ホーム の中の 取材報告 の中の RSNA2010の中の Philips Healthcare―新しいコンセプト「Imaging2.0」を柱に多数の新製品が登場 Vol.1 【MRI・Ingenuity ファミリー】

RSNA2010

■Philips Healthcare
  新しいコンセプト「Imaging 2.0」を柱に多数の新製品が登場 Vol. 1
  【MRI・Ingenuity ファミリー】

RSNA2010 [第2日目:11月29日(月)]

  Philips Healthcareは,“Imaging 2.0(イメージング・トゥー・ドット・オー)”という新しいコンセプトのもとで展示を行った。それに伴い,ブースのデザインを一新し,展示規模も例年の3割以上拡大している。

ダニー・リスバーグ社長
ダニー・リスバーグ社長

  Imaging 2.0は,“Web2.0”が情報共有や双方向性でインターネットの世界の考え方を一新させたように,画像診断の世界でも統合や連携,患者中心,経済的効果といった考え方で製品の開発やサービスの提供を行うことで,新しい画像診断のあり方,放射線科への貢献を果たしていくというコンセプトである(フィリップスエレクトロニクスジャパンのダニー・リスバーグ社長コメント)。展示では,Imaging 2.0の3つのポイントであるClinical Integrartion & colaboration(パープル),Patient Focus(オレンジ),Improved Economic Value(グリーン)を色分けして展示,説明を行っていた。

“Imaging 2.0”のコンセプトでブースデザインも一新
“Imaging 2.0”のコンセプトでブースデザインも一新

●MRI―dstream技術を搭載した新ブランド“Ingenia”を発表

  MRは,ブランド名をAchievaから変更し,“Ingenia(インジニア)”という新しいブランド名で,3.0Tと1.5Tの新製品を発表した(日本国内薬事未承認)。Ingeniaのキーワードは「Digital Broadband MR」。本体のコイルの部分にアナログデジタル変換器(以下、ADC)の部分をすべて収納したことで,チャンネル数は無制限(チャンネルフリー)となった。従来は,AD変換を行う処理装置がある機械室までアナログケーブルで送信していたため,信号の減衰が発生していたが,Ingeniaでは,ADCをコイル内に統合することで,コイルからデジタル信号をダイレクトに送信できるため,光ファイバーケーブルによる減衰のない伝送が可能になった。このdStream技術によって,腹部領域でのSNRを従来に比べて40%向上した。他社のMRIでも,ADCをマグネットに搭載する機種があるが,ベッドの可動距離分のアナログケーブルが必要となっていた。Ingeniaでは,コイル内にAD変換器を統合したことで信号ロスをゼロにした。

  さらに,これまでチャンネル数はADCのボードの数で決定されていたが,Ingeniaではコイル内に統合したことで本体からの信号がデジタル化され,チャンネルという概念から開放された。今後さまざまなコイルが登場しても,200でも300チャンネルでも関係なく利用できる。これによって,医療機関はコイルを購入するだけで,機器のアップグレードの必要がなくなるという。

  テーブル内に,200cmのposteriorコイルを内蔵し,頸椎から足先までカバーする。頭頸部コイルとTorsoコイルを2つ使うことで,全身撮影が可能になる。SmartSelect機能で,撮像部位によって最適のコイルエレメントを自動で選択するため,コイルのセッティングをしなくても常に最適な条件で撮像できる。また,dStream技術によってコイルの軽量化も図られており,検査スタッフの負担を軽減し,検査スループットの向上も期待できる。

  本体は,開口径70cmのオープンボアとなり,従来からのアンビエントなライティングとあわせて検査環境にも配慮され,より快適な検査が行える。また,ボア径を拡げたにもかかわらず,磁場の均一性も向上している。現場スタッフの負担軽減と,SNRの向上による診断医の読影を支援,容易なアップグレードによる病院経営への貢献と,すべてのニーズに応えるMRIとアピールした。

「Digital Broadband MR」として登場したIngenia 3.0T
「Digital Broadband MR」として登場したIngenia 3.0T

ADCをコイルに内蔵し,SNRの向上,コイルの軽量化を実現
ADCをコイルに内蔵し,SNRの向上,
コイルの軽量化を実現

コイルのコネクタから光ファイバーで転送
コイルのコネクタから光ファイバーで転送


【MR先端講演会を11月28日に開催】

  フィリップスエレクトロニクスジャパンは,RSNA初日の11月28日の夜,「MR先端技術講演会 RSNA 2010」を,Park Hyatt Chicagoで開催した。これは,同日,Technical Exhibitsで発表された新しいMRIであるIngeniaの新技術や特長について,すでに導入した施設からの臨床報告を中心に,日本のユーザー向けに紹介するイベントとして企画された。

  フィリップスヘルスケア グローバル MR 事業部のConrad Smit氏の挨拶に続いて,RSNAでの展示内容と新しいMRIのIngeniaについて,特に技術的なポイントを中心に同社の門原 寛氏が説明を行った。Ingeniaでは,最大FOV 55cmで均一性の高いマグネットを搭載し,dStream技術による40%のSNRの削減とdSコイルなどによるスループットの向上,Multi Transmit 4D搭載による心臓,小児領域への対応などが可能になると説明した。

  次に「新技術による臨床応用について」と題して,東海大学の今井裕教授を座長として,発表されたばかりのIngeniaの臨床的な有用性について,1.5TをUtrecht UniversityのTim Leiner氏が,3.0TをUniversity of MichiganのSuresh Mukherji氏が講演した。Leiner氏は,Ingeniaの広い開口径と簡単なセットアップによる検査効率の向上,高いSNRによる診断への寄与を報告した。Mukherji氏は,体幹部におけるSNRの向上と撮像の高速化で,3TにおいてもWhole-body MRIが可能になるとして,DWIBSやQuantitative Imagingへの可能性を語った。

