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Aquilion PRIME × 聖マリアンナ医科大学病院迅速な診断・治療が求められる救急医療の最前線で生かされる「Aquilion PRIME」の実力─‌高速撮影,高速画像再構成,低被ばく,高画質のマルチスライスCTがもたらすメリット

2013-4-1

救命救急センターに設置されたAquilion PRIME

救命救急センターに設置されたAquilion PRIME

聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターでは,2011年8月に東芝社製マルチスライスCTの最上位機種「Aquilion PRIME」を導入した。救急専用CTとして,従来の16列マルチスライスCTから更新したAquilion PRIMEは,80列160スライス,0.35s/rotによる高速撮影,Area Detector CT「Aquilion ONE」から受け継いだ高速画像再構成などにより,救急医療の現場で求められる,迅速な診断・治療につなげるための高精細画像を,速やかに提供している。また,780mmの大口径ガントリや低線量撮影技術である「AIDR 3D」により,患者さんの負担を抑えた検査を実現している。救急医療の最前線におけるAquilion PRIMEの有用性を取材した。

■救急医療におけるCTの有用性をいち早く認めた救命救急センター

聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターでは,行政の支援を受けて,早期から救急専用CTを導入。救急医療における画像診断の重要性,CTの有用性を認識し,積極的に活用してきた。その後も,16列のマルチスライスCTといった機種の変遷を経て,2011年8月に,80列160スライスのスペックを持つAquilion PRIMEに更新。救急医療の現場で活用している。

■救急医療の現場で求められる迅速な診断・治療を強力に支援するCT

松本純一 講師

松本純一 講師

救急専用のCTにもかかわらず,ハイエンドクラスの装置を導入したのは,救急医療における画像検査の重要性が高まっているためである。放射線科医として,救命救急センターで画像診断を担当している救急医学教室の松本純一講師は,救急医療におけるCTの重要性を次のように説明する。
「救急医療では,触診や採血,そして,CTなどの画像検査から得られた情報を収集し,診断・治療を行ってきました。なかでも画像検査は,装置の進歩により,著しくその位置づけが高まっています。特にCTは,マルチスライスCTの登場とその後の多列化により,重要な情報を短時間で非侵襲的に得られることから,救急医療における診断から治療までのマネジメントで果たす役割が格段に増しています。そして,このようなCTの進歩は,救急医療の質の向上にも貢献しているのです」
さらに松本講師は,CTの高性能化により,放射線科医が救急医療にかかわることの必要性を指摘する。
「救急医療の現場において,短時間で正確な診断をして,正しい治療に結びつけるためには,画像診断を行う者も“プロフェッショナル”であることが求められます。ハイスペックなCTが救急の場にも導入されるようになったことにより,大量の情報から正確な診断をする放射線科医の存在は,ますます大きくなっています」
このような背景から,救命救急センターでは,放射線科医が常勤して,画像診断を行う体制をとってきた。また,センター開設時から配備してきたCTは,救急医療の現場のニーズに応えられるよう,その時代ごとのハイエンドクラスのCTを採用し,現在のAquilion PRIMEに至っている。
更新にあたっては,当初64列の装置を導入する予定であったが,マルチスライスCTの最高級機であるAquilion PRIMEが発表されたことから,急きょ機種を変更し,救急医療に求められる検査の“スピード”に,より速く応えられるようにしたという。松本講師は,「救急医療のCTには,より患者さんへの侵襲度が低く,かつ多くの情報を得られるスペックが求められます」と述べる。患者さんのポジショニングの負担を軽減する780mmの開口径とAIDR 3Dによる低被ばく,そして,80列160スライスの高速撮影に加えて,Aquilion ONEから受け継いだ高速画像処理が可能なAquilion PRIMEは,同センターが求めていた救急専用CTの理想と言える装置であった。

