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NVIDIAが広げる医療AIの可能性 
NVIDIA×RYOYO Medical Summit 2024から見えた生成AI開発の最前線ヘルスケアの未来を築くAIとGPUコンピューティングの最前線

2024-8-1

NVIDIA×RYOYO Medical Summit 2024

ディープラーニングにより本格化した第3次AIブームは,生成AIの登場によりさらに加速し,第4次AIブームと言われる新たなフェーズへと進んでいる。医療AIも社会実装が広がっており,SaMD(Software as a Medical Device)として医療機器の承認・認証を受けるだけでなく,2024年度診療報酬改定でも加算が新設されるなど,普及に向けた動きが活発化している。こうした状況の中,AIブームを牽引するNVIDIAのGPU製品を取り扱う菱洋エレクトロは2024年6月12日(水),NVIDIA×RYOYO Medical Summit 2024を開催した。医療AI開発の最前線について,NVIDIAと菱洋エレクトロのほか,ベンダーなどによる講演が行われた。今回は,6題の講演をダイジェストで誌上載録する。

講演1
ヘルスケア分野向けNVIDIA最新情報
山田 泰永 氏(エヌビディア ヘルスケア開発支援 シニアマネージャー)

山田 泰永 氏(エヌビディア ヘルスケア開発支援 シニアマネージャー)

NVIDIAはAI開発のエコシステムを構築
NVIDIAはGPUコンピューティングで世界の困難な課題に挑むことを目標として掲げている。売上高は2013年に約40億ドルであったが,2023年には約600億ドルに増加し,成長を続けている。
NVIDIAが提供するのはGPUだけでない。GPU製品を中心としたハードウェアとソフトウェアに加え,パートナーや開発者のネットワークによるエコシステムも構築して,幅広い産業に向けて効率的にAIを開発・実装するためのSDK(Software Development Kit)を用意している。近年,AIモデルは急速に進化しており,この状況に応えるべく,2024年3月に開催したGTC 2024において,最大20PFLOPS(ペタフロップス)のFP4演算能力を実現するGPU「Blackwell B200 GPU」や,AI開発のためのコンピュータ「NVIDIA GB200 NVL72」を発表した。これらの新技術により,従来数か月かかっていたAI開発を大幅に短縮化し,かつ省電力で行えるようになる。

生成AI開発のための「NVIDIA NIM」
さらに,急成長している生成AIを速やかに展開するためのソリューションとして,NVIDIA NIM(Inference Microservice)を提供している。NVIDIA NIMは,GPUに最適化した学習済AIモデルを場所を選ばずに簡単に推論配備し,標準的なAPI呼び出しで利用可能にする。多様なニーズに応えるため,ヘルスケア分野では医用画像,創薬などに向けたNIMを用意している。
NVIDIAは,これまでヘルスケアを重要分野と位置づけ投資してきた。生成AIについてはさらに重点的に注力しており,各種分野に向けて様々なプロダクトやソリューションを展開している。

創薬や医療,医療機器など目的に応じた開発環境を提供
ヘルスケア分野の生成AIについては,電子カルテデータからのサマリ作成,医用画像における臓器などのセグメンテーション,手術動画を基にした手術支援ロボットの自動化など,数多くのユースケースが考えられる。例えば,デジタルバイオロジーに生成AIを用いることで,創薬の研究開発を劇的に変えられる。すでに,アミノ酸配列からのタンパク質立体構造予測,ドッキング予測などの学習済AIモデルを使いやすいNIMとして公開しており,これを利用してバーチャルスクリーニングも可能だ。さらに,カスタムモデル開発のニーズに向けては,「BioNemo」フレームワークも提供している。
デジタルヘルスでは,米国のHippocratic AIが音声認識,音声合成,LLM,RAG,アバターの動き生成など,様々なNIMを組み合わせて活用し,先進的な患者サポートのサービスを開発している。同じく米国のConcertAIは,NIMを用いて生成AIによる臨床試験の効率化を図るなど,多数の企業がNIMの採用を発表している。一方,医療機関では,台湾の長庚記念病院国際医療センターが,臨床や研究においてNIMで開発した生成AIを活用している。
医療機器に関しては,従来の一般的なGPU活用に加えて,内視鏡や手術ロボットといったリアルタイム医療機器に向けた専用ハードウェアとソフトウェアの組み合わせである「NVIDIA Holoscan」を提供している。開発の容易性,低遅延処理,長期サポートなどがメリットとなる。また,今後の手術領域での生成AI活用に向けて,社内での研究開発も行っている。

生成AI開発を加速するNVIDIA NIM

生成AI開発を加速するNVIDIA NIM

 

講演2
世界に挑戦する日本の内視鏡AI
金井 宏樹 氏(AIメディカルサービス経営企画責任者兼製品プロジェクト統括責任者)

金井 宏樹 氏(AIメディカルサービス経営企画責任者兼製品プロジェクト統括責任者)