  最後に,日本のフィリップスエレクトロニクスジャパンの代表取締役社長であるダニー・リスバーグ氏が,フィリップスは今後“Imaging 2.0”のコンセプトのもとにIngeniaをはじめ,さまざまな製品を展開していくと閉会の挨拶を述べて終了した。

門原 寛氏
門原 寛氏
今井 裕氏
今井 裕氏
Tim Leiner氏
Tim Leiner氏
Suresh Mukherji氏
Suresh Mukherji氏

●Ingenuity ファミリー―次世代の被ばく低減技術iDose4とCT,MRI,PETの融合を実現

  今回,128スライスCTとしてIngenuity CT,そのCTとPETを組み合わせたIngenuity TF PET/CT,3TMRIとPETを組み合わせたまったく新しいIngenuity TF PET/MRの3機種を“Ingenuity(創意,工夫)”の名称でラインアップした。


●Ingenuity CT  

  Ingenuity CT(日本国内薬事未承認)は,次世代技術を意識して開発された新しい128スライスのCT装置。第4世代の逐次近似画像再構成法“iDose4”が,新しいユーザーインターフェイスにインテグレートされて装備されている。iDose4は,第1世代のFiltered Back-Projection(FBP)法,第2世代のイメージベースの逐次近似法,第3世代のraw dataベースの逐次近似法に続く,第4世代の逐次近似法となる。iDose4では,画像のクオリティは下げずに最大で80%の被ばく低減を実現したり,被ばくを増やさずに空間分解能を最大68%向上させたりと,被検者にあわせて被ばく線量と画質をフレキシブルに対応できる。また,新たにアーチファクト防止機能を装備し,画質を向上した。さらに,NPS(Noise Power Spectrum)のフィッティングを従来画像と同様のカーブでDe-Noiseできるため,違和感のない自然な画像の表示が可能だ。また,超高速リコンストラクタの“Rapid View IR”によって,再構成に必要な計算時間を従来のFBP法と同等まで縮めている。

  Ingenuity CTの新しいユーザー・インターフェイスでは,“Dose Right Index”というパラメータによって,自由度の高い設定を実現し被ばく低減と画質の向上を高いレベルで選択できる。また,“SyncRight”では,操作コンソール上からメドラッド社インジェクタの操作を可能とし,造影検査一連をコンソール上で確認でき,ワークフローの改善に貢献する。

逐次近似再構成法「iDose<sup>4</sup>」を標準装備したIngenuity CT
逐次近似再構成法「iDose4」を標準装備したIngenuity CT

第4世代の被ばく低減法であるiDose4を発表
第4世代の被ばく低減法であるiDose4を発表

iDose4ではナチュラルな画像が得られる
iDose4ではナチュラルな画像が得られる


●Ingenuity TF PET/CT  

 Time-of-Flight(TOF)法を搭載したPET/CTであるGEMNI TFシリーズに対して,新しいシリーズのPET/CTとして発表されたのが,Ingenuity TF PET/CTである。CT部分にはIngenuity CTを採用し,TOF技術を搭載したPETと組み合わせている。ボア周辺の形状を変更して,開口径は変わらないものの,より開放感を高めたデザインになっている。CTに128スライスのIngenuity CTを採用したことで,心臓領域への適応も可能だ。被ばく線量低減と画質の向上を図るため,PET側の画像再構成を更新し,従来の核医学のガンマカメラで採用されていた“Astonish TF”を搭載して,コントラスト分解能を30%向上している。CT側にはiDose4が適用されることから,画質の向上と同時にハードウエアも変更して,収集時間,再構成のスピードアップを図ったことで,スループットが向上し,1日20人以上の検査が可能になる。

Ingenuity CTを採用したPET/CT Ingenuity TF PET/CT
Ingenuity CTを採用したPET/CT Ingenuity TF PET/CT

PET部分の画像再構成法も一新し,コントラスト分解能を向上
PET部分の画像再構成法も一新し,コントラスト分解能を向上


●Ingenuity TF PET/MR  

  Ingenuity TF PET/MRは研究施設向けの製品だが,全世界ですでに4台が稼働を開始し,スイスのジュネーブ大学とニューヨークのマウントサイナイ病院では臨床画像が得られるなど,製品レベルでは他社に一歩先行している。3TのAchievaとTOFのPETを組み合わせた構成で,2つのガントリの中央に設置したテーブルが回転してMRとPETの撮影を行う。MRのコイルをつけたままPETの撮影が可能なため,位置ズレなども最小限に抑えることができる。乳房などもそのままの姿勢で撮影でき,別々に撮影した画像をフュージョンさせるのとは異なる,質の高いデータが得られる。また,PETの吸収補正をMRの画像をもとに行っており,被ばく低減につながる。PET側では,MRIの磁場の影響を防ぐため,ガントリ内のフォトマルの部分にシールドを施し,ICチップの配列を磁場の方向に合わせるなど,MRIとの融合のための開発が行われている。MRIとPETの機能イメージの融合という、,今後への期待の大きい装置である。

Ingenuity TF PET/MRはすでに世界で4台が稼働する。奥がMR,手前がPETのガントリ
Ingenuity TF PET/MRはすでに世界で4台が稼働する。
奥がMR,手前がPETのガントリ

中央のテーブルが回転して,位置ズレの少ない画像を収集する。
中央のテーブルが回転して,
位置ズレの少ない画像を収集する。

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