キヤノンメディカルシステムズ,「Advanced Imaging Seminar 2025」をオンラインで開催

2025-3-19

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オンライン開催された「Advanced Imaging Seminar 2025」

オンライン開催された
「Advanced Imaging Seminar 2025」

キヤノンメディカルシステムズ(株)は,2025年3月15日(土),「Advanced Imaging Seminar 2025」をオンラインで開催した。毎年春に行われている本セミナーでは,MRI,CT,Healthcare IT(HIT)の最新技術とその臨床応用がユーザーから報告される。今回は,MRI 2演題,CT 2演題,HIT 1演題のほか,基調講演が設けられた。

はじめに,同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏が挨拶に立ち,わが国におけるX線CT(以下,CT)の臨床稼働の歴史について言及した。同社の前身である東芝メディカル社が,1975年に日本で最初のCTである英国EMI社製装置を導入してから今年で50年となる。その後,CTは国産化され,今では広範囲を高精細に,わずか数秒で撮影できるようになり,その結果,より短時間かつ低被ばくで人体の情報が得られるようになった。瀧口氏は,このような50年にわたるCT開発の流れを概説した上で,同社が開発したCTをはじめとした多くのモダリティやHIT領域の製品は,現在,世界150以上の国と地域で使用されていると強調。また,今後は個別化医療のさらなる推進に向けて,より高精細なデータを高精度に解析し,その情報をより活用しやすい形で臨床に届けていくために,新たな開発を進めていくとの抱負を述べた。

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

 

次に,基調講演として,土原一哉氏(国立がん研究センター先端医療開発センター)が,「データ・モダリティ融合による革新的医療技術開発」をテーマに講演を行った。土原氏は,ゲノム解析技術の臨床実装や,大規模臨床ゲノム統合データベースの構築など,アカデミア主導創薬基盤の開発・運用に従事しており,近年は産学公民連携による創薬エコシステム構築などにも取り組んでいる。こうした背景の中,同センターと同社は,次世代CTである国産初のフォトンカウンティングCT(PCCT)の早期実用化に向けた臨床研究を行っているとし,病理像に近似した高精細画像が得られ,かつ生体内の物質の正確な弁別も可能なPCCTは,創薬などの基礎研究・臨床研究においても新たな知見をもたらす可能性があると示唆した。また,同センターでは,将来的に患者の個別化医療に資するリアルタイムのデータ収集の柱として,同社の「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」などを用いた技術開発に取り組んでいると述べた。

土原一哉 氏(国立がん研究センター先端医療開発センター)

土原一哉 氏
(国立がん研究センター先端医療開発センター)

 

続いて,MRI,CT,HITの講演が行われた。座長は東 美菜子氏(宮崎大学)と森 菜緒子氏(秋田大学)が務めた。
MRI Sessionの1演題目は,山城尊靖氏(箕輪市立病院)が「国産マグネットとPIQEがもたらす3T MRIの新たな展望」と題して講演した。同院では2024年4月に,同社の3T MRI「Vantage Galan 3T / Supreme Edition(以下,Supreme Edition)」が稼働を開始した。Supreme Editionは,人工知能(AI)技術を生かすためにハードウエアが一新されている。自社開発の3Tマグネットの採用により磁場均一性が向上したほか,傾斜磁場コイルやプラットフォームも一新され,歪みの少ない安定した高画質と広い撮像視野(FOV)が得られる。また,超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」などのAIソリューションが搭載されており,画像の高精細化と撮像時間の短縮が可能となっている。山城氏は,同院におけるSupreme Editionの主な選定理由として新型マグネットとPIQEを挙げ,症例を提示してそれぞれの有用性を述べた。特に,PIQEによって, 高分解能画像と撮像時間短縮の両立が可能となり,トレードオフという概念を覆すものであるとの見解を示した。
2演題目は,小澤良之氏(藤田医科大学)が,「Vantage Galan 3T / Supreme Editionが拓く画像診断の新たな可能性」と題して,自社製マグネットによる磁場均一性の向上と,新たなソフトウエアであるPIQEおよび「Zoom DWI」の特長などを報告した。これらのうち,Zoom DWIは,拡散強調画像(DWI)における小FOV撮像を可能とする技術。励起パルスを再収束パルスに対して特定の角度だけ回転させることで,PE方向の折り返しアーチファクトのない撮像を行い,FOVを絞った高分解能DWIを取得することができる。小澤氏は,Zoom DWIにPIQEを併用した膵臓がんや前立腺がんなどの症例画像を提示し,従来の撮像と比べ歪みが少なく,解剖構造がより明瞭に描出できると述べた。

