第84回日本医学放射線学会「レントゲンの日記念」市民公開講座が開催
——「来て見て触ってみよう!放射線医療」をテーマに,中高生らが体験会に参加

2024-11-1


中高生を中心に放射線医療を学ぶ機会となった市民公開講座

中高生を中心に放射線医療を
学ぶ機会となった市民公開講座

第84回日本医学放射線学会「レントゲンの日記念」市民公開講座が2024年10月27日(日),中小企業活性化センター多目的ホール(宮城県仙台市)を会場に開催された。ヴィルヘルム・レントゲンが1895年11月8日にX線を発見したことにちなみ,公益社団法人日本医学放射線学会では毎年この日を「レントゲンの日」として,市民公開講座などを開催している。今回は,「来て見て触ってみよう!放射線医療」をテーマに,同学会と東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野,東北大学病院が共催。放射線医療に関する講演会と,読影や超音波検査,カテーテル手技の体験会という2部構成でプログラムが組まれた。このうち体験会は中高生を対象(保護者同伴で小学生も参加可能)として,市民公開講座にふさわしい,「来て,見て,触る」機会となった。
講演会では,まず,JRC 2025の第84回日本医学放射線学会総会の会長を務める高瀬 圭氏(東北大学病院放射線診断科教授)が開会の挨拶を行った。高瀬氏は,放射線医療について学んで体験する機会にしたいと述べてから,レントゲンがX線を発見した経緯を説明し,X線の原理や性質について紹介。医療への応用として,画像診断やIVR,放射線治療があることなどを解説した。

高瀬 圭 氏(東北大学病院放射線診断科教授)

高瀬 圭 氏(東北大学病院放射線診断科教授)

 

続いて,「放射線科医のお仕事」と題し,木下 知氏(東北大学病院放射線診断科助教)が中学生男子を主人公にした物語形式で,医療における放射線科医の役割や画像診断の位置づけ,重要性などを紹介。主人公の視点から放射線医療に携わる多職種をサッカーのポジションに例えて,皆が自分の役割を果たしてゴールをめざしていると説明した。その上で,放射線科医になるための道程についても解説した。

木下 知 氏(東北大学病院放射線診断科助教)

木下 知 氏(東北大学病院放射線診断科助教)

 

次に,星 由紀子氏(東北大学病院診療技術部放射線部門主任診療放射線技師)と竹内孝至氏(東北大学病院 診療技術部放射線部門主任診療放射線技師)が登壇し,「放射線技師のお仕事」をテーマに講演した。まず,竹内氏が診療放射線技師になるための進路について説明した上で,その業務は画像診断,放射線治療,管理分析研究の3つに分けられると述べた。そして,患者を撮影するためには優しさと責任感が重要であり,加えて放射線を取り扱うことから法律やガイドラインを順守しなければならないと解説した。さらに,画像診断は星空から目的の星を見つけるようなものであり,放射線科医にきれいな画像を提供することが診療放射線技師には求められるとし,日々の勉強が大切だ強調した。星氏は,一般X線撮影,CT,MRI,放射線治療の原理についてわかりやすく説明し,CTとMRIで撮影した鶏肉の画像やその3D画像などを示した。また,診療放射線技師に対して行ったインタビューを取り上げて,病気の早期発見や予防医療などで,人々の健康な生活に貢献できることがやりがいであるといった回答を紹介した。

星 由紀子 氏(東北大学病院診療技術部放射線部門主任診療放射線技師)

星 由紀子 氏
(東北大学病院診療技術部放射線部門主任診療放射線技師)

 

竹内孝至 氏(東北大学病院 診療技術部放射線部門主任診療放射線技師)

竹内孝至 氏
(東北大学病院 診療技術部放射線部門主任診療放射線技師)

 

この後,「お腹の中を見てみよう」と題して,外山由貴氏(東北大学病院放射線診断科助教)が腹部領域の画像診断を取り上げ,放射線科医がどのようなことをしているのか説明した。戸山氏は,まず画像処理ワークステーションで腹部のVR画像を提示してみせた。そして,腹部の臓器にはそれぞれ,消化する,尿をつくる,ホルモンを調整する,貯蔵・分解をする,血液・免疫にかかわる役割があると,画像を提示しながら説明した。その上で,腹痛における画像診断について,放射線科医がどのようなところに注目して読影しているかを解説した。

