シーメンスヘルスケアと柏葉会,パートナーシップを締結しシームレスな手術室・救急救命室「SMART OR/SMART ER」を新病院に構築
2024-6-13
登壇者がパートナーシップや新病院の
「SMART OR/SMART ER」について説明
シーメンスヘルスケア(株)と社会医療法人柏葉会(北海道札幌市)は2024年6月12日(水),新病院建設に関するパートナーシップについての記者発表会をシーメンスヘルスケア本社(東京都品川区)にて開催した。発表会には,シーメンスヘルスケア代表取締役社長の櫻井悟郎氏,柏葉会柏葉脳神経外科病院理事長・院長の寺坂俊介氏,柏葉会柏葉脳神経外科病院常務理事・副院長/高度脳血管病センター長の中山若樹氏,シーメンスヘルスケアダイアグノスティックイメージング事業本部MR事業部事業部長の宇根田宏徳氏が登壇し,両者の取り組みとパートナーシップについて,そして,新病院に共同で建設中のシームレスな手術室・救急救命室「SMART OR/SMART ER」の概要について説明が行われた。
柏葉会は,札幌市豊平区で運営している柏葉脳神経外科病院を同区内に移転・新築し,「札幌柏葉(はくよう)会病院」として2024年12月にリニューアルオープンを予定している。シーメンスヘルスケアと柏葉会は,新病院開院計画において脳神経外科領域における質の高い医療の提供,および北海道における高度な急性期医療の発展をめざして共同することに合意し,2022年5月にパートナーシップを締結した。このパートナーシップに基づき,建設中の新病院では,緊急性の高い脳血管内治療,高度な脳血管外科手術に貢献するシームレスな手術室・救急救命室「SMART OR/SMART ER」の構築が進められている。SMART(Seamless Multi Access for Reliable Treatment)は,情報のみならず医療機器の配置や病院内の動線などのハード面・ソフト面をシームレスにつなげることをめざしたキーワードで,その実現に向けて新病院設計の初期段階からシーメンスもかかわり,手術室・救急救命室の設計提案や導入装置の選定,レイアウトプランニング,システム構築を進めてきた。
記者発表会で櫻井社長は,「われわれは分野を横断した一つの大きな事業としてパートナーシップに取り組んでおり,柏葉会とは脳神経外科領域の治療の推進というテーマでパートナーシップを組んだ。SMARTによりシームレスにつながることで,医療の質の向上,患者の負担軽減,生産性向上・働き方改革に貢献することをめざして手術室・救急救命室を設計した」と述べた。また,寺坂理事長は,柏葉会の概要や取り組みについて説明し,コロナ対応や先端医療研究センターの創設など“柏葉だから”できる医療に取り組んできたことを紹介。高精細な3D画像による手術支援など先進的な画像診断も特徴で,寺坂理事長は,「高精度の画像診断をVirtual Surgeryに応用するなど手術の精度を高めてきたが,シーメンスとのパートナーシップによりさらに高いレベルに引き上げられるだろう」と期待を示し,新病院を神経科学の拠点病院にすることをめざしてくとの展望を語った。
新病院2階に配置されるSMART ORは,隣り合う2室の手術室の間にCT装置を格納するスペースを設け,双方の手術室内にCTガントリがスライドすることで術中CT撮影が可能な設計となっている。CTは,術中撮影に適した80cmラージボアの64列マルチスライスCT「SOMATOM Confidence」を採用。また,1室にはハイブリッド手術室対応・多軸ロボットアーム搭載の透視・撮影システム「ARTIS pheno EX」が設置される。これらにより,開頭術とカテーテル手技の同時手術,開頭術中の血管造影評価や腫瘍の摘出度評価,開頭術直後の安全確認などを行うことができる。SMART ORにはほかにも,従来から活用している高精細な3D CGやICGによるフロー解析などに加え,新しくAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などを導入し,データを統合・活用することで安全性と精度の向上を図っていく。
1階のSMART ERは,4ベッドを備える初療室と向かい合わせに画像診断部門を配置することで検査への動線を最短化し,診断と治療を同時並行で行うことができる。画像診断装置は,脳神経領域の高度なニーズに応えるハイエンド3T装置「MAGNETOM Cima.X」や,脳血管治療用の血管撮影装置「ARTIS icono D-Spin」などが導入される予定となっている。また,専用エレベーターでSMART ORへ直結しており,シームレスに専門的治療へとつなげることができる。
脳神経外科治療の取り組みとSMART OR/SMART ERのねらいについて説明した中山副院長は,「1分1秒を争う脳卒中診療においては,診断と治療の動線が短いことが治療成績の向上につながる。SMART ERの動線の短さは,特に血栓回収療法に役立つと期待している。研究用途にも活用できるMAGNETOM Cima.Xをはじめ日進月歩で進化する画像診断に対応する装置が導入されることで,より迅速な救急救命,高精度で安全性の高い手術が可能になる。SMART OR/SMART ERには多くのシステムが入っているが,パートナーシップによりシーメンスとゼロから共に構築できたことで,本当に使えるものになるだろう」と述べた。
なお,北海道初導入となるMAGNETOM Cima.Xは,最大傾斜磁場強度200mT/mを実現する強力な傾斜磁場コイル「Gemini Gradients」の搭載により,拡散強調画像の画質を大幅に向上しており,脳の神経線維の走行やマイクロストラクチャの描出を可能にする。同院の先端医療研究センターは,北海道大学大学院医学研究院博士課程の臨床連携講座として臨床医学コースの大学院生を受け入れており,MAGNETOM Cima.Xが臨床に加え医学研究においても活用されることが期待される。
●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア(株)
https://www.siemens-healthineers.com/jp/