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RSNA2011 |
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●RSNA2011 第1日目(11月27日)
オープニングセレモニーに参加
11月27日はRSNA2011の初日ということで,われわれ辻岡研究室の一同は緊張と期待と不安でいっぱいです。RSNAの会場に着いてまず驚いたのが,会場の広さと人の多さです。さすが世界最大級の学会だと思いました。
朝早くから受付を済ませた後,早速オープニングセレモニーに参加してきました。まず,開会式会場に入る否や,壇上の20mを超えるモニタの大きさに驚きました。また,Speakerが変わるときに音楽が流れる演出は面白いと思いました。シカゴの放射線学会会長の挨拶では,シカゴの名所をCTやMRI,超音波,一般撮影の画像と組み合わせて紹介していて,正直言って英語力の乏しい私達にとってはわかりやすくて面白かったです。
オープニングセレモニーの後は被ばく線量に関するセッションに参加しました。CTDIやボウタイフィルターの形状に関する発表が主でしたが,どの発表も実験の前にはまずはシミュレーションを行い,研究に取り組んでいた模様です。特に,ボウタイフィルターの発表者の中で実際に作成した方もおられて,研究に対して非常に努力されている様子を感じとることができました。最近,参加した日本医学放射線学会秋季臨床大会の会場の様子とRSNAとを比べると,そんなに大きくは変わらない印象ですが,RSNAの方が発表会場の数が圧倒的に多く,質疑応答がより活発であると感じました。
午後は,RC126 Advanced Visualization(Informatics in Practice)に参加しました。三次元表示についての発表でした。われわれの日頃の実験とも関係があり興味深い発表だったのですが,演者の発表とスライドについていけず,内容を理解するのが大変でした。もっと英語を勉強しておけばよかったと痛感させられた一日でした。
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科大学院生 土井裕次郎
●RSNA2011 2日目(11月28日)
朝のリフレッシャーコースに参加
11月28日(月),RSNA2011の2日目です。
僕たちが参加したのは,朝8時30分開始のリフレッシャーコースで,「Cool Technology for Radiologists」がテーマです。このテーマについて,3人の方が発表してくれました。
一人目の方の内容は主に,RAWデータとJPEGでヒストグラム等の画像要素に違いがあることと,そのデータ保存の重要性についてでした。中でも,データをオンライン上に保存することが重要だというのは,普段からUSBやハードディスクにデータを保存している僕たちにとって,紛失やクラッシュの危険性があることを実感させる発表内容でした。
二人目の方の発表も,データ保存や,オンライン上でバックアップを取る重要性に関する内容でした。終盤には,iPadなどのタッチパネルで画像の操作が行える最新電子機器についての発表がありました。その中で,タッチパネルの感度が良好な手袋や,iPadが収納できるポケットの付いた服の紹介などがあり,面白い内容でした。
三人目の方は,ユーモアに富んだ発表で会場内から何度も笑いが起きていて,僕たちがこれまで見たことのある学会発表の雰囲気とはかけ離れたものでした。しかし,観客を飽きさせない,スライドに夢中にさせる発表は,とても参考にすべきものだと感じました。
次に参加した一般演題では,Multi Energy CTについてがテーマだったのですが,とても広い会場が満席になり,さらには立ち見の方も多く見えました。CTの最新技術は世界でもかなりの注目を集めていることを改めて実感しました。僕たちはCTの研究を専攻しているので,このような最新技術は興味深く,今後勉強を積む上でとても参考になりました。
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科 4年生 渡邉彰仁
●RSNA2011 3日目(11月29日)
Dual energy CTのセッションなどに参加
11月29日(3日目),まだ暗い朝方,私達はシカゴの町中で歩を進めています。今日は朝からDual energy CTのセッションがあるため,いつもより1時間早く出発しました。そのセッションは,DECTを用いた頭部や心臓の機能画像や,膝の硬質化の判別など,日本の発表でも見たことがり,聞きやすい内容でした。