外山由貴 氏(東北大学病院放射線診断科助教)

外山由貴 氏(東北大学病院放射線診断科助教)

 

休憩を挟み,影山咲子氏(東北大学病院放射線診断科助教)が,「IVRってなんだろう?」をテーマに講演した。影山氏は,IVRについて,血管撮影装置などの医療機器でリアルタイムに画像を観察しながら穿刺したり,カテーテルを挿入したりする,患者にとって負担の少ない低侵襲な治療であると説明。生検,ラジオ波焼灼療法,椎体形成術,塞栓術,血管形成術など治療法を紹介した。さらに,IVRは放射線科医や診療放射線技師,看護師,画像診断装置やデバイスを提供する企業など,多くの人がかかわっているとして,将来の職業を選ぶ際の選択肢に入れてほしいと述べた。

影山咲子 氏(東北大学病院放射線診断科助教)

影山咲子 氏(東北大学病院放射線診断科助教)

 

講演会の最後は,齋藤 真氏(東北大学病院看護放射線部看護師長)と神尾奈穂氏(東北大学病院看護放射線部看護師)が登壇し,「放射線部ナースのお仕事」と題して講演した。まず齋藤氏が,看護師の仕事は,療養の世話と診療の補助であると説明。なかでも放射線部の看護師は,安全・安心に患者が検査や治療を受けられるように,放射線科医や診療放射線技師と協力して,サポートすることだと述べた。そのためにも,注射では患者の状態の確認,アセスメントを行うことが重要だと説明した。また,神尾氏は,患者の不安や負担を軽減するための声かけや,注射の精度を向上するための超音波診断装置の活用などを紹介。さらに,IVRにおいては患者に寄り添うことと,多職種との連携が大事だと述べた。

齋藤 真 氏(東北大学病院看護放射線部看護師長)

齋藤 真 氏(東北大学病院看護放射線部看護師長)

 

神尾奈穂 氏(東北大学病院看護放射線部看護師)

神尾奈穂 氏(東北大学病院看護放射線部看護師)

 

講演会後には,3部に分かれて体験会が行われた。体験会では,読影,超音波,カテーテルの体験コーナーが用意されたほか,ステントなどの展示ブース,記念写真ブース,相談コーナーなどを設けられた。なお,体験会には,アミン(株),キヤノンメディカルシステムズ(株),コニカミノルタジャパン(株),テルモ(株),(株)フィリップス・ジャパン,富士フイルムメディカル(株),GEヘルスケア・ジャパン(株)が協賛して,画像処理ワークステーションや超音波診断装置などを提供した。
当日は約150名が講演会に来場し,体験会には70名以上の小中高生が参加した。参加者は目を輝かせて,画像処理ワークステーションに表示されたVR画像などを操作したり,プローブで食用ゼリーやファントムを走査したりしたほか,カテーテルの挿入,バルーンステントの拡張などを体験していた。

読影体験コーナーでは,画像処理ワークステーションで解剖を学びながら操作

読影体験コーナーでは,画像処理ワークステーションで解剖を学びながら操作

 

超音波体験コーナーでは,食用ゼリーやファントムを使って走査や穿刺を体験

超音波体験コーナーでは,食用ゼリーやファントムを使って走査や穿刺を体験

 

カテーテル体験コーナーではトレーニングファントムを使ってカテーテルの挿入体験や,パスタに挿入したバルーステントを拡張し,パスタが割れた時の圧力を確認

カテーテル体験コーナーではトレーニングファントムを使ってカテーテルの挿入体験や,
パスタに挿入したバルーステントを拡張し,パスタが割れた時の圧力を確認

 

血管撮影装置をバックにした記念撮影ブース

血管撮影装置をバックにした記念撮影ブース

 

展示ブースでは実物のステントなどを紹介

展示ブースでは実物のステントなどを紹介

 

 

●問い合わせ先
株式会社センキョウ
E-mail jrs-shimin@senkyo.co.jp


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