MRは,ブランド名をAchievaから変更し,“Ingenia(インジニア)”という新しいブランド名で,3.0Tと1.5Tの新製品を発表した(日本国内薬事未承認)。Ingeniaのキーワードは「Digital Broadband MR」。本体のコイルの部分にアナログデジタル変換器(以下、ADC)の部分をすべて収納したことで,チャンネル数は無制限(チャンネルフリー)となった。従来は,AD変換を行う処理装置がある機械室までアナログケーブルで送信していたため,信号の減衰が発生していたが,Ingeniaでは,ADCをコイル内に統合することで,コイルからデジタル信号をダイレクトに送信できるため,光ファイバーケーブルによる減衰のない伝送が可能になった。このdStream技術によって,腹部領域でのSNRを従来に比べて40%向上した。他社のMRIでも,ADCをマグネットに搭載する機種があるが,ベッドの可動距離分のアナログケーブルが必要となっていた。Ingeniaでは,コイル内にAD変換器を統合したことで信号ロスをゼロにした。
さらに,これまでチャンネル数はADCのボードの数で決定されていたが,Ingeniaではコイル内に統合したことで本体からの信号がデジタル化され,チャンネルという概念から開放された。今後さまざまなコイルが登場しても,200でも300チャンネルでも関係なく利用できる。これによって,医療機関はコイルを購入するだけで,機器のアップグレードの必要がなくなるという。
テーブル内に,200cmのposteriorコイルを内蔵し,頸椎から足先までカバーする。頭頸部コイルとTorsoコイルを2つ使うことで,全身撮影が可能になる。SmartSelect機能で,撮像部位によって最適のコイルエレメントを自動で選択するため,コイルのセッティングをしなくても常に最適な条件で撮像できる。また,dStream技術によってコイルの軽量化も図られており,検査スタッフの負担を軽減し,検査スループットの向上も期待できる。
本体は,開口径70cmのオープンボアとなり,従来からのアンビエントなライティングとあわせて検査環境にも配慮され,より快適な検査が行える。また,ボア径を拡げたにもかかわらず,磁場の均一性も向上している。現場スタッフの負担軽減と,SNRの向上による診断医の読影を支援,容易なアップグレードによる病院経営への貢献と,すべてのニーズに応えるMRIとアピールした。 |