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放射線業務管理システム「ARIStation」 × 東北医科薬科大学病院ユーザビリティを追究したRIS「ARIStation」で実現する業務効率化と確かな情報共有─スムーズで安定したシステム連携のため画像診断・放射線部門システムをPSP製品で構築

2021-11-15

東北医科薬科大学病院

東北医科薬科大学病院は,画像診断・放射線部門システムにPSP製品を採用し,スムーズに連携するシステムを構築してきた。
医学部の新設に伴い病院機能が強化され,画像検査・読影の環境も変化しているが,放射線業務管理システム「ARIStation」により効率的な運用を実現している。ARIStationを中心としたPSPシステムの有用性について,放射線科の松浦智徳助教,放射線部の千葉浩生技師長,半田佐斗子技師に取材した。

松浦智徳 助教

松浦智徳 助教

千葉浩生 技師長

千葉浩生 技師長

半田佐斗子 技師

半田佐斗子 技師

 

医学部新設に伴い機能を強化し診療と人材育成で地域に貢献

2016年,東北薬科大学に国内で37年ぶりとなる医学部が新設された。附属病院は東北医科薬科大学病院へと改称するとともに病院機能の強化を図り,診療科の増設・医師の増員を進め,2019年には新大学病院棟(新館)が竣工,病床は600床へと拡大した。急性期・回復期を担う東北医科薬科大学若林病院と機能分担・連携しながら,急性期・高度急性期を中心に仙台市東部や宮城県東部エリアの地域医療を支えている。同院の現況について放射線科の松浦助教は,「新館にはハイブリッド手術室やIVR室などが新設され,診療内容はより広く,より高度になっています。当院で臨床実習を行った医学部一期生は2022年に卒業を控え,地域医療を担う人材の育成機関としても確立しつつあります」と話す。
診療機能の向上に伴い,放射線部門でもシステムの増設や更新が進められ,現在,CT 5台(治療計画用,COVID-19対応用を含む),1.5T MRI 2台,血管撮影装置4台,X線TVシステム3台,ガンマカメラ,リニアックなどが稼働する。放射線科には,医学部長を務める福田寛教授,放射線科長・放射線部長の小山周樹教授以下8名の放射線科医,放射線部には33名の診療放射線技師が在籍する。画像診断は5名の放射線診断専門医が担当し,MRI(2020年実績:7450件),核医学(同:1248件)は全例,CT(同:1万9955件)は読影依頼のある約9割の検査についてレポートを作成している。
画像検査数は年々増加傾向にあり,また,読影室が医師の増員を受けて増設され,本館と新館の2か所に分かれた。このような変化で煩雑になりかねない画像検査・読影業務を,PSPのシステムが支えている。

放射線関連システムをPSP製品で構築しスムーズな連携を実現

同院では,画像診断・放射線部門のシステムを段階的にPSP製品で統一して構築することで,スムーズな連携と効率的な運用を可能にしてきた。2013年に放射線科内PACSとして「EV Insite net」を導入,翌2014年の電子カルテ化と同時に,放射線業務管理システム(RIS)「ARIStation」や所見作成支援ソフトウエア「EV Report」を導入した。2018年には,院内画像参照用PACSをEV Insite netに統合したことで,検査画像の運用の効率化を実現した。このほか,検像システム「EV Confirm」や症例ファイル管理システム「EV Palette」,統合検査情報システム「Portal Space Ace」などを導入している。
システム導入の経緯について松浦助教は,「小山教授が他院で使用したEV Reportの使いやすさを高く評価し,当院への導入を検討したのがきっかけです。ほかのシステムもPSP製品にそろえることで,スムーズで安定したシステムを構築できています」と述べる。
また,医学部新設を機に全学生が参照用ビューアを使用できるように整備したほか,EV Paletteも医学教育に役立てている。松浦助教は,「臨床実習で使用する症例画像やPowerPointなどのファイルをEV Paletteに登録して活用しています。EV Paletteには,ビューアから患者情報を匿名化した教育用データを簡単に移行することができて便利です」と,同一ベンダーのシステムを使うメリットを挙げる。