お昼は,食パンを押しつぶして焼いたパニーニを食べました。鳥とトマトが挟んであって非常においしかったです。会場では至る所に食べるところがあるので,もちろん研究発表を周るのは義務ですが,食事の方もいろいろ周りたいなと思います。
お昼からは私は,心臓CTのセッション(physics[cardiac CT])に行きました。内容としては,逐次近似法を用いた心臓CT:FBP法との被ばく線量の比較,4D心臓CT,FPDの心臓CT,動態ファントム,カルシウムスコアです。日本人も2名発表していました。ここでも日本の発表と似たような内容があったのですが,コーンビームを用いた心臓CTは少し興味深かったです。FBPなどの再構成法がある中,ある再構成法[PICCS]を用いた画像は,RMS粒状度が心臓CTのような動態を撮像しても一定値になるというものでした。少し聞き取れなかった部分もありましたが,そのような新しい再構成法の開発,またはシミュレーションを聞けたので,RNSAに来てよかったと思いました。私も日本に帰ってから研究したいと思っています。
その後,自由時間になったのでポスター展示を見に行きました。果てしなく続くポスター展示の中から,自分でも理解できるポスターを探すのはなかなかの至難でした。中に,第一世代CTのペンシルビームCTを使ったポスター発表は,教科書にはなかなか載ってないような当時の空間分解能などが書いてあって面白かったです。
またポスター展示会場では,出題者の方が時々ポスター前の椅子に座っており,質問はないですか? と優しく聞いてきてくれたりもしました。口演での発表もそうですが,ポスター展示も日本の学会との違いを見た一日でした。
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科 4年生 下村勇人
●RSNA2011 4日目(11月30日)
CT Reconstruction,CT Equipment and Phantomsのセッションに参加
RSNA2011も11月30日(4日目)となり,中間地点を折り返して残すところ2日間となりました。シカゴに到着した最初の2日を除いて,凍りつくような寒い日が続いていますが,残りの学会も頑張っていきましょう。
さて,今日は主に,CT Reconstruction,CT Equipment and Phantoms 1についてのセッションに参加しました。
・CT Equipment and Phantoms 1
四肢撮像専用のCT装置が紹介されていました。Extremities Cone Beam CTというCT装置らしく,このようなCT装置を初めて見たのでとても驚きました。また,最近話題の逐次近似法とFBPを比較検討した発表では,幾何学的構造を考慮したMBIRが最も優れているという内容でした。逐次近似法についてはまだまだ知らないことが多いので,その特性や原理をしっかり理解することが大事だと感じました。
・CT Reconstruction
主に逐次近似法を応用した画像再構成法について,多く取り上げられていた印象です。
FBP,IRIS,SAFIREの比較では,SAFIREは低空間周波数領域でのNPSが低く良好であるが,MTFは高コントラストな物質同士ではFBP,IRISに比べて悪くなるといった内容や,メタルアーチファクトリダクション(MAR)において,数式を用いて画像と,画像から作成したcollected imageが,Non-collected imageやEBHSG imageと比較して,メタルアーチファクトの低減に非常に有用であることも発表されていました。
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科 4年生 下村勇人
●RSNA2011 5日目(12月1日)
逐次近似法などの画像再構成法のセッションに参加 ─ 福島第一原発事故についてのセッションも
4日目の12月1日になりましたが,シカゴでは寒い日が続いています。会場内が暖かくて本当に良かったと思う今日この頃です
さて,今日のリフレッシャーコースのテーマは,「Minicourse: Advances in Digital Tomosynthesis From Physics to Clinical Applications: Reconstruction Methods and Optimization (BR)」でした。FBPや逐次近似法など,それぞれの画像再構成の原理やその利点,欠点などがとてもわかりやすく発表されていました。特にフーリエ変換画像の変化については,普段CTを操作しているだけでは決して分からないことなので,とても面白かったです。
