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CALNEO GL × 慶應義塾大学病院ロングサイズFPDと立臥位撮影台で側彎症の長尺撮影のワークフローを向上 〜ダイナミック処理による高画質化で月間800件の長尺撮影をサポート〜

2017-5-1

さまざまな長尺撮影に対応する立臥位撮影台FM-PL1(左)。立位から立臥位側面など切り替えは片手でスムーズに可能(右)

さまざまな長尺撮影に対応する立臥位撮影台
FM-PL1(左)。立位から立臥位側面など
切り替えは片手でスムーズに可能(右)

慶應義塾大学病院では,一般撮影部門に富士フイルムメディカルのロングサイズFPD「FUJIFILM DR CALNEO GL(以下,CALNEO GL)」と電動式立臥位撮影台「FM-PL1」を組み合わせた長尺撮影システムを導入した。同院では,整形外科の脊椎脊髄疾患の診断や術前撮影,経過観察などを中心に月間800件近い長尺撮影が行われている。CALNEO GL,FM-PL1導入によるワークフローと画質の評価を,放射線技術室の三浦茂樹副主任と整形外科の渡辺航太講師に取材した。

放射線技術室・三浦茂樹副主任

放射線技術室・
三浦茂樹副主任

整形外科・渡辺航太講師

整形外科・
渡辺航太講師

 

 

長尺撮影のFPD化で画質と検査効率を向上

同院の一般撮影部門では,胸腹部の立位臥位撮影など8室で検査業務を行っているが,そのうち整形外科領域を中心に長尺撮影を行う2室にCALNEO GL,FM-PL1 2組が導入された。一般撮影部門はFCRシステムで運用されており,FPDの導入はCALNEO GLが初めてとなる。
同院の一般撮影検査件数は月間約1万件,整形外科領域は1/3の約3000件で,そのうち長尺パネルを利用した全長撮影は1/4の700〜800件に上る。三浦副主任は長尺撮影が最初にFPD化された経緯について,「整形外科の側彎外来の日には,患者さんが集中し長尺撮影が胸部一般撮影より多い時もあります。長尺撮影の効率化を図り患者さんの利便性を向上させながら,かつ診療科に対してもより精度の高い画像を提供することを目的に,CALNEO GLを導入しました」と説明する。
今回導入したのは,富士フイルム独自の画像読取方式であるISS(Irradiation Side Sampling)方式を採用した17インチ×49インチのロングサイズ型フラットパネルCALNEO GLと,電動操作で立臥位ポジションの変更が可能な撮影台FM-PL1を組み合わせ,広範囲の1ショット撮影を可能にした長尺対応一般撮影システムである。部位や体厚を認識して画像の最適化を行う“Dynamic VisualizationⅡ”(以下,ダイナミック処理)など,同社の最新画像処理技術を搭載し,低線量で最適な画像の提供を可能にする。

側彎症の検査のためさまざまな長尺撮影を実施

整形外科では,脊椎・脊髄グループを中心に脊柱変形の一つである側彎症に対して,原因遺伝子の研究から独自の手術法の開発まで専門性の高い診療を行っている。週1回の側彎外来には多くの患者が受診し,そのため多い時には午後だけで160件近い撮影が行われることもあるという。側彎症の撮影では,診断や経過観察を目的とした立位の正面側面の脊椎全長撮影のほか,術前検査として下肢全長,仰臥位側面位でのボルスター撮影,臥位での左右屈,牽引など多くの長尺撮影が行われる。
三浦副主任は,「側彎症では,全体のバランスや柔軟性を見るため,頸椎から骨盤まで広い範囲をカバーした画像が必要です。長尺撮影は,立位だけでなく,ベッドを利用した仰臥位で,枕(ボルスター)を胸腰椎後彎部に配置し,自重下での柔軟性を側面から観察するボルスター撮影や臥位で頭部に装具を装着し上下で牽引しながら行う牽引撮影など,さまざまな種類があります。CRでは,これらの撮影のためのセッティングや画像読み取りに時間がかかり,検査が集中する中で待ち時間も長くなっていました。複数枚を組み合わせた長尺タイプCRカセッテから,ロングサイズパネルの1ショット撮影で画質もワークフローも改善することを期待しました」と述べる。
2台のFM-PL1は,1部屋はX線管球を挟み立位撮影台と正対する形で設置され,管球を振ることで他部位の立位撮影と全長撮影が素早く行えるように配置されている。もう1部屋は,牽引やボルスター撮影に対応できるよう仰臥位でポジショニングができるセッティングとなっている。

長尺撮影システム(右)を設置した検査室のレイアウト

長尺撮影システム(右)を設置した
検査室のレイアウト

 