細やかな工夫で放射線部門の業務を支えるARIStation

放射線部門の業務運用のカギとなるRISについては,導入前に千葉技師長が他院でARIStationを見学した。千葉技師長は,「最初の印象は,画面がシンプルでExcelのようだと感じました。実際に使い始めてみると,このシンプルさがとても良く,全体が見やすいことで情報を取るにも入力するにも使いやすさを実感しています」と話す。
現場での使いやすさを追究して開発されたARIStationは,ユーザーが画面上で枠の大きさや配置などを調整できることが特長で,同院では現場ごとにレイアウトを工夫している。放射線科受付の端末では,目につきやすい患者リストの先頭に患者コメント欄を配置している。この欄には「立位が難しい」など患者の状態を入力しており,受付スタッフがその情報を確認して検査担当者に伝えることで,患者ごとに適切に対応できるようにしている。また,依頼医からの記載が多いCTやMRIの検査室の端末では依頼コメント欄を広くすることで,スクロールせずに情報を確認できるようにしている。
ARIStationでの情報共有について,半田技師は,「放射線部コメント(検査時の注意点など)や実施コメント(造影剤名や使用量などの記録)の欄もスタッフ間の情報共有に活用しています。実施コメント欄には過去に使用した造影剤などの一覧を表示する履歴ボタンがあり,副作用なども記録しているため,検査前にチェックすることで安全に検査を行うことができます」と,医療安全に貢献していると話す。また,検査部位や病名などで過去の症例を抽出して一覧表示するキーワード検索を活用することで,経験の少ない検査や難しい検査であっても,過去の症例を検討して適切に撮影を行えるとスタッフから好評だという。
ARIStationはHISから情報を取得することで入力の手間やミスを軽減できることに加え,受付状況や患者の待ち時間を把握できることもメリットだ。半田技師は,「患者の待ち時間や装置の稼働状況をリアルタイムに確認できるため,通常検査を3台で行っているCTでは検査の割り振りを調整したり,人手が足りないところにスタッフを回したりといったオペレーションがしやすいです」と話す。
また同院では,ポータブル撮影装置用にタブレット端末RIS「ARIS Pad」を3台導入している。新館開設で病床が増え,1日に70件ほどの病棟検査を2台のポータブル撮影装置で行っているが,ARIS Padで互いの検査実施状況をリアルタイムに把握でき,調整しながら効率的に検査を実施できている。2018年からはARIS Padに加え,タブレットビューア「Insite Pad」も導入され,過去画像を確認できるようになった。前回画像と比較して肺の状態が著しく悪化している場合などに医師に早めの診察をうながすこともでき,医療の質の向上にもつながっている。

検査室では依頼コメント欄を大きく表示するなど,現場に合ったレイアウト調整が可能

検査室では依頼コメント欄を大きく表示するなど,
現場に合ったレイアウト調整が可能

 

検査・読影エリアが離れていてもメッセージ機能で迅速に連携

ARIStationには,医師による検査前チェックを効率的に行うためのプレチェック機能も搭載されている。同院ではこの機能を用いて,予約の造影検査については前日までに放射線科医が患者の状態や副作用を確認しているが,当日の飛び込みも多い造影検査における有用性も高いと,千葉技師長は次のように述べる。
「現在は読影室が2か所に分かれ,画像診断医の多くは新館の読影室にいます。その上,医学部の講義や検査対応もあるため,本館にある放射線部門からは先生方の状況がわかりません。しかし,ARIStationでは読影端末宛てに一斉にプレチェック依頼のメッセージを送ることができます」
松浦助教は,「メッセージは読影端末にポップアップ表示されるため,その時に読影している医師が迅速に対応できます。チェックではARIStation上で腎機能や副作用などをすぐに確認でき,定型文を使った入力で簡単に指示出しを行えます」と話す。
読影室では10台導入している読影用ビューア「EV Insite R」は,画面レイアウトやショートカットなどをユーザーごとにカスタマイズ可能だ。松浦助教は,「ID・パスワードでログインすることで,どの端末でも環境を再現できるため,どちらの読影室でもストレスなく読影できます」と利便性の高さを評価する。

ARIStationのプレチェック画面 依頼コメント((1))や撮影指示コメント((2)),連絡コメント((3))の欄が設けられ,確実な情報共有に役立っている。

ARIStationのプレチェック画面
依頼コメント((1))や撮影指示コメント((2)),連絡コメント((3))の欄が設けられ,確実な情報共有に役立っている。

 

確かなスキルで現場の声に応えるサポートに期待

PSPシステムの採用で,効率的で医療安全を担保した画像検査・読影の環境を整えた同院では,将来的にリモート読影環境の整備や別立てとなっている動画PACSの統合などを検討している。千葉技師長は,「病院機能の強化に合わせて放射線部門もさらに充実させて,大学病院として広く深く対応できることをめざしています。PSPはサポートも迅速で,エンジニアのスキルが高く,カスタマイズにも柔軟に対応してくれており,これからも現場の声に寄り添ってくれるものと思います」と期待を示した。

(2021年9月29日オンラインにて取材)

 

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TEL:022-259-1221
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