コニカミノルタ,DDR臨床セミナーをオンラインで開催
ICU・クリティカル領域などの最新の臨床応用を紹介

2025-2-28

コニカミノルタ

X線装置


600名超が視聴登録し,講演後は多くの質問が寄せられた

600名超が視聴登録し,講演後は多くの質問が寄せられた

コニカミノルタ(株)は2025年2月22日(土),「DDR臨床セミナー~胸部単純画像の基本からX線動態画像の臨床での活用まで~」をオンラインで開催した。同社が開発したデジタルX線動態撮影システム(Dynamic Digital Radiography:DDR)は,X線の形態イメージングに加えて,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」に搭載された各機能により生体内の動きを可視化し,定量化する低侵襲な機能イメージングである。2022年3月にDDR対応のコニカミノルタ社製回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01」が発売されたことでベッドサイドやICUでのDDRも可能になり,現在,世界で350超の施設で導入されている。本セミナーは,2018年10月に第1回X線動態画像セミナーとして開催以降,第5回まで行われている。今回は名称を新たにし,胸部X線画像の基礎やDDRのICU・クリティカル領域での臨床応用などについて講演が行われた。

冒頭の同社の儀同智紀氏(ヘルスケア事業本部長)の挨拶の後,小野浩二郎氏(ヘルスケア事業本部開発統括部)が「“Dynamic Digital Radiography” How To Use DDR」と題してメーカー講演を行った。小野氏は,DDRの製品概要や撮影方法,動態解析技術などについて解説し,DDRが臨床業務と意思決定の改善に果たす役割について期待を示した。

セミナー前半では,町田治彦氏(東京女子医科大学附属足立医療センター放射線科教授)が座長を務め,いち早くAeroDR TX m01を導入し,ポータブルのDDRを開始した聖マリアンナ医科大学から3名の演者が登壇,ポータブルX線検査の基礎やDDRの臨床応用に関して講演が行われた。

町田治彦 氏(東京女子医科大学附属足立医療センター)

町田治彦 氏(東京女子医科大学附属足立医療センター)

 

1演題目として,「本当は教わりたかった!? ポータブル胸部X線写真の読み方2025~動態検査での知見も交えて~」と題して松本純一氏(聖マリアンナ医科大学救急医学講師)が講演を行った。ICUなど最も重症な患者が対象となるポータブル胸部X線撮影は,最も質の高い画像が求められるのと同時に,縦隔影の形状や胸水や気胸の分布などが臥位と立位では異なるため,読影にも注意を要する。松本氏は,ICUで高頻度に行われる胸水(血胸)や気胸の診断について解説し,ポータブル撮影は優れたモニタリングツールであるとした。また,CTとポータブル撮影画像の対比は読影の質の向上のために必須だが,そこにDDRが加わることで患者の移動なしにより詳細な病態解析が可能になり,臨床にもたらす価値は非常に大きいと述べた。

松本純一 氏(聖マリアンナ医科大学)

松本純一 氏(聖マリアンナ医科大学)

 

次に,山田万里央氏(聖マリアンナ医科大学病院救命救急センター)が「動態デジタル胸部X線撮影〜ICU呼吸評価の新時代に向けて〜」と題して,ICUでのポータブル胸部DDRの活用について講演した。山田氏は,ICUでのポータブル胸部DDRの利点として,(1)患者の移動が不要で人工呼吸器の離脱を判断するSTB評価などが可能,(2)その場で撮像可能なため医療処置前後の評価ができる,(3)人工呼吸器の横で撮像できるため他デバイスと同時評価が可能,の3点を挙げた。また,気管支ステント留置後症例などを提示し,DDRの定性的評価や解析機能による可能性について紹介した上で,今後の展望としてプロトコールの標準化やノイズ除去のアルゴリズム,解析ソフトウエアの向上など技術の改良に期待を示した。

山田万里央 氏(聖マリアンナ医科大学病院)

山田万里央 氏(聖マリアンナ医科大学病院)

 

3演題目として,診療放射線技師としてDDRを支える初見佳菜氏(聖マリアンナ医科大学病院診療放射線技術部)が「回診車での胸部X線動態撮影における散乱線分布と防護策」と題して講演を行った。初見氏は,DDRを用いた胸部X線動態撮影(Dynamic Chest Radiography:DCR)が回診車に拡張されたことで,入院患者の急性肺塞栓症の診断や横隔膜麻痺などの評価,一時的な透視の代用として活用可能となり,機能情報という新たな価値が加わったと述べた。一方,通常の回診車による胸部単純撮影(Conventional Chest Radiography:CCR)に比べ散乱線量の増加が予測されるため,医療従事者の職業被ばくと隣接するベッドの患者の公衆被ばくについて検討を行った結果,両者は散乱線分布の傾向は同じものの,DCRでは照射時間に伴う散乱線量の増加により退避場所の制限が厳しくなることから,撮影用リモコンの使用などによる適切な距離の確保や照射時間を含めた撮影条件の最適化,防護衝立の活用が有用であることを示した。最後に,回診車によるDCRにあたっては,診療放射線技師がDCRの特性を十分に理解した上で,周囲への配慮やマネジメントを行う必要があるとまとめた。