座長を務めた森 菜緒子 氏(秋田大学:左)と東 美菜子 氏(宮崎大学:右)

座長を務めた森 菜緒子 氏(秋田大学:左)と東 美菜子 氏(宮崎大学:右)

 

山城尊靖 氏(箕輪市立病院)

山城尊靖 氏(箕輪市立病院)

 

小澤良之 氏(藤田医科大学)

小澤良之 氏(藤田医科大学)

 

CT Sessionでは,1演題目として,山口隆義氏(華岡青洲記念病院)が,「新たなディープラーニング再構成CLEAR Motionがもたらす心臓CT技術の躍進」と題して講演した。同院では,2024年11月に320列 / 640スライスCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition(以下,INSIGHT Edition)」が導入され,現在,同社のCT装置が3台稼働している。INSIGHT Editionは,AIを活用した検査自動化技術「INSTINX」や,PIQE,ディープラーニングを用いた体動補正技術「CLEAR Motion」などが搭載されているほか,最速0.24s/rotのガントリ回転速度を実現し,心臓CTの適用拡大に寄与する装置となっている。講演で山口氏は,PIQEの有用性を述べたほか,CLEAR Motionの技術的特長や症例画像を示した上で,CLEAR Motionはモーションアーチファクトを高度に抑制し,1心拍のハーフ再構成でこれまで以上の画像クオリティが得られる再構成法であるとまとめた。
2演題目は,吉満研吾氏(福岡大学)が,「上腹部領域におけるECV mapの有用性〜SURESubtraction Iodine Mapping vs Spectral Imaging System〜」と題して,INSIGHT Editionを用いた細胞外容積分画(ECV)の評価などを報告した。ECVの計測法として,従来から使用している高精度サブトラクション法「SURESubtraction Iodine Mapping(以下,SURESubtraction)」と,新しい医用画像解析ワークステーション用プログラム「Abierto Vison」のサブトラクション機能,Spectral scan(dual energy)にて取得できるヨード(-水)密度画像法のそれぞれを用いたECVについて比較した。PIQEを適用した画像を使用し,SURESubtractionとAbierto VisonでのECV値を比較したところ,高率に一致し高い互換性を認めた。一方,SURESubtractionとSpectral scanでのECV値には有意な相関はあるものの,互換性は現状では不十分であると述べた。また,今後,より簡便かつ正確なECV mapが得られるようになれば,臨床応用が広がる可能性があるとの期待を示した。

山口隆義 氏(華岡青洲記念病院)

山口隆義 氏(華岡青洲記念病院)

 

吉満研吾 氏(福岡大学)

吉満研吾 氏(福岡大学)

 

最後のHIT Sessionでは,佐野優子氏(京都第一赤十字病院)が,「骨経時差分処理アプリケーションの活用による読影精度の向上と業務支援」と題して,Abierto RSSの「Temporal Subtraction For Bone(TSB)」の有用性を報告した。骨の読影においては,骨転移の見落としの不安や,全身骨スクリーニングでは多大な労力を要するなどの課題があるほか,医療を取り巻く現状として働き方改革や病院のデジタルトランスフォーメーション(DX)化などの必要性に迫られており,読影支援AIアプリケーションはもはや必須であると述べた。また,TSBの機能や同院での解析結果の参照方法などを紹介した上で,TSBが有用であった症例を提示。TSBの利点として,粗大な骨転移の見落とし防止,微小な骨転移の検出が可能,骨転移の変化を客観的に評価可能,予期せぬ骨転移の検出などを挙げた。さらに,画像診断管理加算3,4の算定要件でもある画像人工知能安全精度管理は,放射線科のDX化を促進し,業務効率化に寄与するため,積極的に活用したいと述べた。

佐野優子 氏(京都第一赤十字病院)

佐野優子 氏(京都第一赤十字病院)

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
広報室
https://jp.medical.canon

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