AWSが医療分野の生成AI活用を推進
記者勉強会で「Amazon Bedrock」の導入事例などを紹介
2024-8-13
生成AIの基盤モデルを豊富に用意するAmazon Bedrock
医療分野でのクラウド,人工知能(AI)などの事業を強化するアマゾン ウェブ サービス ジャパン(同)(AWS)は2024年7月22日(月),同社(東京都品川区)で記者向けの勉強会を開催。生成AIなどの取り組みをアピールした。
AWSは2006年からクラウドサービスを提供しており,現在245の国と地域で数百万の顧客を抱えている。2023年の全世界での売上高は907億5700万ドル。前年比13.3%増と成長を続けている。同社にとって,日本は重要な市場となっており,2011年には東京リージョン,2021年には大阪リージョンを開設。データセンターなどのインフラ設備(アベイラビリティゾーン:AZ)は,東京リージョンが4AZ,大阪リージョンが3AZあり,高い耐障害性を確保したクラウドサービスを提供している。さらに,2023〜2027年に,日本において2兆6000億円を投資し,5兆5700億円のGDP効果,3万500人以上の雇用創出を図るとしている。
同社は,医療分野をはじめとしたヘルスケア領域での事業を拡大している。医療機関をはじめ医療機器・医療情報システム企業に対して,クラウドをベースにしたAIなどのサービスを展開している。今回の勉強会では,パブリックセクターヘルスケア事業本部長の大場弘之氏と,執行役員パブリックセクター技術統括本部長の瀧澤与一氏が出席。大場氏はヘルスケア事業,瀧澤氏が生成AIについて説明した。
先に,登壇した大場氏は,AWSのヘルスケアにおけるミッションとして,個人中心の医療へのアクセスと提供を可能にし,より低コストで成果の向上を推進して,医療データのデジタル化と活用を加速すると説明した。その上で,現状は医療機関で発生するデータの多くが有効に活用されていないと課題を指摘。医療機関や企業,行政,保険者などと協力して,この課題解決に取り組んでいくと述べた。大場氏は,具体的な事例として,藤田医科大学におけるPHR基盤「Fujita Healthcare Platform」を紹介した。Fujita Healthcare Platformは,HL7 FHIRを用いており,連携先医療機関や薬局との情報共有・連携もカバーする。将来的には100万人の患者データをAWS上で保管する予定だ。このほかに医療分野では,国立病院機構の診療データ分析基盤となるデータベース構築,日本医師会ORCA管理機構(株)の「日医標準電子レセプト」のクラウド版の提供もAWSが担っている。さらに,(株)メドレーなどオンライン診療を手がける企業もAWSユーザーだ。地域医療連携においても徳島県の阿波あいネットにおいて,カルテや医用画像データの共有をAWSが支えている。
次いで,瀧澤氏が登壇し,医療における生成AIへの取り組みを説明した。瀧澤氏は生成AIについて,新しいユーザー体験や生産性などの面で,大きなビジネス価値を生み出す可能性を秘めているとし,医療における臨床ワークフロー,ケアマネジメント,患者エンゲージメント,教育と研究,ITと運用での生成AIの活用動向を解説。また,基盤モデルについて紹介して,モデル選択には出力の品質,応答速度,コストのバランスが大切だと述べた。これを踏まえ瀧澤氏は,基盤モデルを提供するAWSのサービスとして,「Amazon Bedrock」を取り上げた。Amazon Bedrockは,豊富な基盤モデルが特長であるが,それ以外にも暗号化技術などによりデータのプライバシーとセキュリティを確保しており,機微な情報を扱う医療においても,安心して生成AIを使用できる。さらに,瀧澤氏は,海外での事例として,患者と医師の会話から臨床メモを自動生成する「AWS HealthScribe」,医用画像から所見を提示する「HealthAgent」を説明したほか,生成AIや機械学習を用いて臨床での業務を効率化するカリフォルニア大学サンディエゴ校の取り組みなどを紹介した。
米国では7月25日に,GE HealthCareがAWSとの戦略的協業により生成AIを活用して医療を変革する基盤モデルを構築することを発表した。AWSは,日本国内の医療においても,国際モダンホスピタルショウに出展するなど存在感を高めており,クラウドや生成AIなどの技術が医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)に寄与することが期待される。
●問い合わせ先
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
https://aws.amazon.com/jp/