初見佳菜 氏(聖マリアンナ医科大学病院)

初見佳菜 氏(聖マリアンナ医科大学病院)

 

休憩を挟んで行われたセミナー後半では,桑鶴良平氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院院長)を座長として,摂食嚥下領域で初となる報告を含むICU・麻酔(クリティカルケア)領域に向けた臨床応用に関する4演題の講演が行われた。

桑鶴良平 氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院)

桑鶴良平 氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院)

 

まず,金谷明浩氏(東北大学麻酔科学・周術期医学分野)が「肺移植術後の呼吸管理におけるデジタルX線動画撮影システムの有効性」と題して講演を行った。肺移植術後は,移植肺の虚血再灌流障害や肺水腫,術後胸腔内出血などにより人工呼吸器離脱に難渋することが少なくない。金谷氏は,肺移植後に虚血再灌流障害による肺水腫や術後頻呼吸が見られた症例に対しDDRのKINOSISに搭載された各モードを用いることで,換気の有無や横隔膜や横隔神経の動きなど,従来の静止画では判定できない部分も確認でき,適切な処置につながった事例を紹介。イレギュラーな状況が起こりうる肺移植の術後管理において,DDRはきわめて頼もしいテクノロジーだと述べた。

金谷明浩 氏(東北大学病院)

金谷明浩 氏(東北大学病院)

 

次に,宮﨑裕也氏(戸田中央総合病院麻酔科)が「呼吸不全の手掛かりが,呼気相に!~可視化される見えない病態~」と題して講演を行った。通常,単純X線撮影は吸気で撮影するが,呼吸を動的に表示するDCRにより,従来は見えなかった病態が見えるようになる。宮﨑氏はこのような前提に立ち,浸潤影とP/F比に乖離がある症例において,DCRにより呼気相での浸潤影の悪化が確認され,呼気終末陽圧(PEEP)調整に活用した事例などを報告した。また,DCRは呼吸不全の手がかりや換気分布の異常,治療効果の確認が可能であることから,単純X線画像にDCRや電気インピーダンストモグラフィ(EIT)が加わることで,より充実した画像評価が可能になるとし,提示した症例以外でも呼吸不全におけるさまざまな活用が期待されるとした。

宮﨑裕也 氏(戸田中央総合病院)

宮﨑裕也 氏(戸田中央総合病院)

 

3演題目として,小松聖史氏(藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座)が「藤田医大集中治療部のDDR臨床応用」について報告した。小松氏は,集中治療室におけるポータブルDDR撮影のメリットについて,移動の必要がない上,ほかの画像診断と比べて技術的なバラツキがなく,視覚的な変化であり理解しやすいことを挙げ,同院での使用例などを提示した。また,DDRが呼吸困難の一つである努力呼吸の客観的なモニタリングツールとして期待できるのではないかとした。一方で,肉眼的なわかりやすさは所見の言語化が難しく,研究デザインとして組みにくいという面があるが,症例の蓄積により新たな知見や研究の種が生まれることが予想されるとして,使用頻度の増加が今後の検討課題であると述べた。

小松聖史 氏(藤田医科大学医学部)

小松聖史 氏(藤田医科大学医学部)

 

最終演題として,小山祐司氏(東海大学医学部付属八王子病院リハビリテーション科准教授)が「新しいX線嚥下動態撮影の可能性~急性期リハビリテーション医療の視点から~」と題し,ポータブル装置によるベッドサイドでの嚥下評価の取り組みについて報告した。海外のメタアナリシスでは,抜管後の重症患者のうち抜管後嚥下障害の発生率は41%,うち36%が不顕性誤嚥とする報告があるが,嚥下造影検査はX線テレビ室への移動を必要とし,嚥下内視鏡は出血や不顕性誤嚥の見落としのリスクが指摘されている。そこで小山氏らは,ポータブルDDRによるベッドサイドでX線嚥下動態撮影による限定的嚥下障害評価の可能性を検証し,その結果を報告した。また,嚥下訓練法への活用も検証し,誤嚥防止効果の向上に期待を示した。

小山祐司 氏(東海大学医学部付属八王子病院)

小山祐司 氏(東海大学医学部付属八王子病院)

 

最後に,同社の青野一大氏(ヘルスケアカンパニー事業管掌)が閉会の挨拶を述べ,会を締めくくった。

 

●問い合わせ先
コニカミノルタジャパン株式会社
セミナー運営事務局
mail: kmj-xray@konicaminolta.com
https://www.konicaminolta.jp/healthcare/

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