■超急性期疾患,外傷などの救急CT検査をAquilion PRIMEで実施

聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターの画像検査部門では,平日の日中,医師が2名,診療放射線技師が6名,看護師が2名の人員を配置している。技師は,平日夜間には3名,日曜・祝祭日には日中5名,夜間4名が勤務し,CTや一般撮影装置,血管撮影装置での検査に対応している。また,放射線科医も24時間365日常勤しており,検査のオーダや読影を行っている。
このような体制の中で,Aquilion PRIMEでは,1日40件程度の撮影を行っている。検査は,脳血管・心血管疾患のほか,交通事故などの外傷が中心となっている。また,同院では,2013年3月からAquilion ONE ViSION/Editionが稼働し始めたが,それ以前は病棟の患者さんの心臓検査をAquilion PRIMEで行うこともあったという。
検査の流れは,患者さんが救急外来に搬送されてくると,放射線科医,もしくは救急医から状態に応じた検査のオーダが出される。そして,救急外来近くにあるCT室に患者さんを移動させ,領域ごとに設定された撮影プロトコールに基づいてCT検査が実施される。医師が撮影された画像をコンソールで確認して,その後の処置が行われる。一方で,撮影した画像はPACSサーバにも送信され,放射線科医がより詳細な読影を行い,その情報を救急医に提供する。読影では,外傷CTの場合,外傷初期診療ガイドラインにおいて標準的な読影方法とされるFACT(Focused Assessment with CT for Trauma)が用いられる。松本講師は,「特定の部位に絞って読影することで,3分以内で全身を評価する読影方法です。頭部,大動脈,胸部,腹部,骨盤,腹部臓器を順に読影していきます」と説明する。さらに技師は,3Dワークステーションを使い,胸腹部領域の検査ではMPR像などを,頭部や心臓など血管系の検査ではVR像も作成する。このような流れについて,検査を担当する同院画像センターの田端 均技師は,「外傷の場合,患者さんの容体が急変する可能性があるため,搬送後すぐに撮影して救急外来へ戻す必要があります。そのため,検査時間をできるだけ短くするような運用にしています」と述べている。

田端 均 技師

田端 均 技師

米田 充 技師

米田 充 技師

高橋 智 技師

高橋 智 技師

 

■高速撮影・画像再構成など救急医療に適したAquilion PRIME

2011年8月に稼働し始めてから,すでに1年半以上が経過したAquilion PRIMEであるが,救急医療の最前線で期待どおりの実力を発揮している。松本講師は,「速やかに精度の高い情報の提供が求められる救急医療の現場で,明らかに検査時間が短縮し,従来の装置を超えるクオリティの画像が得られており,診断の確信度が向上しています。低線量撮影技術であるAIDR 3Dを使用した検査であっても,低被ばくを実現しながら,画質の低下をほとんど感じることがなく,大変満足しています」と述べている。同センターでは,スキャン速度0.35s/rotでの撮影を多く行っているが,2572view/sの高密度サンプリングにより,高精細な画質が得られている。
一方で,技師からも,高い評価の声が上がっている。米田 充技師は,780mmという広い開口径で患者さんのポジショニングが容易であることについて,「救急外来に搬送されてきた外傷患者さんの中には,仰向けになれない方もおり,背中をかがめた姿勢で撮影することがあります。また,腕を挙上できない患者さんもいるのですが,そのような方でも,開口径が広いために容易に検査できます」と説明する。さらに,高橋 智技師も,「腰の不自由な高齢者でも,寝台上で膝を立てたままガントリに入ることができるので,患者さんに負担をかけない検査が行えます」と述べている。
また,救急CTに求められる短時間での撮影という点でも,Aquilion PRIMEは評価されている。田端技師は,「撮影スピードの速さに加えて,画像再構成の処理速度が速いので,すぐに画像を提供できます。医師は一刻も早く画像を見たいと望んでいるので,これは非常に大きなメリットです」と話す。Aquilion PRIMEの画像再構成処理速度は50f/sであり,スキャン中から再構成処理を行うため,救急医や放射線科医を待たすことなく,コンソール上に画像を表示できる。これは一刻を争う救命救急の現場では,その後の治療だけでなく,患者さんの予後にも影響するだけに,非常に重要な技術だと言えよう。
さらに,AIDR 3Dも救急CTにとって重要な技術と認められている。高橋技師は,「救急の患者さんは,同じ日に複数回のCT検査を行う場合があり,それ以降も撮影することがあります。それだけに,AIDR 3Dで低線量撮影し,トータルの被ばく量を減らすことは大切です」と指摘する。

