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SCENARIA View × 協立総合病院低被ばく・高画質の両立とワークフロー向上で地域医療を支える「SCENARIA View」 ─逐次近似処理“IPV”によるノイズ低減効果で,線量と造影剤を低減しつつ質の高い画像を提供

2020-10-1

SCENARIA Viewと放射線科のスタッフ

SCENARIA Viewと放射線科のスタッフ

みなと医療生活協同組合 協立総合病院(434床)は2019年10月,被ばく低減と高画質の両立と,ワークフローの効率化をコンセプトに開発された日立製作所の64列128スライスCT「SCENARIA View」を導入した。胸腹部の検査で逐次近似処理“IPV”を適用し,日常検査で大幅な被ばく低減や造影剤の減量を実現している。SCENARIA Viewの使用経験について,放射線科の河津省司部長,南保 修技師長,山口順司技師に取材した。

地域を支える総合病院にSCENARIA Viewを導入

みなと医療生活協同組合は,1959年の伊勢湾台風で大きな被害を受けた地域の住民が中心となって創設された。複数の診療所に加えて77年に協立病院を開設,87年に総合病院となり,2001年に現在地に新築移転した。医療生協の病院として,地域を支え,地域に支えられながら発展し,現在は29科を標榜する二次救急医療機関として地域医療に貢献している。
放射線科には,放射線科医の河津部長と13名の診療放射線技師が在籍する。月間の検査数はCTが約1000件,MRIが約300件で,河津部長はRIも含めて全例読影レポートを作成している。CT検査は,約8割が胸腹部で,そのほか頭部や整形,循環器など,幅広い検査が各科からオーダされる。
CTは適時更新を行いながら,2010年に64列CT「SCENARIA」(日立社製)を増設して2台体制となり,2019年10月には16列CT「ECLOS」(日立社製)を最新の64列128スライスCT「SCENARIA View」へと更新した。更新の背景について南保技師長は,「2台体制になってからはSCENARIAをメインに使用し,ECLOSは主にCTアンギオに用いていましたが,夜間は運用上の都合から一般撮影室に隣接するECLOSを使用していました。しかし,ECLOSは導入から10年が経ち,64列と比べると画質の差も大きいため,更新が必要と判断しました」と説明する。
更新後はSCENARIA Viewを主に使用し,SCENARIAをバックアップとして運用を始めたが,2020年に入り新型コロナウイルス感染症が拡大。SCENARIAは非常口から出入りできる最奥の検査室にあり,ゾーニングが可能なことから,現在は感染疑い患者の検査専用として活用している。

放射線科 河津省司 部長

放射線科 河津省司 部長

南保 修 技師長

南保 修 技師長

山口順司 技師

山口順司 技師

 

IPVによるノイズ低減が読影や診療に大きく貢献

SCENARIA Viewは日立の最新CT装置で,被ばく低減と高画質の両立と,ワークフローの効率化をコンセプトに開発された。最大の特長である逐次近似処理“IPV(Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)”は,FBP画像に近い質感を実現しながら,FBPと比べてノイズを最大90%低減する。コンソール上で処理が可能で,ルーチン検査で被ばくを低減しつつ,視認性の高い画像の提供を可能にした。
同院ではCTが2台とも64列装置になったことを機に,ルーチン撮影のスライス厚を5mmから2.5mmに変更。同時に,SCENARIA Viewでの胸部と腹部の全検査にIPVを適用する運用を開始した。IPVの効果について山口技師は,「スライス厚を薄くしたことでノイズ増加が懸念されましたが,IPVを用いることで2.5mmでもノイズが少なく,違和感のない画像を得られています。また,撮影線量も標準体型の方であれば,従来よりも30〜40%ほど低減できています」と説明する。
河津部長はIPV画像について,「FBPでの読影に慣れている目にも,画質の違和感がありません。特に腹部は,FBPとの違いがわからないほど自然で高画質な画像だと思います」と評価する。
また,腹部造影検査においては,IPVで画質を担保できることを踏まえ,低管電圧撮影による造影剤低減にも取り組んでおり,山口技師は,「造影剤量を30%ほど低減しても問題なく造影効果を得られ,画質も良好です」と述べる。腎機能が低下している患者はもとより,造影コントラストがつきにくい痩せ型の患者や小児での造影効果の向上や,同院で使用する100ccシリンジ造影剤でより高体重の患者をカバーできるなど,IPVによる恩恵は大きい。読影を一人で担う河津部長にとっては,効率良く読影を行えることも重要だ。河津部長は,「以前は読影中に薄いスライス厚の画像を作り直してもらうこともありましたが,ノイズの少ない2.5mmスライスでの読影ではほとんどの症例をファーストルックで診断でき,読影業務がスムーズになりました。小さい尿管結石や虫垂炎,壁に薄く存在するような胆管がんなども診断しやすいです」と述べる。
南保技師長は,「以前は,医師からの要望に応えられないことも多かったのですが,SCENARIA Viewでは要求に近い撮影方法が可能になっていると感じます」と述べる。術前検査で求められる血管走行の同定や3D画像の作成においても,低ノイズの0.625mmスライス厚の画像を提供でき,門脈や静脈の描出能も向上しているため,3D画像を作成する技師の負担を軽減しつつ,医師のニーズに応える質の高い画像の提供が可能になっている。

