる(図2)。さらに,最大注入圧力,最大注入圧力到達時間,最初の時間-圧力曲線の立ち上がりにおける傾きなどを数値として算出することが可能である。

●臨床的意義

これまで造影CTにおける造影方法に関してはさまざまな検討がなされてきたが,インジェクタ情報の検討はほとんどなされていないのが現状である。これは,インジェクタ本体には詳細な情報があるにもかかわらず,その情報を数値として取り出すことができなかったためである。しかし,今回の方法を用いることで,詳細なインジェクタ情報を取り出し,検討することが可能となった。
インジェクタ情報には2つの側面があると考えられる。ひとつは診断に関する事項であり,他方は患者保護に関する事項である。
診断については,読影時にインジェクタ情報を参照することができれば,より詳細な読影が可能になることである。特に,腹部のダイナミックCTやCT angiographyの読影時に有用であると考えられる。これは,ダイナミックCTやCT angiographyでは,血管,臓器および腫瘍の造影増強効果が重要であり,その造影増強効果は造影剤の注入方法に依存するからである。臨床においては,CT検査をする放射線科医と読影する放射線科医が異なることが多いため,実際の造影方法を確認することは重要であると考える。
患者保護については,造影剤の副作用が挙げられる。造影剤の副作用は主に,非腎性のアレルギー性副作用と腎性である造影剤腎症に分けられる。アレルギー性副作用は投与した造影剤量に依存しないが,造影剤の種類に関係する可能性がある。いままでは使用した造影剤の種類は手入力により保存していたが,今回の方法を用いれば,現時点ではすべての造影剤が対応してはいないものの,シリンジに付随するデータをインジェクタ自体が自動で認識することが可能であり,この情報を転送および保存することができる。
造影剤腎症は,投与した造影剤および造影剤量に関連する疾患である。このため,インジェクタ情報を保存することは重要であると考えられる。
また,造影剤の血管外漏出を予防することも重要な事項である。いままでは造影剤の血管外漏出を,時間-圧力曲線の目視により確認して防いできたが,造影剤の種類により時間-圧力曲線が異なることがわかってきた(図2)。このため,使用する造影剤の種類により判断を変える必要があると考えられる。
今回は,対象とした症例数が少ないため,今後より多くの症例での検討が必要と考えられる。

造影CTにおけるインジェクタ情報の検討を行った。われわれが構築したシステムにより,インジェクタ情報の保存は可能であり,インジェクタ情報の解析もできることがわかった。今後より多くの症例の検討が必要であるが,造影剤注入方法の新たな展開が期待される。

【使用CT装置】
Aquilion CX(東芝社製)
【使用インジェクタ】
DUAL SHOT GX V(根本杏林堂社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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