AIメディカルサービスは,「世界の患者を救う」をミッションに掲げて,AI技術で世界の内視鏡医療に貢献することをめざしている。2023年12月には,胃内視鏡検査画像から病変候補を検出する内視鏡画像診断支援ソフトウェア「gastroAI-model G」の製造販売承認を取得した。日本は内視鏡検査が普及しており,内視鏡医が多くてそのレベルも高く,質の高いデータが大量にあることから,内視鏡AIにおいても世界をリードできる立場にある。当社も海外への展開を進めており,全世界140以上の施設と共同研究などを行い,消化器領域の内視鏡AIの論文引用数は1位となっている。すでに,ブラジル,シンガポールでgastroAI-model Gを上市しており,今後の米国での展開をめざして拠点も開設している。

講演3
医療AIプロジェクトの成功の鍵 ~FastLabelが提供するデータ品質の向上方法~
上江田喜行 氏(FastLabel Partner Alliance Manager)

上江田喜行 氏(FastLabel Partner Alliance Manager)

FastLabelは2020年に創業したスタートアップである。AIデータプラットフォーム事業として,データマネジメントやアノテーション,MLOpsのためのツールを提供している。また,プロフェッショナルサービス事業では,データ収集・販売,生成,アノテーション代行,モデル開発・コンサルティングといったサービスを展開している。当社のAIデータプラットフォーム「FastLabel」は,AI開発に必要なデータ管理やアノテーション,学習,評価のための機能を,使いやすいUI・UXで提供する。AIによる自動アノテーションといった機能により,大幅に開発を効率化。データコストを70%削減して,開発期間を3か月から1か月へと1/3に短縮して開発生産性を向上した。さらに,AIの精度を向上させることが可能である。すでに,複数の企業がFastLabelを採用し,成果を生んでいる。

講演4
Jetsonを活用した高効率・高性能・低遅延システムソリューション
岩城  力 氏(東芝デベロップメントエンジニアリング デジタルイノベーショングループ チーフテクノロジスペシャリスト)

岩城  力 氏(東芝デベロップメントエンジニアリング デジタルイノベーショングループ チーフテクノロジスペシャリスト)

東芝デベロップメントエンジニアリングは,1998年から長きにわたりNVIDIAとリレーションシップを築いてきた。この実績を基に,NVIDIAの「Jetson」を用いたGPGPU(General-purpose computing on graphics processing units) Edge AIプラットフォームをタイムリーに,最短の開発工期かつ高品質で,ワンストップソリューションとして提供する。このプラットフォームは,NVIDIAソリューションを補完し,画像入力処理から推論,学習,出力までを高速化して,処理時間の短縮を図ることが可能となる。アプリケーション実装簡略化を実現する「DIT-J」は,画像入力の高性能GPU処理,低レイテンシー化,低メンテナンス性を提供するAPIで,アプリケーション仕様に合わせて柔軟に対応する。これら技術により,顧客課題や要求を解決している。

講演5
ケーススタディから見る医療分野の課題解決について
有浦 孝至  氏(菱洋エレクトロ ソリューション事業本部グループリーダー)

有浦 孝至  氏(菱洋エレクトロ ソリューション事業本部グループリーダー)

当社が医療分野で高い評価を受けているのは,医療機器で重要となる長期供給や,医療機関で使用するためのキッティングのノウハウを,豊富に有していることが理由の一つにある。また,顧客が求める製品,情報,サービスなどをそろえているほか,エンドユーザーとの接点を多く持っており,顧客・エンドユーザーから高い信頼を得ている。
NVIDIAとのリレーションシップも強化しており,2012年から医療機器向けのGPUの取り扱いを開始し,近年ではディープラーニング向け,さらに生成AI,オムニバース向けGPUなど取り扱いを拡大している。
また,エンドユーザー向けのキッティングにおいても,GPUなどの組み込みや動作チェック,OS・ドライバーのインストール,ライセンスの有効化,パラメータ設定などを,品質管理部門と連携して行っている。医療機関への納入の場合は,設置時間も限られているケースが多く,事前準備などを行い,現地で速やかに作業できるようにしている。
これらの具体例としては,2019年からAIメディカルサービスの開発やハードウェアの選定・提供,キッティング,納入,保守などを支援してきた。当社では今後も医療AIの普及に貢献していく。

菱洋エレクトロが医療分野で強い理由

菱洋エレクトロが医療分野で強い理由

 

講演6
生成AI時代のAI人材育成方法 ~800社の支援実績から見えた成功のポイントと課題~
中村 景子  氏(スキルアップNeXtマーケティングユニット ユニット長)

中村 景子  氏(スキルアップNeXtマーケティングユニット ユニット長)

スキルアップNeXtは,AIなどの先端領域の人材育成,組織開発支援事業を展開している。現在,生成AIが注目されているが,利用は進んでいない。当社は,この課題解決のために生成AIの活用を促進する包括支援サービスとして,「生成AI活用アクセラレーター」を提供している。このサービスは対話型生成AIの利用促進と生成AIプロダクト開発を目的としており,環境構築から利活用,検証・改善までをトータルでカバー。法的リスクに対応したコンサルティング支援,リスク可視化と改善策の提案も行う。さらに,本サービスでは,マイクロソフトの「Azure OpenAI Service」を用いた「RAG(Retrieval Augmented Generation)構築講座」や「AI知財・契約講座」「生成AIアイデアソン講座」,医療分野向けの「医療AI講座」も用意している。

 

NVIDIA Japan 各種お問い合わせ
https://nvj-inquiry.jp/