次に,口述発表のCTのPhysicsで「CT Equipment and Phantom U」に参加しました。Cアーム装置の散乱線補正で,モンテカルロ法を応用して行うという演題発表がありました。その演題では,管電圧やグリッドの有無,種類を変えた場合の散乱線画像をモンテカルロ法により作成し比較するという内容のものもありました。その他,逐次近似法のIRISとSAFIREの比較という演題などもありました。
メインホールのArie Crown Theaterでは午後1時30分から,「RSNA/AAPM Symposiumu」が開催され,福島についてのセッションがありました。タイトルは,Japan Accident has Implications for U.S. Nuclear Plant Safety,New Deploymentです。福島第一原発事故に学んで,原発事故による放射線の影響について考えるという内容でした。改めて,今年の3月の東日本大震災と原発事故の出来事は,世界中の人々の関心を集めるような災害であったのだと実感いたしました。会場でも多くの人が日本のことを心配して声をかけてくれます。
次に,CTの歴史とその将来についての発表「CT2020」がありました。CTについて研究を行っている僕たちですが,やはり知らないことはたくさんあり,大変興味深い内容でした。ここ何年間の間に,逐次近似法を応用した画像再構成法やデュアルエナジーイメージングなどが開発され,CTの世界は日々発展しているように思います。将来,CTがさらにより良い診断装置になるべく,僕たちも研究によって,CTの発展の一翼を担えるように頑張ろうと思いました
ついに明日でRSNAも最終日です。今思うと,長かったのか短かったのかよく分かりませんが,無事終わることができそうです。それではまた明日のレポートで。お疲れ様でした。
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科大学院生 土井裕次郎
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科 4年生 渡辺彰仁
●RSNA2011 6日目(最終日)
機器展示が終わって寂しくなった最終日の会場で,最後のセッションまで参加
12月2日はRSNA2011最終日です。私達はいつも通り7時にホテルを出発し,8時半ごろに会場に着きました。しかし,昨日,機器展示が終了したため,機器展示会場入り口はシャッターで閉ざされ,さらに,あのあふれるばかりの人だかりもなくなってしまいました。シャッターストリートのような風景です。それでも,まだ会場にはセッションを聞きに来る方たちはいます。その数を見ても,全部足し合わせれば日本の学会の満員時より多いのではないでしょうか。私達も最初のオープニングセッションから最後のセッションまで参加しました。
8時半からのRefresher Courseは,「Enterprise Imaging(Informatics in Practice)」でした。スピーカーの最初の言葉は,「人が少ないねえ」でした。しょうがないです(笑)
内容としては,病理学資料の現状およびデジタル化,カメラ画像また放射線画像などすべての画像の統合化,そして循環器画像についての講演がありました。病理学の方もデジタル化はもうすでに進んでいると聞きましたが,スライドの写真を見るかぎりあの量の資料をまとめるのは至難と感じました。しかし,何か放射線画像のフィルムレス化と似たような感じもありました。あとは生物標本をデジタルで行うことなど,興味深い内容でした。
そして,10時半からは,RSNA最後のScientific Sessionである「CT Dose and Reconstruction」を聞きに行きました。最終日なのに,最後のセッションだと人の数も多いです。内容としては,低線量時のMBIR,同じくMBIR,over-beamingを補間表示する再構成,PICCSと言う新しい再構成法,Adaptive FilterのROC評価,Phase Contrast CTでの被ばく低減,iDose4を使った肺野CT,最後はMBIRで締めくくりました。最後に座長からの,「これで今年のRSNAも終わり,気を付けて家に帰ってください」という一言で最終セッションが終わりました。
これで私達,辻岡研究室のRSNA2011はすべて終了です。文章力また英語の理解力が拙いところもありましたが,世界の放射線研究,最新の機器展示,どれも肌に触れて感じることができました。まだ学生時代にこのような貴重な体験ができて本当に良かったです。
藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科大学院生 廣川哲也