米盛病院を運営する社会医療法人緑泉会とシーメンスヘルスケア,医療機器環境をベースとしたパートナーシップ契約を締結し記者発表を開催
——自走式外科用モバイル3D Cアーム装置「CIARTIC Move」を国内初導入
2024-11-15
社会医療法人緑泉会 米盛病院 / 与次郎米盛クリニック外観
米盛病院を運営する社会医療法人緑泉会(以下,緑泉会:鹿児島県鹿児島市)とシーメンスヘルスケア(株)は,2024年11月12日(火),医療機器環境のアウトソーシング(managed equipment services:MES)をベースとしたパートナーシップ契約(バリューパートナーシップ)を締結したことを発表した。これに伴い,同日,米盛ラーニングセンター(同院内)にて共同記者発表会が開催され,本パートナーシップの概要やねらい,展望などが報告された。
MESとは,医療機器やソフトウエアの導入,保守・管理などを含めた医療機器環境の構築を第三者企業が受託するサービス。バリューパートナーシップでは,同社が投資して施設内に整えた医療機器環境を,医療機関側が定額で利用することができる。従来,機器の購入や保守・管理,ソフトウエアのアップデートなどに当たっては,長期にわたる購入計画や予算の立案が必要となるほか,医療機関側の支出が一時的に大きく増加し,経営を圧迫することが課題となっていた。MESを利用することで,医療機関においては支出が均一化されることに加え,機器導入計画・予算計画の作成業務の負荷を軽減することができる。本パートナーシップでは,今後14年間にわたり,同院の医療機器導入・整備を同社が定額で受託する。同院が注力している整形外科領域をはじめ,脳神経外科,循環器内科,心血管外科など専門性の高い疾患領域における医療機器環境を5〜6年かけて刷新することが予定されており,2024年8月にはその第一弾として,同社の自走式外科用モバイル3D Cアーム装置「CIARTIC Move」が国内で初めて導入された。
記者発表でははじめに,同社代表取締役社長の櫻井悟郎氏が,「高度な医療の提供による地域への貢献を目指すパートナーシップ」と題して講演した。同社はイメージング,診断,治療の分野において,独自の強みを生かした幅広い製品群を提供するほか,デジタル・データ・人工知能(AI)の活用や技術を駆使することで,医療機関の課題解決に取り組むエンタープライズサービス(ES)を提供している。櫻井氏は,ESの内容として変革支援型コンサルティングとMESをはじめとした経営支援型アウトソーシングを挙げ,特にMESでは医療機器環境のロードマップを策定し医療機器調達における支払い額を平準化するなどによって,安定した経営をサポートすると述べた。また,医療機器導入のロードマップを示し,すでに導入されているCIARTIC Moveのほか,CTやX線透視・撮影装置,SPECT,MRI,モバイルCアームなどの導入を順次進めていくと紹介した。
なお,現在,全世界で160を超える施設がSiemens Healthineersとバリューパートナーシップ契約を締結している。その中で,病院経営に関するさまざまな経験や知見を積極的に発信したいという意向を持つ施設をESグローバルリファレンスサイトとして登録しているが(2024年10月現在,世界6か国に8施設),米盛病院は日本初の登録が予定されている。挨拶に立ったドイツ本社Enterprise Services Global HeadのJoao Seabra Ferreira Pinto氏は,パートナーシップ契約の締結やサイトへの登録について感謝の意を述べるとともに,同社のグローバルネットワークや最先端の技術などを用いて,病院経営やワークフローおよび臨床的なアウトカムの向上に取り組んでいきたいと語った。
続いて,緑泉会理事長・米盛病院院長の米盛公治氏が,「社会医療法人緑泉会および米盛病院の取り組みと今回のパートナーシップについて」と題して講演した。緑泉会は,米盛整形外科医院を前身とする米盛病院と,与次郎米盛クリニック,介護老人保健施設,居宅介護支援事業所,訪問看護ステーションを運営し,地域の医療,介護,福祉を支えている。なかでも米盛病院は,救命救急センター,県災害拠点病院,県DMAT指定病院などの施設認定を受けているほか,ハイブリッドERや民間救急ヘリ(民間医療機関が保有する救急ヘリは全国で2例のみ)を有し,高度な急性期医療を提供している。現状の医療体制を維持・発展させ,よりいっそう地域医療に貢献していくためには,高齢化による救急搬送件数の増加や働き手不足などの課題を解決する必要があるが,米盛氏はそのための強力な一助として同社とのパートナーシップ契約を締結したと述べた。また,パートナーシップへの期待として,同社の技術・ノウハウを活用した高度医療の提供による治療の質の向上や,ESを活用した治療環境・療養環境の改善および業務効率化などを挙げ,今後さらに地域医療への貢献に邁進していくとの決意を示した。
次に,同社アドバンストセラピー事業本部 事業本部長の荒川泰一郎氏が,「先進機器の導入によるシーメンスヘルスケアの貢献について」と題して,同事業部の代表的な製品ラインアップや網羅する診療領域,本パートナーシップで導入される機器などを紹介した。なかでも,セルフドライビング機能が搭載された革新的な装置であるCIARTIC Moveは,3D撮影を行いながら装置が自動で適切なポジションに移動するほか,ワイヤレスリモコンでの操作も可能なため,スタッフ一人で簡単に操作することができる。荒川氏は,これらの技術によって術中の画像ワークフローを自動化できるため,手術室での人員不足解消やスタッフの負担軽減,装置の移動や位置決めなどに要する時間の削減などに貢献すると強調した。さらに,ドイツ本社Clinical Segment Surgery Global HeadのPeter Seitz氏は,CIARTIC Moveについて,発売後6か月で,すでに世界で1500症例の治療に貢献していると述べた。
最後に,米盛病院副院長・整形外科の鈴木 勝氏が,「CIARTIC Move導入後の感想,今後の期待」と題して講演した。CIARTIC Moveは「人にやさしく,かしこい,はたらきもの」であるとし,具体的な有用性として,タイヤが前後左右に自在に動くため移動がしやすいこと,パワーアシスト機能によって弱い力で簡単に動かせること,ポジションアシスト機能でアーム位置を記憶するため,位置合わせの透視を削減できること,オペレータが交代しても画像の再現性が担保できること,干渉センサによって人・物との接触に対して安全であることなどを挙げた。また,実際の頸椎インプラント手術での活用例を提示したほか,CIARTIC Moveは容易に移動できるため複数の手術室でのフレキシブルな運用が可能であるとし,今後は多くの診療域で活用できるとの期待を示した。
●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
東京都品川区大崎1-11-1ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL 03-3493-7500
https://www.siemens-healthineers.com/jp