■SCENARIA Viewによる臨床画像

多発肝転移疑い,副腎転移疑い症例

多発肝転移疑い,副腎転移疑い症例
CTDIvol:8.7mGy,DLP:456.7mGy・cm,100kV,420mgI/kg造影剤量を30%低減し,管電圧100kVにて撮影。IPVではFBPの質感を保ったまま大幅なノイズ低減ができており,多発転移の小さな腫瘍のリング状濃染など,病変部や臓器の境界・連続性の視認性が向上している。

 

ユーザー目線で工夫されたワークフローの効率化

SCENARIA Viewには,さまざまな機能やアプリケーションでワークフローを最適化し,検査時間を短縮させる“SynergyDrive”が実装されている。ワークフローの効率化について期待以上だったと評価する山口技師は,ポジショニングにおける有用性を次のように話す。
「80cmの大開口径ボアと最大20cm移動する寝台横スライド機能は相性が良く,オフセンター部位の検査や頭部外傷などであまり動かせない患者さんでも,ほぼ中心で撮影できますし,スキャノグラム確認後の微調整も技師側でできるので患者さんに負担をかけません。開口径が広いため,手を途中までしか挙上できない場合にもガントリに当たる心配がなく,安全に検査を施行できます」
ほかにもSynergyDriveでは,同時に最大3人までの事前設定や画像処理ができる,患者登録後のスキャノグラム撮影設定画面をスキップできるといった効率化や,管球のオートスタンバイ機能など,細やかな工夫でワークフローを改善し,検査時間の短縮を実現している。山口技師は,「肺野で使用しているスキャン範囲自動設定“AutoPose”は精度が高く,ぜひ頭部でも使用したいです。検査終了後に操作室側から寝台を下げられる機能などは,一人で検査をしていると非常に助かりますし,ユーザー目線でよく考えられていると思います」と話す。
また,11か国語と手話での検査ナビゲーションが可能なガントリ正面モニタの“Touch Vision”も,中国語やポルトガル語などを利用する機会があり,スムーズな検査の実施に貢献している。

寝台は最大20cmの横スライドが可能

寝台は最大20cmの横スライドが可能

 

IPVとAECの連動制御で撮影条件の最適化をめざす

同院では,9段階に設定可能なIPVとAECが連動し,IPVのノイズ低減率を考慮した撮影条件となる“IntelliEC Plus”を活用して撮影条件の最適化に取り組んでいる。山口技師は,「これからも,より低線量での撮影をめざしていきます。特に水晶体の被ばく線量低減のために,頭部でもIPVを使えるようになるといいと思います」と述べる。
最新のソフトウエアバージョンでは,IPVの適用範囲が拡大されるなど,さらなる被ばくの低減・最適化も可能になっている。日常検査で低被ばくと高画質を両立するSCENARIA Viewは,今後もさらに進化を続け,地域医療を支えていく。

 

(2020年7月30日取材)

 

協立総合病院

みなと医療生活協同組合
協立総合病院
〒456-8611
愛知県名古屋市熱田区五番町4番33号
TEL 052-654-2211
http://hp.minato.coop

 

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