撮影台一体型による操作性でワークフローを効率化

従来,長尺撮影は複数のCRカセッテ(半切2連や大角3連タイプ)を組み合わせていたが,重量が約1kgと重い上に撮影ごとに複数枚すべての画像読み取りと合成処理が必要で手間がかかっていた。CALNEO GLとFM-PL1を組み合わせた長尺撮影システムでは,カセッテ交換の必要がなく連続撮影が可能で,FM-PL1により立位から臥位へのポジション変更もボタン一つで可能になった。三浦副主任は,「CRカセッテでの長尺撮影では,立位から仰臥位側面位,臥位へ変更するたびにセッティングに手間と時間がかかっていましたが,CALNEO GLでは半分以下の時間で検査が可能になりました。撮影台の移動はスムーズで,パネルを斜めにした状態で上下動も可能なので斜位の撮影も簡単です」と説明する。
CALNEO GLの17インチ×49インチのパネルは,全脊柱や下肢をカバーする体軸方向だけでなく,横幅も従来のCRカセッテよりも大きい。撮影範囲が広がったメリットについて三浦副主任は,「下肢の変形性疾患では,Mikulicz線計測などアライメント評価のために,立位荷重下で骨盤以下の下肢全体を左右同時に撮影する必要がありますが,O脚など脚のゆがみがひどい場合にはCRの横幅では収まらないことがありました。CALNEO GLでは余裕を持って撮影することができます」と説明する。また,長尺専用としてパネルが一体化されたメリットについて三浦副主任は,「専用撮影台にパネルがビルトインされていることで,落下による破損などのリスクが回避できます。また,特別な撮影オーダも処理も必要なく,立位撮影台と同じ運用が可能でシンプルなワークフローになっています」と評価する。

ダイナミック処理で広範囲撮影でも最適な画像を提供

ダイナミック処理は,推測された三次元情報から厚みの異なる部位や構造物を認識し,それぞれの部位でコントラストと濃度を安定化して最適な画像を提供する画像処理技術である。広範囲をカバーする長尺撮影では,体厚の差によって安定した画像の描出が難しいが,ダイナミック処理によってX線吸収差があっても人体構造全体の最適な描出が可能になる。
CALNEO GLの画質について,小児の脊柱側彎症を専門として多くの患者を診療する渡辺講師は,「従来のCRでは,部位によっては辺縁が追えないことがありましたが,CALNEO GLでは側面像や骨盤でも骨頭の位置が把握しやすく,解剖学的なランドマークが把握しやすくなりました。X線撮影は基本的に計測や解剖学的な位置関係や骨の輪郭などを見ることが目的ですが,画質の向上によって1枚の画像で骨梁など骨の情報や関節の状態まで把握できるようになれば,患者さんにとっても大きなメリットです」と評価する。三浦副主任は,「頸胸椎移行部は体厚差が大きく,側面像で同一コントラストで描出することは困難で,観察には特殊な撮影法が必要な部位です。また,骨盤部も側面はⅩ線吸収が大きいので,側面像で全脊椎は観察できないものですが,ダイナミック処理では普通に撮影するだけできれいに描出されます。脊椎腫瘍のスクリュー留置術では,頸胸椎や胸腰椎の移行部にまたがる広範囲を撮影することがありますが,普通では同一コントラストで観察しにくい横隔膜の位置なども1枚の画像の中で確認することができます」とダイナミック処理の効果について評価している。
CALNEO GLでは,撮影線量はFCR時と比べて半分以下に低減されている。三浦副主任は,「ファントムを用いてスタッフによる視覚評価を行いましたが,線量をFCRの半分まで落としても視認性は高く,さらに線量を下げられるという評価です」と述べる。
整形外科領域における長尺撮影の重要性について渡辺講師は,「脊椎脊髄領域では,背骨など局所の観察だけでなく,頸椎から骨盤,さらに股関節や膝関節まで含めて全身を観察して,全体のバランスを判断した診療が重要になっています。そのためには,問題のある部位だけでなく,脊椎から下肢まで全体を観察できる長尺撮影が必要で,広範囲を低線量で撮影できるCALNEO GLへの期待は大きいですね」と述べる。

■CALNEO GLによる臨床画像

CALNEO GLによる臨床画像

 

2020年完成の新病棟でのさらなる効率化に期待

慶應義塾大学病院は,2020年に向け新病院棟の建築が進められており,一般撮影部門もシステムを含め一新される予定だ。その際には,長尺撮影についても,現在ボトルネックとなっている更衣室が少ない状況も解消される予定で,長尺撮影システム導入によるワークフロー改善の効果がさらに発揮されることが期待される。

(2017年2月21日,3月7日取材)

 

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