エルピクセル,「医療AIの未来を共に創る」をテーマに「EIRL Summit 2024」を開催
2024-12-19
パネルディスカッション風景
人工知能(AI)技術を用いた画像診断支援ソフトウエア「EIRL」シリーズなどを中心に事業展開を行っているエルピクセル(株)は,2024年12月7日(土),御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区)およびオンラインにて「EIRL Summit 2024」を開催した。EIRLは,2019年に頭部領域を対象とした「EIRL Brain Aneurysm」をリリースして以降,これまでに頭部,胸部,大腸の3つの領域で9製品をリリースし,47都道府県で累計800以上の医療施設に導入され,解析件数は640万件を超える(2024年6月時点)など,日本における画像診断支援AIをリードし続けている。画像診断支援AIの導入を検討している医療機関を対象に開催された今回のEIRL Summit 2024では,「医療AIの未来を共に創る」をテーマに掲げ,EIRLユーザーの医師らによる講演が行われた。また,講演後には,パネルディスカッションも行われた。
冒頭,開会の挨拶に立った同社代表取締役社長の鎌田富久氏は,医療分野でAIを実用化するための難しさや,そのような中でも近年では徐々に普及が進んでいる現状について述べた。また,製品のさらなる進化のためにユーザーのフィードバックを基に製品の改善を続けているとし,本会においても今後の課題や将来の可能性に言及されることへの期待を示した。
講演は,前半に3演題,休憩を挟み後半に2演題が設けられた。
前半ではまず,同社取締役COOの福田明広氏が,「画像診断支援AIの“これまで”と“これから”」と題して講演した。画像診断支援AIで解決したい課題として,医師不足や画像診断における見落としなどを挙げた上で,同社では医師に寄り添うAIの開発や,医師とAIによるダブルチェックが当たり前となる社会の構築,ファーストリードを見据えたAIの開発に取り組んでいると述べた。また,EIRLの進化の歴史として,頭部,胸部,大腸,救急などの領域で貢献するソフトウエアの特長などを紹介。さらには,パートナー企業のアプリケーションをEIRLに搭載して支援領域の拡大をめざしているとし,現在,複数のプロジェクトが進行中であると述べた。
京都大学大学院医学研究科の坂本 亮氏は「胸部CT領域のAI:放射線科医の期待と展望」として,同大学に導入されている胸部CT領域を対象としたソフトウエア「EIRL Chest CT」の使用経験などを報告した。同院での調査の結果,胸部CTの読影を行う医師の多くは病変の見落としの経験があるほか,読影支援AIへの関心も高いと述べた。また,見落とされる病変は10mm以下の小結節が多いものの,10mm以上でも病変の位置などによっては見落とされることもあると指摘。その上で,実際の見落とし例に対し,胸部CT画像から関心領域を抽出するEIRL Chest CTを適用したところ,病変の指摘が可能であったと述べた。さらに,業務効率化におけるAIへの期待として,AI出力とビューワとの効率的な連携が必要であるとし,現在,同社などとの共同研究が進行中であると紹介した。
大宮シティクリニックの君塚孝雄氏は,人間ドックの胸部一般撮影でAI支援を使いこなす」と題し,胸部X線画像から病変候補を検出するAI「EIRL Chest Screening」の使用経験を中心に報告した。同院では,2024年1月にEIRL Chest Screeningを導入以降,一次読影者,二次読影者共に読影時にはAIを用いている。EIRL Chest Screeningには,異常陰影を検出する「EIRL Chest XR」や「EIRL X-Ray Lung nodule」,胸腔内空気含有面積や心胸郭比,縦隔幅などを自動計測する「EIRL Chest Metry」という3つのソフトウエアが包括されているとし,これらを用いた実際の症例を提示した。その上で,AIを使用することで要生検例の見逃しは減少すると述べた一方,AIの偽陽性の傾向を把握する必要があるなど,AI使用における留意点などを指摘した。
講演の後半では,はじめに(株)AIメディカルサービス(以下,AIM) / ただともひろ胃腸科肛門科の多田智裕氏が,「Artificial Intelligence(AI)と内視鏡診断」と題して講演した。エルピクセル社とAIM社は内視鏡画像診断AIの社会実装の加速に向けて戦略的な業務提携を行っている。AIM社では,同社が開発した内視鏡画像診断支援ソフトウエア「gastroAI-model G」に加えて,2024年5月からはエルピクセル社の大腸ポリープ候補の検出AI である「EIRL Colon Polyp」を,「gastroAI model-EIRL」の販売名で提供開始した。講演で多田氏は,gastroAI-model GやgastroAI model-EIRLの有用性を,症例や論文などを提示して報告したほか,2024年6月に大腸内視鏡診断支援AIが保険収載されたことなどを紹介した。
続いて,エムスリーAI(株)/エムスリー(株)AIラボの杉原賢一氏が,「M3AIプラットフォームのご紹介」と題して講演した。エムスリー社およびエムスリーAI社は,AI製品の自社開発のほか,AIに関する研究開発から販売流通までを支援する事業を展開している。杉原氏は,エムスリーAI社が提供するAIプラットフォームや同社の事業の概要などを紹介した上で,同社が販売する製品として,胸部X線関連のEIRL X-Ray Lung noduleやEIRL Chest Screeningと組み合わせて使用する間質性肺疾患の検出支援AI「BMAX」の開発背景や有用性を報告した。さらに,ワークフローを改善するAIとして,心エコー動画データを自動認識し,各パラメータとガイドラインに基づく心機能および疾患評価を行うソフトウエア「Us2.ai」を紹介した。
講演に続き,パネルディスカッションが行われた。エルピクセル(株)執行役員の古田桃子氏がモデレータを務め,大宮シティクリニックの中川 良氏,大阪大学医学部附属病院の廣瀬智也氏,津端内科医院の津端俊介氏,国立がん研究センター中央病院の渡辺裕一氏が登壇し,「画像診断支援AIの現状と将来の展望」をテーマに議論を交わした。各登壇者が,画像診断支援AIの導入および使用経験などを踏まえ,AI導入の意義や期待,課題などについて活発に意見を述べた。AIの活用においては工夫すべき点はあるものの,実際に使用することでその有用性を実感できるとの声が多く聞かれた。
●問い合わせ先
エルピクセル株式会社
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