症例1 外傷パンスキャンと読影の実際(Focused Assessment with CT for Trauma:FACT)

症例1 外傷パンスキャンと読影の実際(Focused Assessment with CT for Trauma:FACT)
迅速な診断と治療方針決定が求められる外傷診療においては,画像検査から読影のプロセスにおいても時間と緊急度を常に意識する必要がある。外傷パンスキャンは,高エネルギー外傷など多発外傷が想定される症例に対して行われる全身撮影プロトコールであるが,このような広い範囲を短時間で,そして,出血性の病態を正しく評価できるような適切なタイミングで撮影を行うには,Aquilion PRIMEのような高速かつ低被ばくな設定で良質な画像を提供できるCTが威力を発揮する。症例1は交通外傷症例の外傷パンスキャンである。読影に際しては,まず,頭部で緊急開頭が必要な血腫を検索し(1),次に弓部のレベルで大動脈損傷を評価(2),その後,肺底レベルで気胸,血胸,心嚢血腫を評価し(3),引き続いて,一気に骨盤底まで降りて腹腔内血腫を判定した後(4),逆向性に上がっていきながら骨盤骨折(5),椎体骨折およびこれらに伴う血腫(6),最後に実質臓器損傷(7)と腸間膜血腫(8)を検索していく。この後,さらに詳細な評価をしていくことになる(読影の第2,第3段階)が,まずはこの読影方法を使って3分以内に全身をすばやく評価することが求められる(詳しくは外傷初期診療ガイドライン第4版参照)。この第1段階の読影を,Focused Assessment with CT for Trauma:FACTと呼ぶ。本症例では,(1)開頭が必要な血腫なし,(2)(3)血気胸あり,ここでは活動性出血なし,(4)(5)骨盤骨折と血腫のほか,小さな肝損傷(7)も指摘できる。

 

■今後もエキスパートを育成し全国の救急医療に貢献していく

Aquilion PRIMEの導入は,救命救急センターで働くスタッフ,そして,患者さんにとって大きなメリットを生んでいる。今後,担当技師たちは,さらに迅速な検査と精度の高い情報を提供するための工夫を検討していくという。また,松本講師は,より迅速な検査が行えるよう,寝台にラインを設け,そこに合わせて頭部をセッティングし,ワンボタンで自動スキャンするようなアイデアを東芝社に提案している。さらに,松本講師は,救急医療における放射線科医のマンパワー不足を補うために,救急医の画像診断技術を高める目的でDIRECT(Diagnostic and Interventional Radiology in Emergency, Critical care, and Trauma)研究会 を開催している。
このような活動を含めて,聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターでは,今後もモダリティの整備を図りつつ,救急医療のエキスパートを育成し,地域のみならず,全国の救急医療に貢献していく。

Aquilion PRIMEと同室内に一般撮影装置のMRAD-A50Sを設置

Aquilion PRIMEと同室内に
一般撮影装置のMRAD-A50Sを設置

 

 

 

高度化する救命救急の現場においてCTなどを活用し,
多くの医療者が参加する環境を構築する。
─明石勝也 理事長に聞く

明石勝也 理事長

聖マリアンナ医科大学病院の救命救急センターは,1980年に開設した。神奈川県内初の救命救急センターとして,スタート時からCTを導入。一刻を争う救急医療の現場でCTを活用してきた。同センター長として長年救急医療に力を注いできた明石勝也理事長に,救命救急センターの概要と,そこにおけるCTの位置づけなどをうかがった。

神奈川県内初の救命救急センターを開設

─聖マリアンナ医科大学病院の理念や特色について,お聞かせください。

明石理事長:聖マリアンナ医科大学は,「キリスト教的人類愛に根ざした『生命の尊厳』を基調とする医師としての使命感を自覚し,人類社会に奉仕し得る人間の育成,ならびに専門的研究の成果を人類の福祉に活かしていく医師の養成」を建学の精神に掲げています。この精神に基づき,当院では,「愛のある医療」を提供しています。
また,当大学は,4病院と乳腺領域の診療に特化したクリニックを合わせて約2000床の病床数を擁し,川崎市,横浜市西部の地域医療の中核的な役割を担っています。一方で,教育機関として,医師をはじめとしたスタッフが最先端の医療を学び,スキルアップできる場としての環境づくりにも力を入れて取り組んでいます。

─救命救急センターの設立の経緯をお聞かせください。

明石理事長:当院の救命救急センターは,厚生労働省が救命救急医療体制を整備していく中で,神奈川県,川崎市からの要請を受け,開設しました。
「救急医療は医療の原点である」と言われますが,病んでいる方,ケガをしている方に救いの手を差し伸べることは,まさに医療の原点であり,医学教育の原点でもあります。多くの症例に接し,知識や技術を身につける機会があるとともに,医療人としての精神を学ぶことができるのが救急医療です。ですから,地域のためにも,そして,医学教育のためにも,救急医療に力を注ぐことは非常に重要だと考えています。

救命救急センター内にCTを設置することで患者さんの負担を軽減し迅速な診断を可能に

─救命救急センターにおけるCTの位置づけは何でしょうか。

明石理事長:救急医療におけるCTは,診断と治療の決定に重要な役割を果たしますが,放射線科のCT室が救命救急センターから離れた場所にある場合,患者さんを移動させるのはリスクが伴い,時間のロスも大きく,スタッフの負担も増えてしまいます。この観点からも,救命救急センター内にCTがあることは大きなメリットです。
私自身が救急医療を行っていたころは,大動脈解離の症例を多く受け入れていましたが,その診断・治療において,救命救急センター内にCTがあったことは,非常に有用だと感じていました。

高速な撮影と画像処理は救急医療にとって重要な技術

─2011年8月からAquilion PRIMEが稼働していますが,救急医療における有用性をどのようにお考えですか。

明石理事長:重篤な状態で搬送されてきた患者さんであっても,CT検査中は処置を行うことができません。それだけに短時間で検査できることは大きなメリットです。また,1回の検査で,短時間,かつ広範囲の撮影が可能なことは,患者さんのリスクを軽減することにもつながり,救急医療における有用性は高いと考えています。加えて,従来のCTに比べて,CTアンギオグラフィ(CTA)などにおいて高画質の画像で多くの情報を得られるようになり,迅速な診断・治療のために大変役に立っています。

放射線科医や診療放射線技師も含めチームで救急医療を行うことが求められる

─Aquilion PRIMEのような高性能CTが救急医療の現場に普及していくと,どのような影響を与えるでしょうか。

明石理事長:短時間で多くの有用な情報を得られるようになったことで,救急医療における放射線科医の果たす役割が非常に大きくなったと考えています。今後は,多くの情報から的確な診断を迅速に行える,救急医療に習熟した放射線科医のニーズがいままで以上に高まってくるでしょう。そして,このような放射線科医から,救急医も知識や診断技術を学んでいくことが大事です。
現在,わが国の救急医療は,医師不足など多くの問題を抱えていますが,もはや救急医だけでは成り立ちません。他科の医師や看護師,診療放射線技師など,多くの医療者がかかわることが必要です。救急医がコーディネーター役を果たし,CTなどのモダリティを活用しながら,チームで救急医療に取り組むという姿勢が,今後ますます求められるようになるでしょう。

(2013年1月28日,2月4日取材)

 

聖マリアンナ医科大学病院

聖マリアンナ医科大学病院
住所:〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
TEL:044-977-8111
病床数:1208床
診療科:29科
http://www.marianna-u.ac.jp/hospital/